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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第1章 柾木譲司編
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長い第4ラウンドのはじまり

 いつものように、二人で英語レッスンの後。力つきてぐったりする紫の隙をつくように切り出した。


「相談があるんだけど」


 彼女は疲れた顔を引き締めて、警戒レベルをあげた。


「テニスサークルのあの事件の時に、田辺さんが抱きついた男子学生の事覚えてる?」


 彼女はさっぱり記憶になかったらしく、首を振った。


「2年の真宮拓海まみや・たくみっていうんだけどね。実はあの事件がきっかけで困った事になっててね……」


 真宮には同じサークル内に好きな女の子がいた。しかも相手も好意を持っていそうで、二人はゆっくり距離を縮めてそろそろ告白かと思っていたという。

 そんな時にあの事件だ。震える紫が胸に抱きついて、しかたなく庇ったが、同じサークル内なので彼女が見ていた。

 彼女が真宮と紫の仲を誤解して、それから二人はギクシャクしたまま、まだ仲直りしてないらしい。


「真宮は関係ないのにとばっちりだよ。彼女とうまくいかないって愚痴こぼしててさ。俺達にも責任あるよね」

「……人の恋愛に手出しなんて簡単にできません……しかも彼女さん私と真宮先輩の仲を疑ってるんですよね?」


 紫の言う事は正論として正しい。譲司も本気で真宮達の事をどうこうしようなんて思ってない。そうこれは口実だ。


「二人が仲直りするきっかけを手伝うだけだよ。それにずっと気にかかってる事がもう一つあるんだ」


 紫はやっぱり何か裏があると疑いの目で俺を見つめていた。


「田辺さん、俺のせいで学校でいじめ受けてるよね。しかも服とか持ち物とかにも被害がある。その損害賠償させてほしいんだ」


 紫の眉がピクリと動いて、うすら笑いを浮かべた。喜んでいるのか、バカにしてるのか微妙な所だ。


「俺がかってに選んで買ってきても、高級ブランドすぎるとか趣味じゃないとかなりそうだし。かといって金で解決とかそんな誠意のない事したくないんだよね」

「……」


「だから一緒に買いにいかない?」

「その話が先ほどの真宮先輩の話とどう繋がるんですか?」


 冷静な突っ込みが入る。一緒に買い物などデートのような事、まともに話したら拒否されるのはわかっていた。


「真宮達に事情を話して、俺と田辺さん二人だと、田辺さんが嫌がるから真宮達二人も一緒にきてくれないか? と頼む。そして真宮と真宮が好きな女の子のデートを演出する」


 つまり損害賠償を口実に、真宮達の仲直りを口実に、wデートに持ち込む2段作戦だ。


「嫌です」


 まあ拒否されるとは思っていた。でも損害賠償はすぐに拒否しなかったから、紫もしてほしいんだろうな。


「ショッピングの後に俺お勧めの紅茶専門店でお茶とお菓子のおごりつきでどう?」


 またしても紫の眉がピクリと動く。どうやらこちらも心動かされたようだ。


「1年女子の子に聞いたんだよね。田辺さんがかなりの紅茶好きだって事」


 学園一のプレイボーイは伊達じゃない。女子ネットワークからの情報収集はお手のものだ。


「かなりの紅茶好きですから、中途半端な店ならただでも飲みたくないですよ」

「俺の母親イギリス人で紅茶もイギリス伝統菓子好きだったし。舌の肥えた俺が味は保証するよ」


 紫がゴクリとのどをならした。かなりつれてきた。後ひと押し。


「今ならまだバラが咲いてる時期だよね。その紅茶専門店の庭、バラが綺麗なんだ……」


 紅茶を飲みながらバラを愛でる。実に優雅で乙女チックだ。紫が園芸に興味あるのも、もちろんリサーチ済みだ。

 紫も簡単に頷かなかったが、結局最後には首を縦に振った。


 『wデート作戦』の開始だ。

 物語は起承転結でいうなら転。つまり波乱の幕開けである。

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