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新章:Untitled 後編

--あるところに、草原がありました

その草原では、様々な者たちが過ごしていました

どうやら、これが幸せなようです--

月明かりさえ届かないほど深い闇。

診療所は静まり返り、誰もが眠りについている

……はずだった。

コン。

小さく、扉を叩く音が響く。

誰かが訪ねてきたのだろうか。

音は一度きりではない。

コン、コン。

一定の間隔で続く。

その音に最初に気づいたのは、オビオヌだった。

眠りが浅かった彼はゆっくりと身体を起こす。

「……こんな時間に。」

毛布を肩へ掛け、廊下へ出る。

診療所は暗い。

聞こえるのは扉を叩く音だけ。

コン。

近づくほど、その音ははっきりと聞こえる。

オビオヌは扉の前へ立つ。

「どなたですか。」

返事はない。

そして、また。

コン。

オビオヌはゆっくりと扉へ手を掛け、鍵を外す。

静かに開いた扉の向こうには――

誰もいなかった。

冷たい夜風だけが吹き込み、名前のない結晶が足元を転がっていく。

「……?」

辺りを見回す。

人影はない。

足跡もない。

ただ一つ。

診療所の入口に、小さな黒い結晶が落ちていた。

今まで誰も見たことのない色。

光を吸い込むような、漆黒の結晶。

オビオヌは慎重にしゃがみ込み、それへ手を伸ばす。

指先が触れたその瞬間、結晶に亀裂が走る。

そして黒い結晶は霧のように砕け、闇へ溶けていった。

同時に、診療所の窓という窓が、風もないのに一斉に震える。

ガタガタ、と不気味な音が廊下へ響いた。

その物音に、リランティーヌとクカラースも部屋から飛び出してくる。

「オビオヌ!」

「何があったの!?」

オビオヌは静かに扉の外を見つめたまま、小さく呟く。

「……嫌な予感がする。」

誰も答えられなかった。

風は止み、結晶も舞わない。

夜の静けさだけが、まるで世界そのものが息を潜めているかのように、診療所を包み込んでいた。

こうして、新たな物語は始まる。

それは希望の続きではない。

光の反対側。

誰も望まなかった物語。

-絶望:Untitled/第一話「静かに壊れていく日常」-

黒い結晶が現れた夜から、数日が過ぎた。

診療所には相変わらず朝日が差し込んでいる。

薬草は風に揺れ、鳥はさえずる。

景色は何も変わらない。

それなのに、五人の日常だけが、静かに崩れ始めていた。

最初に異変を感じたのは、リランティーヌだった。

診療所の庭で薬草へ水をやっていたその時。

「……っ」

突然、胸を押さえる。

心臓の辺りを強く掴み、その場へ膝をついた。

息が苦しい。鼓動が速い。

痛い。

まるで心臓そのものが締め付けられているような痛みだった。

「リラ!」

クカラースが駆け寄る。

リランティーヌは苦しそうに微笑み、首を横へ振る。

「……大丈夫」

そう言っても、その顔色は青白く、額には冷たい汗が浮かんでいた。

その痛みは一度きりではなかった。

朝も、昼も、夜も。

理由もなく胸の痛みが襲うようになる。

数日後、クカラースは診療所の廊下を歩いていた。

しかし、不意に足が止まる。

「……あれ」

目の前が暗い。

一瞬ではない。

何度瞬きをしても変わらない。

「……見えない」

静かな声だった。

「何も……見えない」

かつて回復したはずの視界は、再び完全な闇へ閉ざされた。

クカラースは壁へ手をつき、ゆっくりと呼吸を整える。

その声を聞いたリランティーヌが駆け寄り、そっと手を握った。

クカラースも、その手を強く握り返した。

ロウナタリーも変わっていった。

書簡を読まない。剣を取らない。庭へも出ない。

椅子へ腰掛けたまま、ただ窓の外を眺めている。

「兄さん」

オビオヌが呼んでも、反応はゆっくりだった。

「……ああ」

返事はする。

けれど、その声には生気がない。

何を見ても、何を聞いても心が動かない。

そんな日々が続いていた。

ラディースもまた、一人でいる時間が増えた。

鏡を見るたびに目を逸らす。

「……私が、もっと強ければ」

誰へ向けるでもない言葉を繰り返す。

自分を責め続ける。

何も起きていない日でさえ、

「私のせいだ」

その考えだけが頭から離れない。

やがて、その苦しさから逃れようとするように、自分の身体を傷つける行動を繰り返すようになった。

誰にも見せないよう隠していたが、袖口や襟元からのぞく新しい傷跡を、家族は見逃さなかった。

そして最も大きな異変は、オビオヌに訪れた。

朝、ベッドから起き上がろうとした時だった。

「……?」

身体が動かない。

正確には、両脚の感覚がなかった。

何度触れても、叩いても何も感じない。

オビオヌは静かにベッドの縁へ手をつき、立ち上がろうとする。

しかし力が入らない。

身体はそのまま床へ崩れ落ちた。

鈍い音を聞きつけ、クカラースとリランティーヌが部屋へ駆け込む。

「オビオヌ!」

二人はすぐに抱き起こす。

オビオヌは自分の脚を見つめ、小さく呟いた。

「……感覚がない」

その言葉に、部屋の空気が凍りつく。

オビオヌはもう一度立とうとする。

それでも脚は応えない。

まるで、自分の身体ではなくなってしまったかのようだった。

彼は静かに目を閉じる。

医師として数多くの患者を診てきた。

けれど今、自分の身に起きていることの原因が分からない。

その事実が、胸を静かに締めつけていた。

誰も叫ばなかった。

誰も泣かなかった。

だからこそ、その静けさは恐ろしかった。

黒い結晶が現れた夜から始まった異変は、偶然ではない。

何かが五人を蝕んでいる。

ゆっくりと、確実に、希望を奪うように。

診療所の窓の外では、風もないのに一粒の黒い結晶が静かに舞っていた。

-第二話「絶望が去ったあとに」-

季節がいくつ巡ったのか。

誰も数えてはいなかった。

診療所には、静かな日々だけが流れていた。

しかし、それは穏やかな静けさではない。

笑顔を失った静けさだった。

リランティーヌは、一日に何度も胸を押さえる。

心臓を締めつける激痛は、いつ襲うか分からない。

苦しさに膝をつきながらも、誰かの前では笑おうとした。

その笑顔は少しずつぎこちなくなっていく。

クカラースは光を失った世界を歩く。

壁を伝い、床を確かめ、音だけを頼りに進む。

愛銃を握ることも少なくなった。

「……皆は、そこにいる?」

その問いは、日に日に増えていった。

ロウナタリーは窓辺から動かなくなった。

食事を勧められれば口にする。

話しかけられれば返事はする。

それだけだった。

自分から何かを始めることは、もうほとんどなくなっていた。

ラディースは自分を責め続けた。

誰も責めていない。

それでも、自分だけは自分を許せなかった。

傷は服の下に増え続ける。

隠すことにも慣れてしまった。

オビオヌは車椅子で診療所を回るようになった。

