白銀の少年の嘆く兄弟の約束を
「この国の女王。レイアーラ王女とシルク王女の母上様。あの方が今の国王の妃様だ」
「うん、そうらしいね」
ミルクをちびちびと飲んでいる小さな子どもがそう呟く。
「今の国王が、エディスさんの夫。二人は従姉弟だったんだよ。だから、エディスさんがいない今は代わりに務めているというわけ」
「エディスさんは、今どこにいるんだ」
がっと、胸にすがりつくように質問を出す。
「分からない。僕も、探しているんだ。会いたくて」
「なんでエディスさんは消えちまったんだ」
また、失った。エディスさん、俺はアンタのなんなんだ。何であればいいんだ。どうしたら会えるっていうんだ。
「それも、よく分からない。今の女王に王女が産まれたことが原因だと思う。それと、王様ではなく、魔物を愛していたんだ……」
「……闇……」
好きな人が、と言っていた。あの、闇。
「エディス・ティーンス。それがあの方の名前」
にっこりと微笑む相手を見て、後ろにもたれかかる。
「あんた、何者だよ」
「元王子だよ」
「は?」
微笑んだまま、自分を指差して言う。
「だから、僕はエディスさんの息子だよ。ハイデ・ティーンスっていうんだ」
騙してごめん、と少し苦笑しつつ頭をかいた。
「さて、僕は全て話したよ。だから、君も全て話しなさい?」
薄桃色の唇に指の平が当てられる。
「悪いようにはしない。それは絶対に誓うよ」
「だから、それ言ったら悪い奴みたいだって」
くすりと笑ってから表情を消す。
「本当に、信じてもいいんだな」
「うん。いいよ、信じて」
「……分かったよ」
溜め息を深くついてから座りなおし、前を睨み付ける。
「俺の名前はエディス。アンタの言ってる女王様と同じ名前だ。だけど、本当の名前は別にある」
「それって?」
真面目な顔になるハイデに、信じるぜ、と唇を舌でなめてから、口を開いた。
「俺は、エドワード・ティーンスだ」
「エドって……」
「エディスさんの息子。俺は分かんねーけど、エディスさんはそう言ってた」
「君の言う、エディスさんは?」
首を静かに振る。左だけ長い髪がパサパサと音を立てて肩にぶつかる。
「分かんねえ。アンタの言うエディス・ティーンスなのか、それともただのエディスさんなのか。けど、俺が本当にエドワード・ティーンスなら、そうなのかもな」
もう、今となっては、どうでもいいことだ。
「きっと、そうだよ。君とエディスさん、とてもよく似てるよ」
にっこりと笑いかけられるのが嫌で、顔を背けた。
「嬉しいよ」
「なにがだよ」
「君が、僕の弟だから」
はっと、した。見るとにこにこと、本当に、本当に嬉しそうに笑っていた。そう、本当に嬉しそうに笑っていた。
「ねえ、弟になってくれない?」
真っ直ぐに見つめてくる瞳から逃げられなくて。彼の人を思い出す、その聞き方から逃げるのは、何だかいけない気がして。
数分後、頬を染めたエディスの口から出た言葉は、花の甘い香りがした。




