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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第9章 上条彩花編2
145/203

聖母たちのララバイ

第7章最終話の続きです

お忘れの方は「嘘の皮が剥がされる」をご覧ください

 話は第2回上条彩花認定蟹祭り(朝比奈の誕生日)の続きから始まる。


 振り上げたこぶしを下ろして、さあ久しぶりのどつき漫才も終わり。また定位置の向かいの席に戻ろうと立ち上がろうとした。

 すると朝比奈が私の袖を掴んで引きとめる。


 その仕草にドキッとした。すぐに名残惜しげに手を離す朝比奈。さっきまで友達でいられたのに、こんな風に急にドキッとさせられると男だと意識してしまう。

 隣にいてほしいわけ? 甘えられてる? 今日はこの男の誕生日なわけで、しかもなんだかお疲れ気味な感じだ。

 お疲れ様という気持ちもこめて、渋々私は朝比奈の隣に座りなおした。

 ちょっとだけスペース開けたけどね。だってすぐ隣でくっつくのなんか変じゃない。



 食事が終わると、満腹になったせいか朝比奈のあくびが目立ってきた。疲れた顔してるし、あんま寝てないのかな?

 私がつまみを食べながら、ちびちび熱燗飲みつつ、横目で朝比奈を観察していると、朝比奈は眠そうに眼鏡を外して目をこすった。



 朝比奈が眼鏡外すの見たことあったっけ?

 この男は昼寝中でも外さない。本当に眼鏡が顔の一部ってぐらいに、眼鏡なしなんてありえない。

 そんな貴重な眼鏡なし姿に思わず見入った。

 あっ、意外に睫長かった。眼鏡だと大人しく真面目な印象だけど、素顔だと意外に可愛い顔してるかも……。特に眠そうに目をトロンとさせてる表情が子供みたいでいいな……。



 何考えてる私! 眼鏡外した素顔に、ドキドキするなんて、マンガか自分。

 私は決して眼鏡男子好きなわけでなく、どちらかというと健康的なマッチョ系な方がかっこいいなと思う方だったはず。


 上條彩花しっかりしろ。これは何かの気の迷い。


「上條どうしたの?」

「ううん。眼鏡外してるの珍しいなと思って」


「眼鏡なしだと全然見えないからね。この距離でも、上條の顔ぼんやりとしかわからない」


 すぐ隣に座ってるのに見えないのか。目がいい私にはわからない世界だ。


「どれくらい見えないのかっていうと……」


 そう言って朝比奈は急に顔を近づけてきた。このままくっついちゃうんじゃないかと慌てる。

 顔と顔の間10cmという至近距離で朝比奈は止まって笑った。素顔の朝比奈の笑顔はいつもより素直で無邪気に見える。


「ああ。やっと上條の顔見えた」


 こんな至近距離でそんな顔して笑うな! 顔赤くなってるのバレるじゃない!


「顔近すぎ!」


 私は思わず朝比奈を突き飛ばしてた。ついでに肘鉄も入ってたと思う。朝比奈が後ろに倒れてうめいてた。


 またやりすぎた。しかし眼鏡外しギャップ萌とか、至近距離とか、これが朝比奈のたらしテクか?

 恐るべし。恋愛音痴の私がペースに乗せられる所だった。


「うわ! どうしよう?」


 朝比奈が眼鏡を至近距離でじっと見て困った顔をした。


「どうしたの?」

「今の弾みで眼鏡のつるが曲がった」


 確かによく見ると少し歪んでる。


「これ買い換え時かな……」


 ため息をつきながら名残惜しげに眼鏡をさする朝比奈。眼鏡愛か?


「ごめん」

「ん。大丈夫。明日予定ないから眼鏡買いにいく。そろそろ度が合わなくなってきたなと思ってたし」


 明日予定なし。それを聞いて思わず嬉しくなった。

 実は明日誕生日のサプライズを用意してたのだ。


「じゃあ明日一緒に眼鏡買いに行こう。あんたその目じゃ、一人でまともにたどり着けそうにないし」

「ああ。大丈夫だよ。古くて度はあってないけど予備あるから」


 そう言って、手探りで自分のバックを探し始める。


「あった、でも度があってないから見にくいな」


 朝比奈がかけたのは、さっきかけてたのとそう変わらないデザインの眼鏡。この男、同じデザインのばかりわざわざ揃えてるのか?


「いいから私もついてく。夜まで私につきあいなさい。夕飯奢ってあげるから」

「またいつもの新橋ガード下の行き着け?」


「なんでクリスマスイブにそんな所行かなきゃいけないのよ。ちゃんとしたホテルの中の店よ」

「それこそイブに予約なしで無理でしょう」


「予約してある。あんたと行こうと思って」


 本当は直前にある人物から譲ってもらったのだが、その相手については言いたくない。


 朝比奈はまたしても、自分の頬をつねった。そんなに私の言葉が信用できないのか腹が立つ。


「そこでまた痛くないなんていったら、痛くなるまで、ボコボコに殴るわよ」

「あ……痛いね、うん。夢じゃないんだ」


「誕生日プレゼントよ」


 朝比奈は大げさに驚いた顔をした後、顔をくしゃくしゃにして笑った。 


「ありがとう上条。嬉しい」


 素直にお礼言われるとそれはそれで照れるな。朝比奈から顔をそむけ、「別に……」とそっけない態度をとってしまう。ああ、私ってこういう時可愛げないのよね。って別に、朝比奈に可愛い所見せたいわけじゃないけど。


 朝比奈から目を離していたら、急に肩に重みを感じた。あれ? と顔を向けると至近距離に朝比奈の顔があった。思わず飛んで逃げそうになったが、踏みとどまる。

 眠くなりすぎて、倒れてきたようだ。私の肩にもたれかかって、気持ち良さそうに目をつむってる。


「ちょっと、あんた離れなさいよ」

「……うーん。じゃあ……肩がだめなら膝枕で……」


「絶対嫌!」

「……残念。上条に膝枕されてみたかったな」


「このエロ朝比奈。ていうか寝るんだったら布団しくから、そこで寝て」

「……」


 どうやら本気で寝てしまったようだ。間近で見ると、昔より痩せた頬、目の下のクマ、顔色の悪さが目立って気になる。元々細いし白いし、もやしみたいによわっちいやつではあったんだけど、疲れてんだなぁと思うと可哀想になる。

 まあ今日だけは肩ぐらい貸してやるか。友達だし肩貸すぐらいいいよね。


 至近距離で安らかに眠る朝比奈の寝顔が可愛いから……、なんて理由じゃ絶対ない……。

いきなり甘々な感じではじまりました

はたしてこのムードがどこまで続くのか?

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