患者の前では医師であり続けた。

けれど、診療が終わると表情は消える。

誰もいない部屋で、自分の動かない脚へそっと触れる。

何も感じない。

その現実だけが、静かに積み重なっていった。

五人は同じ家で暮らしている。

それでも、どこか遠く離れてしまったようだった。

誰もが誰かを心配している。

だからこそ、自分の苦しみを隠す。

「迷惑をかけたくない」

その優しさが、互いをさらに孤独にしていった。

そして、ある朝。

異変は突然終わった。

リランティーヌは胸へ手を当てる。

「……痛くない」

何か月も続いた痛みが、跡形もなく消えていた。

クカラースはゆっくりと目を開く。

「……見える」

窓から差し込む朝日。

リランティーヌの髪。

オビオヌの穏やかな瞳。

失われていた光が戻っていた。

ロウナタリーはふと庭へ出る。

風が頬を撫でる。

その心に、久しぶりに「綺麗だ」という感情が浮かんだ。

ラディースも、胸を締めつけていた自己嫌悪が静かに薄れていることに気づく。

「……終わったのか」

オビオヌはベッドの端へ座り、恐る恐る床へ足を下ろした。

足裏へ、床の冷たさが伝わる。

「……」

感覚がある。

ゆっくりと立ち上がる。

ふらつきながらも、一歩。また一歩。

自分の脚で歩く。

リランティーヌは涙ぐみながら微笑んだ。

「オビオヌ……!」

クカラースも思わず笑顔になる。

「よかった……!」

五人はようやく、絶望から解放された。

けれど、失った時間は戻らない。

リランティーヌは胸の痛みを思い出すだけで息を詰まらせることがあった。

クカラースは暗闇の恐怖から、夜中に目を覚ますことがあった。

ロウナタリーは無気力だった日々を思い出し、言葉を失うことがあった。

ラディースの身体には、隠していた傷跡が残っていた。

オビオヌもまた、歩けるようになっても、ときどき無意識に脚が動かなくなるのではないかと確かめるように立ち止まってしまう。

絶望は去った。

黒い結晶も、もうどこにもない。

それでも、絶望が残していった傷は、身体にも心にも確かに刻まれていた。

五人は知る。

絶望とは、去った瞬間に終わるものではない。

そのあともなお、人の中に静かに残り続けるものなのだと。

診療所の窓から朝日が差し込む。

その光は以前と同じように温かい。

けれど五人は、もう以前とまったく同じではなかった。

それでも彼らは、傷跡とともに歩き続ける。

その先に再び希望があると信じて。

-第三話「希望の終わり」-

絶望は去った。

黒い結晶は砕け、空から姿を消した。

リランティーヌの胸を締めつけていた激痛は止んだ。

クカラースの瞳には再び世界が映る。

ロウナタリーの心にも感情が戻り、

ラディースは自分を責め続ける衝動から少しずつ解放され、

オビオヌも自らの脚で歩けるようになった。

傍から見れば、すべては元に戻ったように見えた。

しかし――誰も笑わなかった。

診療所には、静かな空気だけが流れている。

リランティーヌは庭へ出ても、以前のように鼻歌を歌わない。

薬草を育てる手は動いている。

けれど、その瞳はどこか遠くを見ていた。

クカラースも愛銃を手入れしながら、何度も手を止める。

目は見えている。

それでも、ときどき暗闇を探すように目を閉じてしまう。

ロウナタリーは仕事へ戻った。

政務もこなす。民へ微笑みも向ける。

それでも、心の奥では何かが音もなく崩れたままだった。

ラディースも笑うことはできる。

皆を抱きしめることもできる。

しかし、一人になると、無意識に首の後ろへ手を伸ばしてしまう。

傷はもう増えない。

それでも、傷跡は消えない。

オビオヌは再び診療所へ立つ。

患者を診る。薬を調合する。

「ありがとうございました、先生。」

感謝の言葉を受けても、以前のように心から笑えなかった。

診療が終わると、静かに椅子へ腰を下ろす。

窓の外を見つめる。

「……」

何も言わない。

何も浮かばない。

ある夕暮れ。

五人は診療所の庭へ集まっていた。

空は茜色に染まり、風が静かに草を揺らしている。

長い沈黙。

クカラースが口を開く。

「……終わったんだよね。」

リランティーヌは同意する。

「うん、全部。」

ロウナタリーは呟く。

「なのに、何も終わった気がしない。」

ラディースも話す。

「何かを取り戻した気もしない。」

オビオヌはぼんやりと言う。

「……希望は、もう、消えた。」

誰も否定できなかった。

彼らは生きている。呼吸をしている。

食事もする。眠ることもできる。

それでもあの日まで胸の奥で灯っていた

「きっと大丈夫」という小さな光は、もうどこにも

見当たらなかった。

残っているのは傷跡だけ。

静かな日常だけ。

そして、言葉にできない喪失だけだった。

夕日が沈む。

世界はゆっくりと夜へ包まれていく。

その夜空には、名前のない結晶も、黒い結晶も舞ってはいなかった。

ただ、広い空だけがあった。

その空を見上げる五人の瞳には、希望の光は映っていなかった。

それでも五人は、その場を離れなかった。

希望は消えた。

だが物語だけは、なお終わることなく続いていく。

それがどれほど静かで、どれほど苦しい道であったとしても。

-第四話「抗う理由」-

夕暮れは終わり、夜が訪れる。

診療所の庭には五人だけが残っていた。

誰も希望という言葉を口にしない。

誰も「きっと良くなる」とは言わない。

その言葉は、もう誰の胸にも残っていなかった。

静寂が流れる。

やがて、クカラースがゆっくりと立ち上がる。

その瞳には疲労が残っている。

それでも、まっすぐ前を見据えていた。

「……俺は、そんな道程を進みたくはない。」

その一言が、静かな夜へ響く。

四人はクカラースを見る。

彼は拳を握り締める。

「絶望しかない未来なんて、誰かが苦しみ続けるだけの道なんて、そんなものは……歩きたくない。」

しばらく沈黙が続く。

そして、隣に立つリランティーヌが、小さく笑った。

その笑みは弱々しい。

それでも、どこか昔を思わせる温かさがあった。

「僕もだ。」

その声には確かな意志が宿っていた。

ラディースは二人の前へ歩み寄る。

大きな手で、クカラースの頭をゆっくりと撫でる。

「私もそう思うぞ。」

穏やかな声だった。

「絶望に従うために、お前たちを守ってきたわけではない。」

クカラースは目を閉じ、その手の温もりを静かに受け止めた。

少し離れた場所では、オビオヌが苦笑する。

「奇遇だな。」

肩をすくめながら言う。

「実は私もなんだ。」

「医師というのは厄介なものだ。」

「治らないと言われるほど、治したくなる。」

その言葉に、リランティーヌは思わず吹き出す。

「それ、オビオヌらしいね。」

ほんの少しだけ。ほんの少しだけだったが、

笑い声が庭へ戻る。

最後に、ロウナタリーが静かに口を開いた。

「希望は消えた。」

