表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『僕がいた過去 君が生きる未来。』本編  作者: 結月てでぃ
白銀の少年の嘆く愛の願い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/210

白銀の少年の嘆く吸血の約束を

 暗い世界にぼんやりと浮かぶ月の金をした瞳。わずかに開かれた口から覗くのは、白い犬歯。周りに従えるのは、蝙蝠。背中には、黒い翼。

「こ、殺し……の、ヴァンパイア」

 にい、とヴァンパイアの口の端が上に上がった。

 ヴァンパイアには、三つの種類がある。一つ目の種類は、人の生き血を飲み、生気を吸い殺す“殺しのヴァンパイア”。蝙蝠を従えていたり、翼を有しているという者が多い。二つ目の種類は、人の生き血を飲む代わりに生命を与えることが可能な“癒しのヴァンパイア”。殺しのヴァンパイアは、まだ数多く残っているが、死者をも生き返らせると言われていた癒しのヴァンパイアは、早い頃に狩られ、今では滅多に発見されることがない。だが、それよりも少ないのが、三つ目の種類だ。これは、癒しのヴァンパイアによって生命を与えられた者のみが変化する。変化した者は、普段は人間の姿をしている。だが、まるで狼男のように満月を見るか、血を大量にかぶるか。そのどちらかをすると、ヴァンパイアに化してしまう。その姿は、両の目のどちらかが赤くなる。血のように美しい紅玉の色に。瞳だけではなく、殺しのヴァンパイアの有す翼に似たものも生える。だが、それは黒ではなく、白だ。その容姿の美しさから、半ヴァンパイアなどという無粋な呼び方ではなく、“血紅玉の天使”という愛称で、高値で取引をされる。すでに、癒しのヴァンパイアさえ絶命しかけている今では、ほぼ現存していないとされているが。

「逃げっ」

 ドアノブをつかもうとするが、その腕を押さえられる。

「どうして逃げる必要が?」

 ヴァンパイアはクスクスと笑い、エディスの髪の毛をすくい、口付けた。

「私には分かる。お前には私と同じ血が入っている」

 クイ、と顎をとらえられる。

「少し欠けているが、充分だろう。よく見るがいい」

 金の光を優しく地にそそぐ、

「あっ」

 ほぼ満月に近い、月。

「やはり、血紅玉の天使、か」

 一音一音、わざと聞かせるように、区切って発音した。顔を、目を隠したくとも、両手をつかまれてしまっている。エディスはそれでも、体をねじり、なんとか逃れようとした。

「うあっ」

 右の眼球に湿った感触。

「美しい、目だ」

 もう一度、舌で舐められる。

「乙女の血を、と思い出てきたが、これが手に入るのならばもういらないな」

 今度は首を舐められ、ヒッと喉を引きつらせた。血紅玉の天使は、人間の魔物収集家や金持ちに大喜びされる代物だが、ヴァンパイアにとっても最上級の代物だ。その血は乙女よりも甘く、そして清らか。さらに生気に人にはない特殊な力が含まれているのだ。求めないはずがない。半分の存在である彼らは、人間からも、ヴァンパイアからも、狩られる存在だ。

【護り神 此処にッ!】

「痛っ」

 はぁっとエディスは息を吐いた。その手はじっとりと水をふくんだ軍服の胸元を掴んでいる。自分の周りにシールドを張り、駆けだす。

「逃がすか」

 舌打ちをし、ヴァンパイアがその背を追う。

「捕まって、たまるかよ!」

 投げ出すように体を屋上から放り出す。

「空から逃げる? それこそ不可能だ」

 ヴァンパイアの背に、黒い翼が生える。エディスはそれを見、唇を噛み締めた。

「風が、痛ぇ……っ!」

 体重に任せ、下へと落下する。視界は悪いが、地上への距離を計るため、目を開いた。そこに映ったのは、呆けた顔をした青年だ。

「ぅ、え!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