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皆殺しの剣  作者: ktr
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第一話 炎の魔剣

「今回、俺は役に立たん」


幼馴染が、腕組みをして高らかに宣言した。


でも仕方ないのだ。

彼には致命的な欠点がある。



子供ですら魔法を行使する程、魔力という概念が一般的な世界。

この世界において、魔法を行使する際に重要な要素は大きく3つある。


1つ目は属性。

基本的に遺伝によって定まるそれは、火、土、水、風、無の5種類があり、

火は視覚と強化、土は嗅覚と固定、水は味覚と弱化、風は聴覚と移動、無は第六感を司る。

また、魔法ではないが、物理攻撃が剣と呼ばれ、第6の属性として扱われることもあり、触覚を司る。


四大元素は、それぞれ、火は風に、土は火に、水は土に、風は水に強い。

火が固まり土になり、土が溶けて水になり、水が気化し風になり、風が昇華し火になると考えられており、

それぞれ上位の物が優位属性となる形だ。

無属性は優位属性がない代わりに、劣位属性もない。

まだよく分かっていないことも多く、逆によく分からないものが無属性と呼ばれている状況だったりする。


火は水と、土は風と、無は全てと打ち消しあう性質があるため、持てる属性は最大2つまでだ。

2属性ある場合は必ず優位属性が得意属性となる。


2つ目は魔力。

色々な要素によって定まるそれは、魔法を使う為のエネルギー保有量だ。

単純に多ければ魔法を何度も使える。

RPGでいうMPという表現がわかりやすいだろうか。


後天的に増やすことも可能で、努力で補える唯一の魔法要素でもある。


実は魔力が空になった場合でも、無理やり魔法を使うことは可能なのだが、

その場合は身体を分解して魔力に変える必要がある為、通常は脳のストッパーが働いて使えない。

意図的に脳のストッパーを外す自爆魔法なる例外もあるが…


3つ目は魔門。単純に門とも呼ばれる。

何によって定まっているのか分からないそれは、魔法を使う際、1度に使えるエネルギー量だ。

生まれた瞬間から決まっており、広げることは出来ない。

こちらは少し複雑だが、分かり易く数字で説明する。


例えば、同じ炎の魔法を使用する場合でも、込める魔力の量によって威力が変わってくるのだが、

門の広さが100の人間は威力100の炎の魔法を、門の広さが10の人間は威力10の炎の魔法を使うことが出来る。


では、門の広さが10の人間は、威力100の炎の魔法を使えないのかというとそうではない。

門の広さが10の人間は10回魔力を込めることで、威力100の炎の魔法を使う事が出来る。


無論、門の広さが100の人間は1回魔力を込めるだけで、威力100の炎の魔法を使うことが出来るので、

同じ威力の魔法を使おうとすると、10倍の時間がかかることになる。


実際は、熟練度による魔力移動のロスカットや、スムーズさやら何やらでもっと複雑なのだが、概ねこんな感じだ。


門からは常に魔力が微量零れており、これが魔法に対する防御力となる。

漏れた分と同程度には時間経過で回復するため、普段それほど意識することはないが、

魔力が尽きた場合に魔法防御力が0になることは注意する必要がある。



さて、幼馴染の話に戻るが、彼は魔力の保有量は多く、

数値化するなら平均から桁が一つ二つ違うくらい上回る程度にはある。


だが、生まれつき門が異常なまでに狭い。

門から零れる魔力がほぼ皆無であり、魔法に対する防御力もほぼ0である。

そのため、低火力の魔法ですら致命傷になるという有様である。



では、何故そんな彼と旅をしているか?