誰も否定しない。

「ならば、新しく灯せばいい。」

風が吹き、草が揺れる。

夜空には星が瞬いていた。

クカラースは静かに頷く。

「希望が戻るのを待つんじゃない。」

リランティーヌも続ける。

「僕たちが、見つけに行く。」

ラディースは腕を組み、力強く頷いた。

「たとえ何度倒れてもな。」

オビオヌは静かに笑う。

「絶望は病のようなものだ。」

「ならば私は、その治療法を探そう。」

五人は自然と円を作るように並んだ。

誰かが手を差し出したわけではない。

誓いを立てたわけでもない。

それでも、その心は一つだった。

絶望は確かに存在する。

傷も消えない。失ったものも戻らない。

それでも立ち止まることだけは、

自分たちで選ばない。

五人はゆっくりと歩き出す。

今度の旅は、誰かに与えられたものではない。

自ら選んだ道だった。

絶望の中で、それでもなお前を向くための、

五人だけの道程が始まる。

-第五話「それぞれの道」-

夜明け前。世界はまだ薄暗く、風だけが静かに草原を渡っていた。

五人は並んで立っている。

誰も口を開かない。

同じ絶望を知り、同じ喪失を知り、

同じ時間を生きてきた五人。

だからこそ、互いの決意を言葉にする必要はなかった。

クカラースはゆっくりと愛銃を握り直す。

リランティーヌは胸元で小さく祈るように手を重ねる。

ロウナタリーは静かに空を見上げる。

ラディースは四人を穏やかに見つめる。

オビオヌは診療鞄を肩に掛け直した。

やがて、オビオヌが口を開く。

「……ここから先は、それぞれが探すべき答えがある。」

誰も異論はなかった。

リランティーヌは微笑む。

「また会おう。」

クカラースは静かに頷く。

「必ず。」

ラディースは一人ひとりの顔を見渡した。

「帰ってくる場所だけは、忘れるな。」

ロウナタリーも穏やかに言う。

「どれほど遠くへ行こうとも、我々は家族だ。」

その一言に、五人は小さく笑う。

それは以前のような晴れやかな笑顔ではない。

それでも、確かな温もりがあった。

そして――五人は同時に踵を返す。

互いに背を向ける。

誰も振り返らない。

クカラースは東へ。

リランティーヌは西へ。

ロウナタリーは北へ。

ラディースは南へ。

オビオヌは、誰も歩いたことのない道へ。

進む方向は違う。

目的も違う。

探す答えも違う。

しかし、その歩みの根底にある願いだけは同じだった。

絶望に屈しないこと。

風が吹く。

五人の背中を優しく押すように。

草原には五つの足跡が刻まれ、

やがてそれぞれ別々の地平線へ伸びていく。

今はまだ道は交わらない。

それでも彼らは知っている。

どれほど遠く離れても、

共に歩んだ時間は消えないことを。

五つの背中は少しずつ小さくなり、

やがて、それぞれの景色の中へ溶けていった。

世界は広い。

絶望もまた、広い。

だからこそ、五人は一つの道ではなく、

五つの道を選んだ。

それぞれの場所で、絶望に抗うために。

絶望は、消えなかった。

抗っても歩き続けても、心に刻まれた傷跡は、

最後まで消えることはなかった。

それでも五人は歩いた。

誰かのためではなく、世界のためでもなく、

自分自身が、自分を見失わないために。

別々の道を、別々の景色を。

別々の孤独を抱えながら。

誰一人として振り返ることはなかった。

再会を約束することもなかった。

ただ、一歩ずつ。

それぞれの未来へ歩き続けた。

長い年月が流れる。

春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎる。

それを何度繰り返したのか。

もう誰も覚えてはいなかった。

五人は再会しないまま、

幾年もの歳月だけが静かに積み重なっていった。

-絶望:Untitled 完結--来福:Untitled 開幕-

春。柔らかな風が草花を揺らしていた。

世界は、あの日と変わらず美しい。

けれど、その景色を見つめる者は、もうあの頃の五人ではない。

長い旅路は、それぞれに新しい傷と、新しい時間を刻んでいた。

東の果てでは、一人の青年が野花へ静かに水を与えている。

西の町では、一人の医師が名も知らぬ旅人を診ている。

北の城では、一人の王が窓辺から民の営みを見つめている。

南の森では、一人の男が木陰で子どもたちへ剣ではなく、生きる術を教えている。

そしてどこか名前もない街角では、一人の旅人が空を見上げていた。

旅はまだ続いている。

絶望を越えた先に待つものが幸福なのか、

それとも新たな試練なのか、

まだ誰にも分からない。

ただ一つだけ確かなことがある。

止まっていた運命の歯車は、再び静かに回り始めていた。

-来福:Untitled/第一話「偶然という名の運命」-

幾年もの歳月が流れた。それぞれが違う土地で生き、違う景色を見て、違う人々を救い、違う孤独を抱えてきた。再会を約束したことはない。それでもその日だけは、不思議なほど空が澄んでいた。風は穏やかで、名前のない結晶が春の日差しを受け、ゆっくりと舞っている。ラヴァラル王国の片隅、古びた一軒の診療所。かつて五人が共に笑い、泣き、支え合った場所だった。長い年月を埋めるには言葉が足りなかった。春風が吹いた。名前のない結晶が五人の間をゆっくりと舞い上がる。それは、長い別れを越えた再会を祝福するように。あるいは――再び始まる物語を歓迎するように。再会は、偶然だったのか。それとも運命だったのか。その答えを、五人は最後まで求めなかった。答えを知らなくても、目の前には笑い合える仲間がいた。それだけで十分だったから。オビオヌは再び診療所へ立ち、

リランティーヌは穏やかな笑顔で人々を癒やし、

クカラースは世界を巡りながらも帰る場所を持ち、

ロウナタリーは民を導き、ラディースは家族を包み込むように見守り続けた。それぞれの傷は消えない。絶望も、喪失も、歩んできた道程も。何一つなかったことにはならない。それでも、その傷跡さえ抱き締めながら、五人は同じ食卓を囲み、同じ景色を眺め、同じ季節を笑い合って過ごした。空を舞う名前のない結晶は、今度は誰の涙でもなく、誰かの幸福を祝うように静かに輝いていた。 やがて人々は語り継ぐ。

あるところに、決して諦めなかった五人の青年がいたと。彼らは多くを失い、幾度も絶望へ沈み、

それでも立ち上がり続けた。だからこそ、最上級の祝福は彼らへ与えられた。それは富でも、権力でも、永遠の命でもない。大切な人と共に笑い、生き続けられる日々こそが、五人に与えられた何より大きな祝福だった。物語は穏やかに幕を閉じる。

-来福:Untitled 完結--終末:Untitled 開幕-

ある日のことだった。世界から、風が消えた。木々は揺れない。雲は流れない。空を舞い続けていた名前のない結晶も、初めてその動きを止めた。まるで時そのものが息を止めたように、世界は静まり返る。診療所の前に立っていた五人も、同時に空を見上げた。「…おかしい、結晶が…動いてない」

