閑話休題 個人レッスンとバツゲーム
キモイ話要注意です。
前話の第3ラウンドの続きなんですが、予想外に第3ラウンドが長引いたのと、ダメな人もいそうなネタだったのでわけました。
この話読まずに先進んでも、話は繋がるので、ヤバいと思ったら読むのをすぐにやめましょう。
キモイネタを使ったギャグのつもりなので、笑っていただけたら嬉しいです。
英語の個人レッスンを始めてすぐわかった事だが、紫は英語に関わる事すべてを拒否する。いわば英語恐怖症だ。
町中のアルファベット単語の看板などは存在否定。テレビに外国人タレントが一瞬映っただけで目をそらす。
よく現代日本で生きてこれたものだ。
単位のために無理やり勉強しているものの、かなり嫌々だ。
「また課題やってこなかったな」
課題を元にしたテストの採点をしながら、横目で睨んだ。
「なんで毎回例文が恋愛小説なんですか? 意味わからなくても、甘ったるい先輩の朗読に砂吐きそうです」
彼女も負けじと睨み返してきた。最近紫は俺の前では時々猫かぶりを止めて辛辣な言葉を言うようになった。
仲良くなったと喜びたいが、痛い皮肉に心が折れる事もしばしばだ。
「わかった。今度課題サボってテストの点数悪かったらバツゲームするから」
「バツゲームとか言ってセクハラとかしないでくださいね」
真顔で釘をさしてくる。冗談じゃなく、俺がそんな卑怯者だと思われているらしい。不愉快だ。
「犯罪行為はしない。その代わり覚悟してね」
意地の悪い笑顔を作って彼女にプレッシャーをかけてみた。
しかし次の課題も彼女は真面目にやってこなかった。
「さて約束通りバツゲームだ」
人けのない夕暮れ時の公園。彼女が叫んでも誰も助けはこないだろう。
「なんでこんな所なんですか?」
警戒心むきだしの紫が吠えた。
「田辺さんが叫んでも困らない所だから」
「やっぱり私が叫ぶようなセクハラするんですね」
警戒心マックスで噛みつかれそうだ。
「神に誓ってもいいけど、この場所で自分から田辺さんの体に触れもしないし、犯罪行為もしない」
「……」
「じゃあバツゲーム初めようか。この話は友人から聞いた実話。それは真夏の暑い頃だった」
「怪談ですか? 私わりとそういうの苦手じゃないですよ」
彼女がほっとしたように余裕の表情を浮かべた。余裕でいられるのも今のうちだ。
「友人は口をあけたメンツユをキッチンの片隅に放置してしまったんだ」
彼女は眉をひそめた。怪談にメンツユなど普通関係しない。
「ふたは閉めてたんだけどね。暑さで中身の空気が膨張して、勝手にふたが開いてしまったんだ」
ますますわからないと彼女の顔は語っていた。
「メンツユって糖分が入ってるだろ?甘い匂いに誘われるように集まってきちゃったんだよね」
先の展開がやっと読めてきたようだ。彼女の顔がみるみる青ざめる。
「何も知らない友人が、メンツユをお椀に入れたら……コバエがびっしり……」
「嫌あぁぁぁ!」
予想通りに紫は叫んで、慌てて俺の口を手でふさいだ。
肩で息しながら、紫は必死に落ち着こうとしていた。俺は口をふさぐ手を無理やりひっぺがえして、爆笑した。
「よくそんな気持ちの悪い話できますね」
「他にも色々ネタあるよ?次課題やってこなかったらまたバツゲームだからね」
彼女はむちゃくちゃ嫌そうな顔した。
その後の紫は毎回必死で課題をこなし、今のところ2度目のバツゲームは行われていない。
バツゲームの話は実話です。
夏って怖いですね。皆さん気をつけてください。