白銀の少年の嘆く人形の約束を
※この話には多少の性描写が含まれます。
「エディスさん」
肌にかかる白銀の髪。潤んだ蒼氷の瞳。窓のガラスに映った姿は、初めて見る自分の姿は、彼女そのものだった。いや、彼女だった。
「俺じゃ、ない」
エドワードなんて、いない。
「……うっ」
一歩、気を抜かせて進むとごぽりという音がした。とっと壁に体をつける。そのまま、ずるずると座り込んでしまう。
窓に映るのは、妖しい程美しい少年。かろうじて取ってきた上着から見える体のそこかしこに赤い花が咲いている。つうと足につたったのは、愛しい父の愛。上気した頬も、赤く色づいた果実のごとき唇も。それは子どもとは思えないほどに色を放ち、獣の好む美しさを持っていた。
「汚れた」
下唇を歯で噛んだエディスの目から悔し涙がこぼれる。こんなこと、思ってはいけない。だが、確かにこの体は男を知らされてしまったのだ。
「こんな顔、いらねえよっ」
父の体が急に大きくなって、その中に巻き込まれた。優しかった父はまるで獣か嵐か。
体にずくっとした痛みと、分からない感覚が走った。もれそうになる声が、何故かとてもいけないものに思えて、唇を噛んだ。その行為の中、父はずっと、苦しげに母の名を呼んでいた。
「エディスさん……」
どうして、僕を貴女にしたんだ。
「遠えよ 遠え
鳴る鐘よ
人消えし時に歌え
昔この国は神に
嘆けよ 嘆け
鳴る鈴よ
人消えし時に歌え
昔この国は神に」
夜風が違う世界に連れて行ってくれた。冷たい風に歌声が舞う。
「愛し 神よ
この星を
愛し 神よ
今消して」
愛しい神様。俺はアンタに会いたい。
「愛し 神よ
どうか連れて
愛し 神よ
この輝星に」
冷たい冷たい風に体が冷えていく。会いたい。会いたい。会って、抱きしめて欲しい。会って、笑いかけて欲しい。そうしたら、この先もきっと、俺は頑張っていける。
「ドゥー、会いたい……」