クカラースは周囲を見渡す。鳥の羽ばたきも聞こえない。草も揺れない。ロウナタリーは空を見据えたまま呟く。「世界そのものが…止まっている」

ラディースは拳を握る。長い人生の中でも、

これほど異様な光景を見たことはなかった。

その時、止まっていた結晶の一つへ、小さな亀裂が走り、乾いた音が世界へ響く。

それは一粒だけではない。

次々と、無数の結晶がまるで連鎖するように

砕け始めた。光の欠片が空を覆う。

美しいはずの輝きは、どこか儚く、

まるで世界そのものが崩れ落ちていくようだった。

誰も動けない。誰も声を出せない。

ただ、その光景を見つめるしかなかった。

やがて空の果てから、誰のものでもない声が響く。

「――始まりは、終わる」

その声は優しく、同時に抗えないほど静かだった。

五人は顔を見合わせる。再び訪れた異変。

だが今度は、一人で立ち向かう者はいない。

彼らは同じ場所にいる。同じ空を見上げている。

そして同じ終わりを見届けようとしていた。

世界の終わり、あるいはすべての物語の終着点へ向かう旅が、今、静かに幕を開ける。

-終末:Untitled/第一話「終着点への旅路」-

風は、もう吹かない。

空を満たしていた名前のない結晶は、ひとつ、

またひとつと静かに砕けていく。

草木は揺れず、川の流れさえ、どこかゆるやかに

止まりかけていた。

世界は終わりへ向かっている。

それは誰の目にも明らかだった。

診療所の前。

五人は荷物を整え、静かに歩き始める。

もう帰る場所へ向かう旅ではない。

終わりへ向かう旅だった。

先頭を歩くのはロウナタリー。その隣には

ラディース。少し後ろをリランティーヌとオビオヌが並び、最後尾をクカラースが歩く。

誰も急がない。誰も立ち止まらない。

ただ一歩ずつ確かめるように歩いていく。

最初に訪れた村には、人の姿がなかった。

「…間に合わなかった」

「苦しんだ形跡はない、まるで眠るように消えたんだ…安らかに」

旅は続く。森を越え、山を越え、海を渡る。

世界のどこへ行っても、同じ光景だった。

静かな終わり。争いも悲鳴もない。

ただ、命だけが静かに世界から消えていく。

五人は焚き火を囲んでいた。

火だけが小さく揺れている。

クカラースが炎を見つめながら呟く。

「終わりって、こんなに静かなものなんだね」

炎が少しだけ大きくなる。空を見上げる。星も少なくなっていた。「世界は最後まで、騒がないつもりなのだろう」「でも、僕たちは最後まで歩こう」

「ああ、終わりから目を逸らさない。医師としても、一人の人間としても」

再び歩き出す。

足跡だけが世界へ残る。

誰かを救う旅ではない。

誰かを倒す旅でもない。

世界の終わりを見届ける旅。

すべての物語が辿り着く終着点を、

その目で確かめる旅。

それでも五人は並んで歩く。

誰一人として離れない。

絶望を知った。

希望を知った。

幸福を知った。

そして今、終末を知ろうとしている。

風のない世界で、五人の歩みだけが静かに響いていた。

物語は、終わりへ向かって進み続ける。

旅は終わった。

世界の終わりを見届けるための旅も、

すべての物語の終着点へ向かう旅も。

五人は最後まで歩き続けた。

誰一人、立ち止まらなかった。

誰一人、逃げなかった。

世界は静かに幕を閉じる。

風は止み、海は穏やかになり、空を舞っていた

最後の結晶も、光となって消えていく。

終わりは訪れた。

けれど、物語は消えなかった。

人々は語り継ぐ。

希望を知った医師を。

優しき癒やし手を。

絶望を越えた青年を。

民を導いた王を。

家族を守り続けた父を。

その名は時代を越え、国を越え、

命を越えて語られていく。

伝承となり、神話となり、

やがて名前さえ失われても、

「五人の青年」の物語だけは、決して

忘れられなかった。

それは終わりの物語ではない。

生き続けた者たちの物語。

だからこそ、五人の物語は、

永遠に語り続けられるものとなる。

幾年もの歳月が流れた。

世界は再び緑を取り戻す。

風が吹き、草花が揺れる。

名前のない結晶は、もう空には舞っていない。

それでも、広い草原には五つの人影があった。

青年が五人。

互いに笑い合い、

穏やかな風へ身を任せている。

誰かが何かを語る。

誰かが笑う。

誰かが静かに頷く。

その姿は、遠い昔と何も変わらない。

彼らが誰なのか、誰も知らない。

けれど、草原を渡る風だけは知っていた。

彼らが、長い旅を終えた者たちであることを。

そして、その旅は終わりではなく、

新たな始まりだったことを。

-終末:Untitled 完結-

風が吹く。今度の風は止まらない。

優しく、温かく草原を撫でていく。

五人の青年は並んで立っている。

彼らは互いの顔を見合わせる。

不思議なことに、誰も「久しぶり」とは言わなかった。まるで、ずっと一緒にいたかのように。

そこには、小さな結晶がひとつだけ落ちていた。

昔のような白い結晶でも、

絶望を運んだ黒い結晶でもない。

透明な結晶だった。何色にも染まっていない。

結晶は砕けない。消えもしない。

ただ静かに、掌の中で光を宿していた。

「…始まるのか」「終わったから、始まるんだよ」

見覚えのない、どこか懐かしい道。

「ならば、また歩こう。今度は終わりへ向かうためではない。未来を編むためにな。」透明な結晶は柔らかな光を放ち、世界そのものが少しずつ姿を変えていく。失われたもの、残されたもの、語り継がれたもの。そのすべてを織り直し、新しい物語を紡ぐために、終わりの先で始まる物語。

-再編:Untitled 開幕-

-再編:Untitled/第一話「終わりなき日常」-

穏やかな風が草原を吹き抜ける。

世界は一度終わりを迎え、そして再び紡がれた。

五人はもう、世界を救う旅をしているわけでは

ない。絶望に抗っているわけでもない。

ただ、長い旅路の果てに辿り着いた

「終わりなき日常」を生きていた。

診療所の縁側では、クカラースが愛銃の手入れをしている。慣れた手つきで丁寧に磨いていく。

少し離れた場所では、オビオヌが幾本ものナイフを並べ、その刃こぼれを確認していた。医師として用いるものもあれば、かつて仲間を守るために投げたものもある。

リランティーヌは庭の木陰に座り、自身の魔力をゆっくりと循環させながら調整している。長い年月を生きた今でも、魔力の調整は彼の日課だった。

三人の姿を見守るように、ロウナタリーは紅茶を片手に本を読み、ラディースは穏やかな表情で五人の様子を眺めている。

「懐かしいな。」

クカラースがぽつりと呟く。

愛銃の銃身に映る自分の顔を見つめながら、

遠い昔のことを思い出していた。

まだ少年だった頃。初めてこの銃を手にした日の

ことを。

あの日の自分は、何も知らなかった。

希望も、絶望も。

誰かを失う痛みも、誰かと共に生きる幸福も。

ただ、この銃だけがずっと自分の傍にあった。

幾度となく壊れそうになり、幾度となく自分を

守ってくれた。

「お前も随分長い付き合いになったね。」

クカラースは愛銃を優しく撫で、小さく笑う。

「世界が終わっても、まだ一緒にいるなんて。」

オビオヌはナイフを磨く手を止めずに言う。

「それは銃の方も同じことを思っているだろう。」

「『まさか世界の終わりまで付き合わされるとは』

とな。」

「それは申し訳ないことをしたかな。」

クカラースが苦笑すると、リランティーヌも思わず吹き出した。

「でも、君らしいよ。」

「僕たちは皆、そんなものだろう。」リランティーヌは空を見上げる。終末を越え、再び始まった世界。それでも、自分たちは何一つ変わっていない。変わったのは、もう急いで生きる必要がなくなったことだけだった。ロウナタリーが本を閉じる。「世界の終着点まで辿り着いたというのに、こうして日常を過ごしているとはな。案外、終わりの先というものは退屈なのかもしれん。」「いや、退屈でいい。我々はこれまで、あまりにも多くの物語を生きてきた。だからこそ、何も起こらない日々というものは、何よりも尊い。」

風が吹く。誰も急がない。誰も何かを失わない。そこにあるのは、ただ穏やかな日常だけ。五人は今日も笑い合い、共に時を過ごしている。そして、この日常には終わりがない。

物語は終わった。それでも、彼らの日常は、これからも静かに続いていく。

-再編:Untitled/第二話「終わりなき幸福」-

風が頬を撫でても、名前のない鳥が近くへ

降り立っても、ただ静かに虚空を見つめている。

長い、長い年月だった。希望を、絶望を、幸福を知った。世界の終わりを見届け、新たな世界を歩き始めた。あまりにも多くの道程を歩んできたからこそ、時折こうして何も考えず、ただぼんやりと過ごすことが増えていた。「…最近、幸せすぎて実感がなくて…朝起きてみんながいて、愛銃の手入れをしてご飯を食べて、一緒に笑って何も失わない。そんな日が続くなんて信じられなかったから、夢じゃないかなって」「夢なら、私はずいぶん長いこと同じ夢を見ていることになるな。」「夢じゃないよ、ちゃんとここにいる」「幸福とは案外こういうものなのだ」「特別な出来事があるわけではない」「何も起こらない日常こそが、最も大きな幸福なのだよ」

