白銀の少年の歌う親友の約束を
硬質な靴音が軍の男子寮の廊下に響き渡る。その音に振り返った者たちは満面の笑顔で、歩いて来る者を出迎える。
「お帰り、シルベリア!」
「ああ!」
それに手を上げて答えたのは、光の加減によって七色に色を変えて輝く髪を持った美青年。
「会議のために戻ってきたにしては早くないか? お前が一番乗りだぞ?」
「ちょっとこっちに用事があってな」
北部軍司令棟で総指揮官をしているシルベリア・レストリエッジだ。
「中にいるか?」
シュウの部屋の前に立ち、扉を親指で差すと、周りは苦笑しながら答える。
「いるいる」
「多分アイツ寝てっけどいいのかー?」
「構わん」
上機嫌で掴んだノブを回して開けようとしたが、周りが慌てた声を出したので、振り返った。
「昨日からエディス准将が来てるんだ! ……あんまり邪魔してやるなよ?」
「っていうか、もしかしたらっつーこともあるから、さっ」
でかい図体をくねくねとさせる友人たちに、シルベリアはふっと微笑した。
「それはないな。アイツにそんな度胸があるとは思えん」
「……だよな」
「いや、納得してやるなよ」
今度こそノブを回して、部屋の中に入る。扉をしっかりと閉めてから、微笑して歩いていく。
「久しぶりだな、眠り姫」
「……もうちょっと静かに来れねーのかよ……お前」
部屋の電気をつけ、ベッドの前に椅子を持ってきて座った。
「そう言うな。折角お前のためになる情報を持ってきてやったんだから」
「……どんな情報だよ」
「良いか悪いかと訊かれれば、悪い方だな」
そう言うと、親友は嫌そうな顔になった。
「話さない方がいいか?」
選択肢を向こうに託してみると、渋い顔をして腕を組んだ。煙草一本吸えそうな時間を間に置いて、答えが返ってくる。
「話してくれ」
深呼吸をしてから、足を組み直す。そして、伏せていた目を上げて親友を真っ直ぐ見つめる。祈るように組んだ手をさらに強く握りしめる。
できれば、できれば、この優しい友が傷つかないことを祈って、口を開いた。
「神に愛された天使が成そうとしていることをだ」