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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第1章 柾木譲司編
16/203

出会い

新キャラ登場です

重要人物なので、今後をお楽しみに

しかし今回一番時間がかかったのがタイトル

その割につまらないのは、ぐるぐる考えすぎて当たり障りのないものに落ち着いたからです

ネタバレせずに面白いタイトルって難しいですね

 色々あったが、最後には紫は俺の提案を受け入れた。俺はいたぶられてボロボロになりながらも、勝利を噛み締めていた。


「何ニヤニヤしてるんですか? 気持ちの悪い妄想ですか? 変態犯罪予備軍あらゆる意味で女の敵先輩」


 先輩にかかる形容詞が長すぎて、もはや形容詞ではないと思う。


 大学校内を二人は歩いていた。今日はバイト初日でこれから顔合わせだった。


「ところでバイト紹介してくださった先輩って、嫉妬深い元カノとかじゃないですよね。私に危害とか止めてほしいんですけど」

「なんで俺の知り合いってだけで元カノと断定するかな……先輩男性だけど」


「柾木先輩両刀なんですか? 節操ないですね」

「だからなんで恋愛に結びつけるの? 男同士で恋愛なんてあるわけないじゃない」


「偏見はいけませんよ。柾木先輩ぐらい変態なら、両刀ぐらいぜんぜんありえると思うんですよね」


 意地の悪い笑みを浮かべる彼女の表情が、本気で言っていない事をあらわしてる。俺をいじめて遊んでいるのだ。


「今は文学部の大学院に進んでるけど、テニスサークルのOBで俺の2個上だよ」

「やましい関係じゃなきゃ、なんでそうやって素直にそう答えないんですか?」


 彼女の言葉に顔を引きつらないようにするには、最新の注意が必要だった。彼女が言うとおり俺はわざと先輩の話をしなかった。正直先輩と紫を会わせたくはなかったのだ。


「今から会うんだし、会えばわかるよ」


 紫は疑いの眼差しで俺を見ていた。



 文学部・国文学専攻の研究室の前に立ち、ためらいがちにノックする。中から返事が返ってきたので、ゆっくりと扉をあけた。

 研究室内には何人か人がいたが、俺達が入ってくると注目の的になった。俺はどこでも周囲の注目を集める存在なのでしかたがないが、このまま二人が一緒の所を見られるのは紫に悪いので落ち着かない。


「柾木! こっち」


 奥から男の声がした。すぐに呼ばれた方に向かう。眼鏡をかけ、平均身長より少し高い痩せ形の男が、人の良さそうな笑顔を浮かべた。


「柾木は相変わらず目立つな。そちらが噂の彼女?」

「文学部1年の田辺紫です。テニスサークルで柾木先輩に今回の話を紹介していただきました。よろしくお願いします」


「院生1年目の朝比奈裕一です。同じ学部・同じサークル同士よろしくお願いします」


 朝比奈は目下の相手なのに丁寧な挨拶を返した。朝比奈の一般的な回りの評価は、人がいい、優しい、穏やかなどだ。他の人間より親しい俺はそうおもわないのだが。


「柾木のせいで色々大変みたいだね。大丈夫?」

「柾木先輩が悪いわけじゃありませんし、柾木先輩に色々助けていただいてるので大丈夫です」


 人目があるから紫は愛想笑いを浮かべた猫被りモードだが、その言葉に込められた悪意のニュアンスを俺は正確に理解していた。

 朝比奈は紫の悪意に気づいてないのか、安心したように穏やかな笑顔を返した。


「文学部のバイト担当僕だから、何かわからない事あったら聞いてね」

「ちょっと待ってください。なんで院生の先輩がバイト担当なんてしてるんですか?」


 紹介だけして、朝比奈と紫を引き離そうと思ってたのに……。朝比奈は困ったような顔をした。


「教授や先輩達はお忙しいから、こういう仕事は下の人間がやらないと」


 周りに気を使って優しい表現だが、雑用を押し付けられたということだ。紫は眉をひそめて大変ですねとつぶやいた。それに嬉しそうにありがとうと朝比奈が答える。朝比奈と紫は端からみると、同じ文系学生同士空気が似ていて、なんだかお似合いだ。

 すごくまずい気がする。だから先輩と会わせたくはなかったんだよなと一人焦る俺だった。


「……あの……古谷教授は、オープンキャンパスにはあまりいらっしゃらないんですか?」

「ああ。田辺さんは古谷教授に会いたいんだってね。今回のオープンキャンパスの責任者だから、まったく顔出さない事はないけど、お忙しい方だからね」


 明らかに落胆する紫を慰めるように、朝比奈は優しい言葉を囁く。


「終わった後の打ち上げには必ず参加されるし、ゆっくり話す時間とれると思うよ」


 俺は焦って止めに入った。紫を打ち上げに参加させたくない理由があった。


「打ち上げって飲み会ですよね。田辺さんはお酒の席は苦手で……」


 サークルの新歓コンパも欠席した紫だ。大学の飲み会など未成年に無理やり飲ませたり、酔っ払いの相手をさせられたりなど不愉快な事ばかりなのに、高い会費払わされるのが嫌との事。


「飲み会といってもここの研究室に、飲み物や食べ物を持ち込んでやる内輪なものだから、会費も安いし気楽だよ」

「それなら参加してみたいですね」


 ちょっと乗り気になってきた紫を止めたかったが、打ち上げに参加させたくない理由を言うことができないのでどうにもできなかった。



「ああ……そろそろ時間だね。今日は講義室でバイトメンバー同士のミーティングがあるんだ。行こうか田辺さん」


 そう言って入り口に向かう朝比奈に、紫も素直に着いていく。俺も着いていこうとしたら朝比奈に止められた。


「柾木は研究室で雑用を頼む。今重い荷物整理とか男手足りないから、期待してるよ」

「ちょっと待ってください。俺もオープンキャンパスの手伝いのはずじゃあ……」


 朝比奈はやれやれと言った感じでため息をついた。紫も気づいたようで、しかたないですよねなどと同意している。


「先輩が案内役なんてしたら、いたいけな女子高生を惑わせて現場は大混乱ですよ」


 ざっくり紫が俺を斬ると、朝比奈は同意するように何度も頷いた。


「悪いな柾木。そういう事だから、案内役とかは頼めないけど、裏方の仕事をよろしく」


 せっかくの紫とのバイトライフを引き裂かれ、激しく落ち込んだ。

 朝比奈と連れ立って歩く紫が、一度だけ振り返って俺を見る。紫には珍しく心細いような弱気な顔でそれが不安だった。

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