「なら、世界で一番幸せなのかもしれないね」

穏やかな風が吹く。

今日も変わらず同じ時間を過ごしている。

終わりなき物語の果てに辿り着いた、終わりなき幸福。それは決して派手なものではない。

ただ大切な人たちと共に笑い、生きていける日々。

それこそが、五人が長い旅路の果てに手にした、

何よりも尊い宝物だった。

-再編:Untitled/第三話「終わりなき希望」-

朝日が診療所の窓から差し込む。

小鳥のさえずりと、穏やかな風の音が辺りを

包み込んでいた。今日は何か特別な出来事が起こる日ではない。世界を救う旅もなければ、絶望と戦う日でもない。ただ、大切な人たちと共に生きる一日が始まるだけだった。縁側で草原をぼんやりと眺めている。庭の花々へ水を与え、小さく鼻歌を歌っていた。診療所の薬棚を整理しながら、新しい薬の調合について考えている。窓辺で本を読み、時折紅茶を口にする。朝食の準備をしながら、穏やかな表情で見守っていた。「平和だな」「本当にね」

かつての自分たちは、こんな未来を想像すること

すらできなかった。誰かを失う恐怖に怯え、絶望に飲み込まれ、それでも前を向いて歩き続けてきた。

何度も終わりを迎え、何度も新しい物語を

紡いできた。そんな彼らが今、こうして穏やかな時間を過ごしている。

「昔の私なら、『希望』とは何かと問われれば、

病を治すことだと答えていただろう」

「僕は、誰かと生きることかな」

「我は、民の笑顔を守ることだ」

「私は、お前たちが笑っていることだな」

「私は――明日を迎えられること」

希望とは、大きなものではない。

世界を救うことでも、英雄になることでもない。

明日も目を覚まし、大切な人たちと言葉を交わし、笑い合えること。

それだけで十分なのだ。

五人は草原へ寝転がって空を見上げる。

雲がゆっくりと流れていく。

「もし、この日々が永遠に続くとしたら?」

クカラースの問いに、オビオヌは穏やかに答える。

「歓迎しよう」「無論だ」

顔を見合わせ、小さく笑った。

長い旅路の果てに辿り着いたものは、決して壮大なものではなかった。

けれど、それは何ものにも代え難い宝物だった。

希望は、もう探すものではない。

五人の隣に、静かに在り続けている。

そして今日もまた、穏やかな一日が暮れていく。

終わりなき日常の中で、終わりなき幸福の中で、

終わりなき希望と共に。

-再編:Untitled/第四話「終わりなき絶望」-

穏やかな風が吹く。

診療所には今日も笑い声が響いている。

クカラースは愛銃の手入れをしながら

リランティーヌと談笑し、オビオヌは薬の調合を

行っている。ロウナタリーは窓辺で紅茶を飲み、

ラディースは四人の様子を穏やかな表情で

見守っていた。世界は終わりを迎え、物語は新たに紡がれた。

長い旅路の果てに、五人はようやく「何も起こらない日常」を手に入れた。

今日も昨日と変わらない。

明日もきっと同じだ。

五人は、そう信じていた。

「平和だね」「退屈なくらいにな」

そんな何気ない会話を交わしながら、穏やかな時間は流れていく。

世界は優しく、日常はどこまでも温かかった。

そう思っていた。

そう、昨日までは。

診療所の窓から差し込む朝日と共に、クカラースはゆっくりと目を覚ます。

いつもと同じ朝。

しかし、胸の奥に言いようのない違和感があった。

まるで、何かを忘れているような感覚。

何か大切なものが、指の隙間から零れ落ちていくような感覚。

「……おはよう」

クカラースは居間へ向かい、いつものように声をかける。

四人は穏やかに微笑む。

何も変わらない。

それなのに、クカラースはその笑顔を見て、

ほんの少しだけ恐怖を覚えた。

「どうした?」

オビオヌが問いかける。

「いや…なんでもない」

胸の違和感は消えない。

リランティーヌが淹れた紅茶の香りも、

ロウナタリーの落ち着いた声も、

ラディースの大きく温かな手も。

すべて昨日と同じはずなのに、どこか遠く感じる。

幸福が続くこと。日常が永遠に続くこと。

それは、本当に幸福なのだろうか。

もし、この穏やかな日々が永遠に続くのなら、

もし、誰も傷つかず、誰も失わず、

何も変わらないのなら、

自分たちはこの先、何を願い、

何を生きるのだろう。

絶望は争いや悲劇だけではない。

「変わらない」ということもまた、

一つの絶望なのかもしれない。

長い旅路の果てに手に入れた幸福。

その幸福が永遠であるからこそ、

五人は初めて気づき始める。

終わりなき幸福の先には、終わりなき停滞がある

ことを。

その停滞は、静かに心を蝕んでいく。

風は今日も穏やかに吹いている。

空は青く澄み渡っている。

争いはない。悲しみもない。

それでも、五人はまだ知らない。

この世界に訪れる新たな「絶望」が、かつての絶望とはまったく異なるものであることを。

それは、誰かがもたらすものではない。

世界がもたらすものでもない。

幸福そのものが生み出す、静かで終わりのない絶望だった。

-再編:Untitled/第五話「終わりなき道程」-

穏やかな日々は、今日も変わらず続いている。

朝になれば五人で食卓を囲み、昼には個々の日課をこなし、夜には他愛もない話をして笑い合う。

誰も傷つかない。

誰も失わない。

そんな幸福な日常が続いていた。

しかし、その日常の中で、一人だけ静かに崩れ始めている者がいた。

クカラースだった。

「おはよう」

いつもと変わらない挨拶を交わし、クカラースは

穏やかに微笑む。

その笑顔に違和感はない。

少なくとも、四人にはそう見えていた。

だが、クカラースの心と身体は少しずつ悲鳴を

上げていた。

夜になると眠ることができない。

眠れたとしても、目を覚ました瞬間にひどい疲労感に襲われる。

食事の味も以前ほど感じなくなっていた。

愛銃の手入れをしていても、ふと手が止まり、

何時間もぼんやりと空を見上げていることがある。

何よりも、心が重かった。

幸福なはずなのに苦しい。

何も失っていないはずなのに、

どこか満たされない。

胸の奥にぽっかりと空いた穴のようなものが、

日に日に大きくなっていく。

「どうしたんだろうね、僕。」

誰にも聞こえないよう、小さく呟く。

絶望を乗り越えた。

世界の終わりも見届けた。

大切な人たちも、皆ここにいる。

それなのに、自分だけが前へ進めていないような

感覚があった。

「紅茶を淹れたよ」「ありがとう」

クカラースは小さく笑う。

いつも通り。

それが何よりも得意だった。

昔から、自分の苦しみを隠すことだけは

上手だった。

悲しいときも、苦しいときも、

絶望の中にいたときでさえ、

誰かを安心させるために笑ってきた。

だから今回も、隠し通せると思っていた。

皆に心配をかけたくない。

せっかく手に入れた穏やかな日々を、自分の不調で壊したくない。

そんな思いだけが、クカラースを支えていた。

草原に一人座り込んだクカラースは、

沈みゆく夕日をぼんやりと眺めていた。

「私は、まだ道の途中なのかな」

幸福に辿り着いたはずなのに、心だけがどこか旅を続けている。

終わりなき幸福の中で、終わりなき日常の中で。

クカラースだけが、終わりなき道程を歩き続けて

いた。

そして、その苦しみに気づく者は、まだ誰も

いなかった。

-再編:Untitled/第六話「終わりなき生」-

穏やかな日々は、変わらず続いていた。

クカラースはいつものように微笑み、皆と食卓を

囲み、愛銃の手入れをして過ごしていた。

しかし、その身体と心は限界を迎えようと

していた。

幸福な日常の中で抱え続けた苦しみは、少しずつ、しかし確実にクカラースを蝕んでいた。

「少し散歩してくるね」

