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『僕がいた過去 君が生きる未来。』本編  作者: 結月てでぃ
白銀の少年の嘆く愛の願い

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12/210

白銀の少年の嘆く魔物の約束を

 ああ、日が沈んでしまう。夕陽が消えてしまう。消えないで。消えないで。僕を置いていかないで。


「くっ、うううっ」

 血が口からこぼれ出していく。命が、吸い取られていく。苦しい。熱い。

「あぁ……」

 ドゥルース。ドゥルース。ドゥルース。君の、ため、なら、死んでもいいと思ってた。

「怖、い」

 一人は、怖い。一人で死ぬのは、怖い。

「愛して、る」

 それだけ。もう、それだけしかない! ドゥルース。

「も……っう」

 分かってる。分かってる。もう、君が生きていないことなんて。だって、この命さえ尽きようとしているんだから。

「ドゥー。僕、魔法つかえた……よ」

 ほろんと笑みが出てきた。ドゥルースの両親から教えてもらった禁術。たとえ、彼らが僕の命を使って助かろうとしただけでも、僕は嬉しかった。

「幸せ……?」

 僕は、これで幸せになれる、の?






「君、死ぬの?」

 ひんやりとした手が頬に触れた。

「……うん。たぶん、ね」

 口の中が血でカピカピになる。

「君も、死ぬの?」

 目を開けてみたら、そこには闇がいた。闇の中で、月が揺れる。

「そうだな。死にたいんだがな」

「どう、して?」

 闇が苦笑いを浮かべる。

「愛した奴が、死んだから、かな」

「愛?」

「あ? ああ、中央の離れの白い城に住んでた、忍冬って呼ばれてたお妃様だよ」

 話すと、ちらりと白い牙が見えた。この闇は……人じゃ、ない?

「すい、かずら?」

「金銀花って異名があるからな。アイツの白銀の髪が光の下だと金にも見えたから、その名前で呼ばれたんだとさ」

 白銀の、髪。さらりと闇が僕の髪を触る。

「名前……」

「え?」

「その、お妃様の、名前……」

「ああ! エディスだ。綺麗な名だろう?」

 エディス。エディ――

「エディス、さんっ」

 ぼろぼろと涙が零れる。

「お前は? 俺は……」

 聞こえない。聞こえない! 聞こえない!!

「エディス」

「は?」

「エディス……僕は、エディス」

 どうして今頃来るの。酷いよ、酷いよエディスさん!

「お前もエディス?」

「……そう」

「でも、男じゃ」

「くれたの。大切な、人が」

 酷いよ、エディスさん。僕に生きろって言うの? 這いずってでも、生きろって?

「……生きたいか」

 ううん、死にたいよ。このまま、ドゥーと一緒に死にたい。

 でも、でも。

「生きなくちゃ、いけない」

 せめて、君のために死にたかった。だけど、死ねない。

「じゃあ、俺の命をお前にやる」

 エディスさん。僕は恨んでもいいかな?

「あり、がと……」

 白い首に魔物の牙が深く食い込む。ぶつんという短い音をさせて、血が流れ出す。真っ赤な、真っ赤な。

「あ……」

 熱い。熱い。熱いっ!体の中を別の物が支配する。魔物に、体を侵食される。

「……うっ」

 どさりとその場に下ろされる。熱いのに、どこかすっきりとしていた。

「あ……ありがとう」

 まだその場にいるだろう、闇に話しかけた。

「別に」


 僕にとって、あの闇は闇でしかなかった。でも、他の闇と違った。ちょっとだけ、特別な闇だった。

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