好きだから?と問われれば、間違ってはいないだろう。

しかし、だからと言って魔王退治の危険な旅に足手まといにしかならない者を連れ回すかといえば答えはNOだ。

大事に思っているなら、逆に連れていかない。


つまり、彼の場合、その致命傷な欠点を踏まえても尚戦力になるのである。


基本、物理攻撃に対して、魔法防御は働かない。

そのため、理論上は非力な少女が勇者候補を短剣一つで殺すことも可能なのである。

最もそんな機会はないだろうが…


従って、魔法をどうにか出来、剣で斬れる程度の装甲しか持たない相手であれば、彼は旅に出てから無敗だが、

逆に避けようがない広範囲の魔法を使う上、剣が通らない魔物であれば、彼は歯が立たないのだ。



「知ってる」


だから、私はそう答えて剣を構えた。


寝癖のようにボサボサした長い青い髪は時計周りに流れている。

やや垂れ目で童顔とよく言われる。

身長は160cmを少し上回るくらい、鉄の胸当て、ガントレット、ブーツに身を包み、右手には金色の剣。

斬るもの全てを焼き払う炎の魔剣で、最近掘り出し物市で手に入れたお気に入りだ。


幼馴染のロウは白髪で短髪、爽やかな雰囲気だが、目つきはかなり鋭い。

身長は180cmにちょっと足りないくらい。

細身に見えるが、無駄な筋肉を削いでいるからであり、実際はかなり鍛えられている。

魔物の革をなめした動きやすい革鎧を着込み、腰には6本の短剣とカバン、背中には鞘にしまった鉄の大剣をぶら下げている。



対する敵は、巨大なトカゲの魔物。

風属性のブレスを吐いてくるのは厄介だが、火属性の魔法が使えるなら子供でも倒せる程度。

二匹いるが、それでも大した脅威ではない。


2匹のトカゲは、荒れ狂う風のブレスを吐き続けているが、弱化の魔法により、ブレスの威力を低下させる、と同時に、

固定の魔法により、魔法を防ぐ壁を張る、という、私の得意な防御手段を展開し、攻撃を防いだ。

更に、剣に炎を纏わせると一気に詰め寄り、袈裟斬りで一匹を胴体から真っ二つに、返す刃でもう一匹の尻尾を斬り裂いた。


真っ二つにされたトカゲは断末魔の悲鳴を上げ、息絶えるが、尻尾を切られたトカゲは腐ってもトカゲというべきか、

全く怯みもせず、私に噛みつこうとしてくる。


しかし、噛みつき攻撃の途中、何か違和感を感じたようで、攻撃を止めると、恐る恐る後ろを振り向く。

そこには切られた部分から、徐々に身体に向かってくる火の手があった。

自身の身に起こった異変に気が付くとこの叫び声をあげながら、身体に纏わり付く炎を消すため地面を転げ回るが、

火は一向に消える気配はなく、段々と炎は大きく、反比例して動きは小さくなっていく。

やがて、動きも炎も完全に止まった頃、最後には巨大な炭だけが残った。



完全に息絶えたことを確認し、幼馴染の方を振り向くと、腕を抱えて震えるロウが一言こう漏らした。


「怖い」


私はがっくりと肩を落とす。


「第一声がそれですか…」

「いや、燃え始めた時点で死ぬのが確定する剣とか、やっぱどう考えても怖いだろ。間違って手を斬ったらどうするんだ」

「燃やす対象は指定出来るから、間違って斬っても燃えません」

「何か喧嘩の拍子に、あんたなんか死んじゃえ!みたいに指定されたらどうなるんだよ」

「流石に死ぬ前に水魔法で消すわよ!」

「消えるかどうかなんて分からないだろ!?」


ロウが両手を広げ、オーバーリアクションで叫んでいるが、

流石に戦闘で疲れている所にくだらない事を色々と言われたため、イラっとした。

「…その時は燃え尽きるまで眺めてるわ」

「えっ?」

「とりあえず、試してみましょうか?」


私が、ニッコリと笑顔を貼り付けて剣を構えると、ロウは目にも止まらぬ早さで額を地面につけ土下座した。

「すみませんでした」

「他に言う事は?」

「モンスター討伐お疲れ様でした」


はぁ…と、溜息をつくと剣を鞘にしまい、視線をロウに戻した。

しかし、いつの間にか立ち上がって先に行っており、そして何事もなかったように言い放つ。


「早く行こうぜ」


…私はこいつのどこが好きだったんだっけ?

2回目の溜息が出た。

1話は超絶説明回、2話から本腰入れます。


後の話を考えると矛盾が発生して手戻りとかよくある話。

更新頻度も本腰入れたい(願望

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