クカラースはそう言い残し、一人で草原へ向かった。柔らかな風が吹いている。遠くには診療所が見える。クカラースはゆっくりと空を見上げ、小さく息を吐いた。

「私は、どうしてこんなに苦しいんだろう」

大切な人たちがいる。平和な世界がある。もう何も失ってはいない。それなのに、胸の奥にある苦しみだけは消えることがなかった。

幸福だからこそ、自分が苦しいことを

認められなかった。

「幸せなのに、苦しいなんて贅沢だよね」

自嘲するように笑ったその瞬間、クカラースの

視界が大きく揺らぐ。

呼吸が浅くなり、全身から力が抜けていく。

「…あれ…」

足元がふらつく。

身体を支えようと愛銃へ手を伸ばすが、

指先に力が入らない。

そのまま草原へ倒れ込んだ。

診療所へ戻ってこないクカラースを心配した

四人は草原へ向かう。

そこには、顔色を悪くしたまま倒れている

クカラースの姿があった。

「クカラース!」

リランティーヌが駆け寄り、すぐに回復魔法を

施す。

しかし、身体に異常は見当たらない。

「どうして…?」

オビオヌは静かにクカラースの脈を測る。

「身体の病ではない。」

「心が限界を迎えている。」

ラディースはクカラースを優しく抱き上げる。

その身体は驚くほど軽く感じられた。

ロウナタリーは苦しげに眠るクカラースの表情を

見つめ、小さく呟く。

「ずっと、一人で抱えていたのか。」

診療所のベッドへ寝かされたクカラースは、

高熱こそないものの、苦しげに眉をひそめながら

眠り続けていた。

「ごめん…くるしい…」

眠ったまま漏れた言葉に、四人は言葉を失う。

世界の終わりを乗り越えた青年は、幸福の果てで、自分の生き方を見失っていた。

終わりなき日常、終わりなき幸福、終わりなき生。

生き続けることは、幸福であると同時に、

苦しみでもある。

長い旅路を歩んできたクカラースは、今、

新たな問いと向き合っていた。

「生きるとは何か」

その答えを探す旅は、まだ終わっていない。

-再編:Untitled:第七話「終わりなき救済」-

クカラースが倒れてから数日が経った。

診療所の一室で眠るクカラースの傍には、

いつも誰かがいた。

リランティーヌは毎日回復魔法をかけ、

穏やかに手を握る。

オビオヌは薬を調合し、

身体の状態を診察し続けた。

ロウナタリーはクカラースが眠っている間、

本を読み聞かせるように静かに語りかける。

ラディースはクカラースを抱き上げ、

背中を優しく叩きながら、何も言わずその存在を

受け止めていた。

「大丈夫だ」

「お前は一人ではない」

四人はそれぞれのやり方で、クカラースを救おうとしていた。

長い年月を共に歩んできた家族だからこそ、

苦しんでいるクカラースを放っておくことなど

できなかった。

やがて、クカラースの身体は少しずつ

回復していく。

食事も摂れるようになり、自力で歩けるように

なった。

顔色も戻り、愛銃の手入れをする余裕も生まれた。

「もう大丈夫そうだね。」

リランティーヌが微笑む。

「身体は、な。」

オビオヌは静かに答えた。

クカラースは以前と変わらないように笑う。

皆と食卓を囲み、穏やかに会話を交わす。

しかしその瞳だけは、どこか遠くを見つめていた。

夜になると、一人で草原へ向かう。

空を見上げ、何時間もぼんやりと座り込んでいる。

幸福であることに変わりはない。

皆のことを愛していることにも変わりはない。

ただ、胸の奥にある苦しみだけは消えなかった。

「私は、どうして生きているんだろう」

誰にも聞こえないように、小さく呟く。

長い物語を生き抜いた自分は、これから何を

目指して歩けばいいのか。

何を願い、何を救い、何を失えばいいのか。

その答えだけは、誰にも与えることが

できなかった。

ある日、ラディースは草原に座るクカラースの隣へ腰を下ろした。

「身体は治った。」

「だが、心はまだ苦しいのだな。」

クカラースは静かに頷く。

「皆が救ってくれたのに…」

「謝る必要はない。」

ラディースはクカラースの頭を優しく撫でる。

「心とは、誰かが治してやれるものではない。」

「我々は、お前の隣を歩くことしかできない。」

クカラースは少しだけ目を見開いた。

リランティーヌもオビオヌも、ロウナタリーも

皆、同じことを思っていた。

救いたい。

けれど、クカラースの心の答えだけは、

クカラース自身が見つけるしかない。

身体は救えた。命も救えた。

しかし、心までは救えなかったようだ。

それでも四人は諦めない。

クカラースが答えを見つけるその日まで、

共に歩き続けることを選んだ。

終わりなき日常の中で。

終わりなき幸福の中で。

クカラースの「救済」の物語は、まだ始まった

ばかりだった。

-再編:Untitled/第八話「終わりなき明日」-

クカラースの身体は回復していた。

食事も摂れている。熱もない。

それでも、クカラースの心だけは回復しては

いなかった。

ある朝、クカラースは誰にも何も言わず、

自室へ入る。

そして、静かに扉に鍵をかけた。

「クカラース?」

リランティーヌが扉を軽く叩く。

返事はない。

「少し、一人にしてほしいんだ」

扉越しに聞こえた声は穏やかだった。

しかし、その声はどこか酷く疲れていた。

「わかった。何かあったら呼んでね。」

「ありがとう」

それから、クカラースは自室に閉じこもるように

なった。

食事の時間になれば部屋の前に置かれた食事を

静かに受け取り、少しだけ食べる。

眠っているのかもわからない。

部屋の中からは、ときおり愛銃を手入れする音だけが聞こえてくる。

四人は無理に部屋へ入ろうとはしなかった。

クカラースが今、何と向き合っているのかを

理解していたからだ。

「我らは待つことしかできないようだな。」

ロウナタリーが紅茶を口にしながら呟く。

「うん。今のクカは、自分自身と話をしているん

だと思う。」

リランティーヌは心配そうに扉を見つめる。

「救えないことほど、医師として歯痒いものは

ない。」

オビオヌは小さくため息をついた。

ラディースは静かに頷く。

「だが、救済とは必ずしも手を差し伸べることではない。」

「隣で待ち続けることもまた、救済なのだろう。」

部屋の中。

クカラースはベッドの上で膝を抱えて座っていた。

愛銃は壁に立て掛けられている。

窓から差し込む夕日をぼんやりと見つめながら、

小さく呟く。

「明日が来るのが怖い」

「幸せなのに、どうしてだろう」

「みんながいるのに、どうして苦しいんだろう」

終わりなき日常。

終わりなき幸福。

終わりなき救済。

そして、終わりなき明日。

明日は必ずやって来る。

その明日を迎えることが、今のクカラースには

何よりも恐ろしかった。

何も失わない明日。

何も変わらない明日。

穏やかな明日。

それはかつてクカラースが願い続けた未来だった。

それなのに、今の彼は、その明日から

目を背けていた。

扉の向こうには、大切な四人がいる。

自分を待ってくれている人たちがいる。

それでも、クカラースはまだ扉を開くことが

できなかった。

自分が生きる意味を、自分自身がまだ見つけられていないから。

静かな夜が更けていく。

クカラースの部屋の灯りだけが、小さく揺れて

いた。

-再編:Untitled/第九話「終わりなき死」-

クカラースは、自室で一人膝を抱えていた。幸福なはずの日々の中で、自分だけが前へ進めない。明日を迎えることが怖く、生きる意味も見失ってしまっていた。

「もう、どうしたらいいのかわからない」

小さく漏れた言葉は、誰にも届かない。

愛銃を見つめながら、クカラースは涙を流す。

「…苦しい……生きているのに…苦しいんだ…」

心の痛みは、これまでのどんな傷よりも深かった。

