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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第1章 柾木譲司編
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彼女の話

 彼女との出会いはよく覚えていない。


 俺はM大学経済学部3年でテニスサークルに所属していた。そして彼女こと田辺紫は同じ大学の文学部1年でテニスサークルの新入部員だった。

 テニスサークルの部員数は学内一だったし、特に俺目当ての女子部員の入部は多かった。多くの女子部員に混じって目立たない、紫の存在に気づいたのは5月に入ってからだと思う。


 俺の周りにつきまとう女子。遠くから眺める女子。挨拶すると自然に仲良くなれる女子。少なくとも俺に対して女子は皆好意的だった。

 そんななか紫だけはいつも俺から離れた所にいた。目を向けない。近づかない。挨拶すら許さない距離感。

 俺からなんどか近づこうとこころみたが、そのたびにさりげなく避けられた。


 人見知り、男嫌い。そんな理由で避けられるなら納得はできた。

 しかし遠くから観察する限り、紫は他のサークル仲間とは男女とわずそれなりに仲良くしていた。特別友達も作らず、仲の悪い相手もいない。

 俺には挨拶すらしないのに、他の人間だと、楽しげに笑顔を浮かべて話していた。


 その笑顔をむけて欲しい。ただ一言軽く挨拶程度してみたい。なぜそんな簡単な事ができないのか。歯がゆかった。


 そんな時、運命の事件は起こった。

 鈴木はサークル仲間でも評判の悪い男だった。女好きだがもてない。その鬱憤をぶつけるように、セクハラ行為を繰り返してた。

 ギリギリ犯罪にならないレベルで、文句を言わないような女の子ばかりを狙った悪質な行為。周りも時々軽く注意するぐらいで何もできない。

 その鈴木が次にターゲットにしたのが紫だった。


「テニス教えてあげるよ」


 後輩指導という名目のセクハラの始まりだった。


「グリップが違うんだよ」


 そういいながらベタベタと彼女の両手を握る。


「フォームチェックするね」


 と腰やら背中を嫌らしく撫でる。


「スイングはこうだよ」


 などと背中から抱きつくように体を密着させる。


 彼女も当然嫌がってたが、先輩という事で無碍にもできないようで遠まわしに逃げていた。しかし鈴木は彼女を逃すまいと、しつこくつきまとう。


 周りのサークル仲間もみんな鈴木のセクハラに気づいていたのに誰も助けようとしなかった。

 彼女も誰かに助けを求めるような視線すら見せなかった。

 誰とも特別に親しくしてなかったとはいえ、なぜ誰も助けようとしない! なぜ誰にも助けを求めない。


 俺の怒りが頂点に達して、その時何にも考えずに言ってしまった。


「その手を離せ! 彼女は俺のものだ」


 そして物語はプロローグに繋がる。

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