表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
難攻不落彼女  作者: 斉凛
第1章 柾木譲司編
1/203

柾木譲司の場合 プロローグ

第1章はコメディ強めのお話です。あまり甘い展開は期待できません。

初投稿です。誤字脱字などありましたら、ご連絡いただけると嬉しいです。

「その手を離せ! 彼女は俺のものだ」


 気づいたら柾木譲司まさき・じょうじはそう叫んでいた。

 言われた男も、庇われた彼女も驚いて呆然と俺を見ている。騒がしかった周りも水を打ったように静まり返った。

 しまったと思ったが引くに引けない。


 彼女……もとい田辺紫たなべ・ゆかりの肩を、いやらしく掴む男の手を振り払い、紫の手をそっととって引き寄せた。


「大丈夫?」


 戸惑う紫を安心させたくて、できるだけ優しく微笑む。

 自分で言うのは嫌味で嫌なんだけど、日英ハーフの人目を引く容姿、文武両道、父親は実業家、と女性にモテる要素はいくらでもある俺は、学園の王子の異名を持っていた。

 そんな俺に間近で微笑まれ、落ちない女は今までいなかった。


 そう、今までは。


 紫は俺の微笑みを見ても、まったく嬉しそうではなかった。そしてわずかに苛立たしげな表情を滲ませ叫ぶ。


「痛い!」


 優しくつかんだはずの手を振り払われ、紫は飛ぶように逃げ出した。

 そして手近にいた、先ほどのいやらしい男 ーー確か名前は鈴木だったかな?ーーとは別の、大人しそうな男子学生の胸にすがりつく。


「怖い……」


 小刻みに震える紫は暴力に恐れる子供のようだった。

 先ほどまで、周囲の非難は鈴木に向かっていたのに、今の紫の言動で俺に移った。特に男どもの視線が痛い。

 紫に地味に隠れファンがいるって噂本当だったんだ……。などと感心している場合ではない。

 誤解は速やかにとかねば。


 俺はゆっくり紫に近づきながら、恐る恐る声をかけた。


「ごめん。怖がらせちゃったみたいだね」


 紫は男子学生の胸からゆっくり顔あげ、振り返った。素早く周りの気配を確認し、皆が俺ばかりを見ていて、自分には注目していないことに気づいたようだ。


 それからやっと俺を正面から見て、俺を嘲るような笑顔を浮かべる。その凶悪な笑顔を見て初めて悟った。コイツ、わざと俺を嵌めたな……。


 先ほどまでのただ純粋に彼女を助けたいという、優しい心は砕け散った。

 上等じゃないか、売られた喧嘩は買ってやる。


 ここに一人の男と女の、恋愛というには恐ろしすぎる戦いが始まった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