その時、大きな物音が響いた。異変に気づいた四人は、すぐにクカラースの部屋へ駆けつける。扉を開けると、そこには床に座り込み、震えながら涙を流しているクカラースの姿があった。愛銃は手元から離れており、クカラース自身に怪我はない。「クカラース!」リランティーヌが駆け寄る。オビオヌはクカラースに怪我がないことを確認し、安堵の息を漏らした。ロウナタリーは言葉を失い、その場で静かにクカラースを見つめていた。そして、ラディースは優しくクカラースを抱きしめる。「大丈夫だ」優しい声が部屋に響く。ラディースはクカラースの頭を何度も優しく撫でた。「もう、一人で抱え込まなくていい」その言葉を聞いた瞬間、クカラースの張り詰めていたものが崩れていく。「ごめんなさい…苦しかったんだ…皆がいるのに、幸せなのに、それでも苦しくて、どうしていいのかわからなくて…明日が怖い、生きるのが怖い、でも、本当はみんなと一緒にいたい…」「ならば、生きることを諦めなくていい答えが見つからなくても構わない。お前の道程は、まだ終わっていないのだから。」「僕たちは、君が答えを見つけるまで何度でも隣を歩くよ。」「家族としてな。」「明日が怖いのなら、一日ずつ生きればいい。」クカラースはラディースの胸元に顔を埋め、泣き続ける。終わりなき死とは、命の終わりではない。生きる意味を見失い、それでも生き続けようともがくことなのかもしれない。そして、その苦しみは決して一人で抱える必要のないものだった。クカラースの救済の物語は、まだ終わっていない。

-再編:Untitled/第十話「終わりなき答え」-

ラディースに抱きしめられ、大粒の涙を流した

あの日から、数日が経っていた。クカラースは以前よりも穏やかに過ごしているように見えた。しかし、その瞳だけは何かを確かめるように、四人の姿を静かに見つめ続けていた。違和感は、ずっと前からあった。長い年月を共に歩んできたからこそわかる、小さな違和感。好きな紅茶の淹れ方、何気ない言葉の選び方、頭を撫でる仕草。笑うタイミング。どれも本物と同じようで、ほんの僅かに違っていた。そして何より「みんな、あまりにも優しすぎる」クカラースは一人、小さく呟く。幸福が続きすぎていた。争いも苦悩も、何ひとつ訪れない。まるで、自分が願った理想だけを切り取った世界のようだった。 ある日、クカラースは四人の前へ立つ。その表情は静かで、どこか吹っ切れたようにも見えた。愛銃を手にしたクカラースは、四人へ視線を向ける。「ごめん」「でも、私はずっと気づいていたんだ。みんなが偽物だなんて、最初は信じたくなかった。だって、私が一番望んでいた幸せだったから。でも違った。本当のみんななら、私が苦しんでいるとき、みんなは不器用で、時々間違えて、それでも私の隣を歩いてくれる。この世界は優しすぎる。だから、偽物だってわかった。」四人は静かに消え、風が止まる。

草木が揺れることもなく、世界そのものが静かに

歪み始める。「私は、みんなに救われたかったんじゃない。みんなと一緒に、答えのない道を歩きたかった。私が欲しかったのは、完成された幸福なんかじゃない。苦しくても、悩んでも、みんなと生きる明日だったんだ。答えは、『答えなんてなくていい』だった。」

幸福に終着点はない。生きる理由に、完成された答えもない。だからこそ、人は生き続ける。終わりなき日常を、終わりなき幸福を、終わりなき道程を、終わりなき答えを探し続けるのだ。

-再編:Untitled/最終話「"ほんとうのこたえ"」-

真っ白な世界だった。クカラースは一人、果ての見えない空間に立っている。幸福も、絶望も、希望も、終末も。これまで歩んできたすべての道程が、まるで走馬灯のように静かに流れていく。幼い日の自分、愛銃を手にした日の自分、大切な人たちと出会った日のこと、涙を流した日々、笑い合った日々。何度も失い、何度も立ち上がってきた道程。

「僕は、ずっと答えを探していた」生きる理由、幸福の意味、自分がここにいる意味。クカラースは、自分自身に問い続けてきた。終わりなき日常の中で苦しみ、幸福の中で絶望し、生きることに迷い続けた。「どうして、僕だけが苦しいんだろう」

「どうして、幸福なのに涙が出るんだろう」

「どうして、生き続けるんだろう」

問いかけても、答えはどこにもなかった。

そのとき、懐かしい声が聞こえた。

『答えを探す必要なんて、本当にあるのかな』

『答えがなくても、一緒に歩けばいい』

『明日を生きる理由は、明日の中にある』

『お前は、お前のままでよい』

クカラースは静かに目を閉じる。そして、ようやく気づく。「僕は、答えを探すことばかり考えていた」「でも、本当はずっと知っていたんだ」幸福とは何か、生きる理由とは何か。その答えは、ずっと自分の隣にあった。誰かと笑い合うこと、誰かの幸せを願うこと、明日を迎えること、苦しみながらでも、生きようとすること。「僕は、生きていてよかった。」その言葉を口にした瞬間、真っ白な世界に優しい風が吹く。クカラースは小さく微笑んだ。「"ほんとうのこたえ"なんて、ひとつじゃない。生きている限り、答えは変わっていく。だから、探し続けていい。迷い続けていい。僕は、僕のままで生きていけばいい。」クカラースが最後に見つけた”ほんとうのこたえ”。それは、『生きることに、完成された答えはない。だからこそ、生き続けることそのものが答えになる。』ことだった。長い旅路の果てに、クカラースはようやく自分自身を抱きしめることができた。物語は終わる。けれど、彼らの人生は終わらない。これからも笑い、泣き、迷いながら歩き続ける。希望も、絶望も、幸福も、すべて抱きしめて。その道程は、永遠に続いていく。

-Untitled/後日談「終わりのない帰り道」-

暖かな陽の光が、診療所の窓から差し込む。

世界の終わりを見届け、幾度もの絶望と幸福を

越えた五人は、今日も変わらず同じ朝を迎えて

いた。「おはよう」クカラースが眠たげに目を擦りながら居間へやってくる。「おはよう、クカ」リランティーヌは穏やかに微笑みながら紅茶を淹れている。オビオヌは診療所の机に向かい、新しい薬の調合について考え込んでいた。ロウナタリーは窓辺で本を読み、ラディースは朝食の準備をしている。そんな何気ない朝。かつてのクカラースなら、この日常に意味を求めていたのかもしれない。「僕、最近思うんだ」「どうした?」「昔の僕は、生きる意味とか、幸福の意味とか、答えばかり探していたんだ。でも今は朝起きて、『おはよう』って言えるだけで充分なんだ」「ずいぶんと丸くなったものだ」「昔は世界の終わりまで飛び回っていたのにな」「思い返すと、本当に大変な人生だったよね」「大変だったからこそ、今があるのだ」昼下がり。五人は草原へ寝転がって空を見上げていた。白い雲がゆっくりと流れていく。誰も何も話さない。それでも、不思議と心地よかった。「なあ、もしまた絶望が来たらどうする?」「迎え撃つ。」「私は民を守る。」「僕はみんなを回復するよ。」「私はお前たちを抱きしめよう。」「じゃあ、僕はみんなの隣で笑ってる。」

もう、答えを探さなくていい。

生きる理由を無理に言葉にしなくていい。

苦しい日は苦しいと言えばいい。

泣きたい日は泣けばいい。

幸福な日は、思い切り笑えばいい。

それが、クカラースの見つけた

”ほんとうのこたえ”だった。

夕暮れ時。

診療所へ帰る五人の背中を、優しい風が包み込む。

帰る場所がある。

待ってくれている人がいる。それが何よりも幸福だった。物語は終わった。けれど、人生はこれからも続いていくのだろう。

-Untitled/後日談「幾年の、その先へ」-

季節は幾度となく巡った。春に花が咲き、夏には青々とした草原が広がり、秋には木々が色づき、冬には暖炉の火を囲む。そんな当たり前の日々を、五人は数えきれないほど繰り返してきた。診療所は今も変わらずそこにある。かつて「希望の名医」と呼ばれたオビオヌは、今もなお診療所に立ち続けていた。診療所には今日も多くの人々が訪れ、彼は穏やかな笑みを浮かべながら患者の話に耳を傾ける。

