白銀の少年の嘆く絶望の約束を
それからのエディスは、とても忙しくなった。剣や銃、体術を徹底的に教え込まれた。それだけじゃない。雑学から法学まで、あらゆる学問を頭に叩きこまれた上、マナーも教え込まれた。
最初の数日は不安だったが、一週間もすると、周りが疲れてきた。なにを教えても、その倍以上の結果を返してくるのだ。教師は皆、覚えのいい生徒を良く思い、大人以上のものを与えた。
だからといって、エディスが何もしなかったわけじゃない。だからといって、エディスが疲れなかったわけじゃない。エディスは、ただ、可愛かっただけ、なのだ。
「エディス」
机につっぷして寝ている彼を抱き上げてベッドに運んだのは何回になるだろう。少なくとも、両手だけでは足りないだろう。
「……後、少し」
彼がここにいるのは。
「寂しいね」
ちょっとは、顔を見せに帰ってきてね。
「国王からの使いだ。出してもらおう」
そんな、時だった。入軍までもう少し。
「国王」
王宮への招待という命令が来たのは。
「ま、参りません! あの子に何をするつもりですか!!」
「貴方には関係のないことです。退いて頂けないでしょうか」
背後にエディスをかばうが、相手は軍人だ。
「ぐっ!」
襟首を掴まれ、簡単に放り投げられる。
「さあ、一緒に来てもらおう」
エディスの体を引きずるように、持って行く。
「離せ、よ!」
ベキリと、嫌な音がした。
「ハイデッ、ハイデ! 大丈夫かっ!?」
ふわりと天使が振って来る。
「大丈夫だよ」
頭を撫でると、ほっとした顔をする。可愛い、弟。
「行くよ」
エディスに腕をへし折られ、苦しむ男を見る。
「行くから、ハイデには何もするな」
行くなと言って、体を抱きしめるが、その腕をほどかれる。
「ちゃんと帰ってくるから。ハイデは待ってて」
にっこりと君が笑う。
「親父に、会ってくるよ」
駄目だ。駄目だ。駄目、だ。あれに会ってしまっては。
エディスなんだ、君は。エドワードなんていないんだ。
「行くな……行くな、エドワード!!」
だから、行ってはいけないんだ。




