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『僕がいた過去 君が生きる未来。』本編  作者: 結月てでぃ
白銀の少年の嘆く愛の願い

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15/210

白銀の少年の嘆く化物の約束を

「王様ー!!」

 耳が壊れそうな程の歓声。

「凄いな……」

「ホントにな」

 かばうようにぎゅっと抱きしめてくれている。きょろきょろと周りを、ううん、人の目線の先を見る。

 エディスさんはどこだろう? そればかりが先走る。

「お妃様よ!」

 誰かが悲鳴にも似た大声でそう叫ぶ。

「エディスさんっ」

 小声で小さく呼んで、見る。

「誰?」

 エディスさんのような美人じゃなかった。ううん、美人だったけれど、人間程度の美しさだった。

「あ、あのっ!」

「おい!」

 近くにいた綺麗な身なりをした女性に声を掛ける。嫌そうな顔をされたけど、今はそんなこと、どうでもよかった。

「お妃様って、どの人ですか?」

「あの人よ」

 その人が教えてくれた人は、やっぱり違った。さっきの、人だった。薄い水色の髪を体にまとわせて、穏やかな笑顔を浮かべている。…どこ。

「どこ、なの、エディスさん」

 よろりと後ろに一歩引く。また、見失った。どうして嘘ばかりつくの? どうして僕を置いていくの! どうしてそんなに僕が嫌いなの。

「あ、おい!」

 気が付いたら駆け出していた。

「いっそ、出会わなかったら、よかったのに!」

 走って走って走って。息も切れ、足もがくがくとしてきた頃に腕をつかまれた。

「うわ! な、なに!?」

 いつの間にか帽子は落ち、月や天使ともとれる容姿がはっきりと見えてしまっていた。

「一人かい?」

 大人の男だった。ぴかぴかと光る体をしていて、少し不気味にも見える。

「まも。なんの用だよ!」

 服の裾から細い刃のナイフを取り出し、前にやる。

「お金、欲しくないかい?」

「別に。汚い金はいらねえよ」

 体を見つめてくるソイツをキツく睨む。

「いいだろう? どうせ長く綺麗なままで生きられない身分なんだから」

 と男はナイフを見ても怖じ気ずに体を奪おうとしてくる。

「やめろ! 触んな!!」

 ナイフで切ろうとする前に、手を力任せに殴られる。無防備な腹を思いっきり蹴られた。苦しくて咳をしている間に両手をひとまとめにされ、頭の上でとめられる。

「綺麗な肌だね……」

 服を脱がされ、素肌を触られる。

「やめろって、言ってっ!」

 はっと、体が固まる。

「……おや? 観念したのかい?」

 首筋に顔をうずめられても何も言わなくなった少年を見、男はにやにやと笑った。

「月」

「え?」

 ぽつりと何かを呟いた少年を見る。

「ひっ!」

 ひきつった顔の瞳にうつるのは、少年の瞳。赤い、赤い、血の紅。

 ぐじゅりと果実が潰れるような音が、した。


「また、やっちまった」

 けほっと一つ咳をした口からは生暖かい液体だったものが零れた。

「あんまり、やりたくねえのに」

 これは、罪。生きようとした、罪。ガランっと、金属が落ちる音がした。

「誰だ!」

 ばっと振り向くと、そこには少年がいた。


 そう、これは罪。少年が生を取った、罪。満月の日のみに少年は血に犯される。人ではない別のもの。人を餌にする魔物の呪い。

 半分は人、もう半分は魔物。左目は蒼、右目は紅。人の生き血を吸う魔物の呪い。

「……ヴァンパイア」

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