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『僕がいた過去 君が生きる未来。』本編  作者: 結月てでぃ
白銀の少年の嘆く愛の願い

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25/210

白銀の少年の嘆く訓練の約束を

 えっほえっほと息切れをしながらも走る。砂を上を集団で走る、ザッザいう音がする。一周、約五百メートルのグラウンドで、男達が走っていた。皆、ランニングシャツにダボッとしたズボンを身に付けている。分厚い筋肉におおわれた肌には、うっすらと汗が浮かんでいる。

 季節は、春。このグラウンドを囲む鉄の鎖と灰色の壁の外に出ると、まだコートを着ている人々が見えるくらいの温度だ。

「一周走んのに何分かかってんだテメーら! ちゃっちゃと走れ野郎共があぁっ!」

 その寒さの中、妙に温度差のある怒声が男達を叩き付けた。

「はい!」

 少々声を裏返しながらも男達も叫ぶ。そして加速する。

「一段と力が入っていますね」

「まあな。軍の入隊試験まで後ちょっとー……ん?」

 つり目がちな切れ長の瞳は東雲色をしており、少しボサついた髪は藍色をしている。百七十を越えているだろう、すらっとした長身とあいまって、男性的な印象を与える。だが、薄い唇に塗られた真っ赤なルージュや豊満な胸が女性だということをしっかりと教えていた。キリッとした顔とグラマーな体。ユニセックスな印象を与える人だ。

「……おい」

 一際、その女性が低い声を出す。

「はい。なんでしょう?」

 その女性が手に持っているのは、普通よりも一回りほど大きな剣だ。身に着けているのは青みがかった迷彩のランニングと黒のズボン。暑いのか、同じ色の上着は腰に巻かれており、ズボンの素語を迷彩のブーツに突っ込んでいた。

「お前、走ってこいよ。何サボってんだ」

 ガッと襟首を掴まれたのは、その横でのんびりと水を飲んでいた少年だ。少年は右横にあるスピーチ用の台に、水が半分入ったボトルを置いた。そして完璧な笑みを顔全体に作る。

「もう随分と前に終わってしまいました」

「……かーっ!」

 それを見た女性が少年を放り投げる。

「いきなりなにすんだよ!」

 放り投げられた少年はザザーッと砂埃を立て、着地した。

「お前はガキでチビなくせに生意気なんだよっ! 教えがいのねえ!!」

 女性が切り込んでくる大剣を少年はひらりと身軽にかわす。そして水の入ったボトルの右隣、スピーチ台に立て掛けていた剣を手に取った。

「顔に似合わねえ性格しやがって、こっの……女顔!」

 剣を取った手がピクリと動く。

「……んだってえ!」

 少年が低く呟いた後、剣の鞘を放る。

「来い! 今日こそきっちりしつけてやる!」

「怪我しねえ程度にした方がいーんじゃねえのか! 年食ってんだからよ!」

「まだ三十だ!」

 ガンと剣と剣が派手にぶつかった。

「俺からしたら充分、年だよ!」

 女性の重い剣を、下から押し上げる。

「ホント、生意気な奴だ」

 ザッザと走り続ける訓練生は横目で見ている。

「ま、こうじゃないと楽しくねっか」

 ビスナルク・クローレッツ・アレンバイヤ。階級は中尉。主に軍人や軍人志望の者への訓練を担当している教官だ。ローラ総統が先読みの能力で予言をした五人の人物の一人だ。まだ、完全な仲間だとは言えない。ビスナルクはエディスのことを仲間ではなく、ただの興味を持っているだけで、変な子どもだとしか見ていなのだから。

「そうだよ」

 くすりとまた作り笑いをするのは、銀の髪を持った少年だ。持つ光は少し斜めに傾いてしまっているが、美しく光り輝いている。

「じゃーアイツらのランニングが終わるまで」

「一汗かくか!」

 エディス軍曹、十二歳の時――彼はこの年の夏に、新たな出会いをする。それは、彼と最も強い絆を繋ぐ、ある一人の青年との出会いを始まりとする。ローラの予言、そこに出てきた人物でもある、その青年の名は――シュウ・ブラッドといった。

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