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難攻不落彼女  作者: 斉凛
第1章 柾木譲司編
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君の瞳にノックアウト

 待ち合わせの女子トイレ前で、期待を胸に待っていた。


「お待たせしました~」


 美咲が上機嫌ででてきた。


「懇親の力作です。って、田辺さん早くでてきなよ」


 美咲に無理やり引っ張られて、躓きながら紫がでてきた。


 長い黒髪をハーフアップにして、まとめた髪はくるくると遊びがあって柔らかそう。

 メイクは肌が綺麗なためベースメイクはせずに、アイメイクのみ。

 眉は美しく整えられ、カーブを描いている。ひかえめなピンク系のアイシャドウ。つけまつげで長く伸びた睫が瞳に影を作る。お人形のように愛らしくなった。


「アイメイクがこんなに可愛いなら、リップグロスとかあるとバランスいいのに」

「柾木先輩もそう思いますか。私もつけようとしたんですけど、これから食事するのに、ベタベタして匂いの強いグロスは絶対やだって」


 非常に紫らしい合理的理由だ。

 服装は、リボンやレース付きのシンプルなシルエットの白いワンピース。パフスリーブでも太く見えない二の腕と、スカート下の細い足があらわになって、華奢な紫の魅力が存分にでていた。

 小物のバックとミュールもピンク系で纏めたのは、アイシャドウとのバランスか。


 ただ気になるのは、さっきの安っぽいブレスレットがそのままだった事だ。

 これだけオシャレになったため、よりその安っぽさが悪目立ちする。


「そのブレスレットない方がいいんじゃない?」

「ですよね。でも田辺さん。このブレスレットだけは絶対外さないって言うこと聞いてくれなくて」


 そんなに大切なものなのかな? 例えば子供の頃の思い出の品とか。でも今まで学校で着けているのをみたことがない。普段着けたくないほど大事なものなら、むしろ身に着けずに大事にしまったりしないだろうか?

 紫が素直に話すとも思えないし、まあいいか。


 しかし可愛いなぁ。やっぱり女の子は可愛くしてなきゃ。

 俺が紫に見とれていると、恥ずかしげに目を伏せた紫がゆっくりと近づき、俺の目の前で顔をあげた。


 死んだ魚のようにどろっとした視線で、生ゴミでもみているように不快げに口のはしをまげた。


「先輩キモイ。鼻の下伸びてるし、変態。変質者予備軍。加齢臭がただよいそうなほどオヤジ顔。半径3m以内に近づくな」


 本気だ。本気でこんな罵詈雑言を言ってるよ。てか、目が怖い。せめて生きた哺乳類の目に戻ってくれ。


 ショッピングモールをでるまで、この視線にさらされて、ノックアウト寸前な俺だった


 車に大量の荷物を積み込み、紅茶専門店にむかう。

 紫をいろんな意味で直視できない俺は、運転に集中して後ろはまったく見なかった。



「ここだよ」


 住宅街の中、木々に囲まれた所にその店はあった。

 入り口はツルバラのアーチがあり、店の扉までの小道には、色とりどりのバラが咲き乱れている。


「バラの季節ももう終わりかな? 見頃を過ぎてしまったのが残念だね」


 バラはどれも散り始め、枯れ始めたのもあった。その分甘いバラの濃厚な匂いが漂っている。


「……私、バラは散りかけが一番好きです……」


 ポツリと呟いた紫の声に気づいたのは、多分俺だけだと思う。

 紫は切なく寂しげな瞳でバラを見つめていた。


 今にも壊れてしまいそうな儚げな紫に、心惹かれて近づいた。


「半径3メートル以内に近くなって言ったよね」


 紫はすぐに表情を変え、またしても死んだ魚の目で俺を見る。


「それだと一緒のテーブルでお茶できないんだけど……」

「財布だけ置いて、離れた席で一人で飲め」


 うわまたでた。金しか興味ない発言。しかもお着替えが不満だったのか、さっきから柄悪いなぁ。いつものですます口調じゃなくなってるよ。


「た、田辺さん……怖い……」


 真宮と美咲が震えながら紫を見つめている。


「冗談です」


 にっこりいつもの愛想笑いで2人に言う。さっきの本音だよね。もう誤魔化しても無駄だと思うけど。

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