「先生、この薬草はどう使うんですか?」若い弟子の問いに、オビオヌは静かに微笑む。「焦る必要はない。一つひとつ覚えていけばいい。私も昔は、多くの者たちに支えられてきたのだから。」診療所の薬棚には、新しい薬草や書物が並んでいる。その隅には、長い年月を共に歩んできた四人との写真が大切に飾られていた。庭では、リランティーヌが子どもたちへ魔法を教えている。「回復魔法で一番大切なのは、相手を想うことだよ。」子どもたちは目を輝かせながら頷く。リランティーヌは昔と変わらぬ穏やかな笑みを浮かべていた。彼の周りにはいつも人が集まり、診療所を訪れた人々は、「この場所は不思議と心が落ち着く」と口を揃えて言う。ロウナタリーは世界各地の国々と交流を深めながら、時折診療所へ帰ってくるようになっていた。「世界はずいぶんと平和になったな。」そう言いながら紅茶を飲む姿は、昔と何も変わらない。ラディースは今日も診療所の縁側に座り、穏やかに皆を見守っている。診療所を訪れる子どもたちは皆、ラディースの膝の上がお気に入りだった。「ラディースさん、お話を聞かせて!」よかろう。では、昔々、五人の少し変わった青年がいてな。」子どもたちは目を輝かせる。その物語の主人公たちが、今まさに目の前にいることを、子どもたちはまだ知らない。そして、クカラース。彼は相変わらず愛銃の手入れを欠かさない。しかし、昔のように一人で苦しみを抱え込むことはなくなっていた。ある日の夕暮れ。診療所の屋根の上に腰掛けたクカラースは、沈みゆく夕日を眺めながら小さく笑う。「昔の僕に『君は幸せになるよ』って言っても、きっと信じないだろうな」「間違いないな」「でも、今でも答えなんてわからないことばかりなんだ」「それでいい」「答えがないから、人は生き続ける」長い長い道程だった。絶望を、喪失を、希望を、幸福を知った。そして今、当たり前の日常の尊さを知っている。夜になると、五人は暖炉の前に集まり昔話に花を咲かせる。笑い声は診療所の外まで響き、暖かな灯りは夜の草原を優しく照らしていた。彼らの物語はとうの昔に幕を下ろしたのかもしれない。けれど、それは決して終わりではなかった。物語のその先には、何気ない日常がある。それこそが、五人が長い旅路の果てに辿り着いた、本当の幸福だった。そして今日もまた、診療所には穏やかな風が吹く。五人の道程は、これからも終わることなく続いていく。

1Untitled/後日談「伝説の、その先で」-

幾百年という歳月が流れた。

かつて世界の終わりを旅した五人の青年たちは、

今では伝説として語り継がれている。

子どもたちは学校で「五人の英雄」の物語を学び、大人たちは暖炉を囲みながら彼らの物語を語る。

希望の名医、オビオヌ。

偉大なる帝王、ロウナタリー。

優しき魔法使い、リランティーヌ。

家族を守り続けたラディース。

そして、幾度もの絶望と幸福を越え、

"ほんとうのこたえ"を見つけたクカラース。

人々は彼らを英雄と呼び、神話と呼び、

永遠に語り継いでいた。

しかし彼らの物語はまだ終わっていない。

草原の中央に建つ、小さな診療所。

幾年前から何ひとつ変わらないその場所には、

今日も穏やかな風が吹いていた。長い旅路を歩み、数え切れないほどの物語を生きた伝説の英雄たちは、人々が思うような遠い存在ではない。今日も笑い、今日も食卓を囲み、今日も穏やかな

日常を過ごしている。幾年の時が流れても、伝説となっても、彼らは何ひとつ変わらない。診療所には今日も暖かな笑い声が響く。世界がどれほど姿を変えようとも、この場所だけは変わらない。五人はこれからも穏やかな日々を歩み続ける。

終わることのない物語の、その先へ。

-Untitled/最果ての物語「はじまりのまえ」-

そこには、空、大地、海、星々、季節、時間という概念すら生まれていない、世界の始まりよりも前の場所。誰も名前を持たず、何も語られることのない

最果ての世界。その世界に存在するのは、たった五人だけだった。彼らは、世界が生まれるよりもずっと前からそこにいた。誰が創ったのかもわからない。なぜ存在していのかもわからない。ただ、当たり前のように共にあった。世界は真っ白だった。

どこまでも続く白い大地の中央には、小さな草原がある。草原だけが、この最果ての世界で唯一の

「帰る場所」だった。

「退屈だな」「世界がないのだから当然だ」

「でも、嫌いじゃないかな」「私もだ」

「お前たちがいるのならば、それだけで十分だ」

この世界には、苦しみも絶望も争いもない。

世界を救う必要もなければ、生きる理由を探す

必要もない。ただ五人だけが存在し、穏やかな時間が流れている。

「もしいつか世界が生まれるとしたら、

皆はどうする?」「生まれた世界を見に行く」

「その世界の王となる者を見守る」

「その世界の人たちを救えるような魔法を教える」

「お前たちの帰る場所を守ろう」「じゃあ…….」

「お前は、お前のままでいい」「また、それか」

「何万年経っても同じことを言われてる気がする」「何億年経とうと変わらん、お前はお前でよい」

世界はまだ存在しない。

それなのに、五人はどこか懐かしい幸福を

知っていた。

やがて、この白い世界から無数の物語が生まれていく。希望の物語も。絶望の物語も。幸福の物語も。

そして、「Untitled」という名の長い道程も。

けれど、そのすべてが終わったとしても、

五人が帰ってくる場所は変わらない。

世界の始まりよりも前から、

世界の終わりよりもずっと先まで。

草原の灯りは消えることなく、

五人を待ち続けている。

腕の中で小さな欠伸をした。「眠るか?」「…うん」抱いたまま、背中を優しく叩く。静かに毛布をかけ、紅茶を淹れ、穏やかに微笑んだ。安心したように目を閉じる。

「ねえ、みんな」「なんだ?」

「もしこれから何億回世界が生まれて、何億回終わったとしても―—ずっと、一緒にいてくれる?」

「あたりまえだ」

嬉しそうに微笑み、そのまま穏やかな寝息を立て始めた。

世界の始まりよりも前から存在した五人は、

これからも共に歩み続ける。

物語が生まれる前から、

物語がすべて終わった後までも。

これは、すべての物語の原点であり、終着点。

五人だけが知る、最果ての世界の物語。

-Untitled 完結-

--あるところに、草原がありました

その草原では、◻︎◻︎する者たちが暮らしています

どうやら、これが幸せなようです--


<登場キャラクター>

【クカラース・ラヴァラル(Kuclarth Lavroll)】

■基本情報

名前:クカラース・ラヴァラル

性別:男性

年齢:20代前半の見た目(実年齢:数千歳)

誕生日:2月29日

身長:176cm

体重:55kg

一人称:私→僕

二人称:君、貴方

イメージカラー:エメラルドグリーン

■外見

髪色:金に近い茶髪

髪型:肩にかからない短髪

瞳の色:髪色より暗い茶色

服装:貴族服

装飾品:なし

声の特徴:低く優しい声

利き手:左手

■傷跡

位置:右側の骨盤付近から右足首まで続く

一本線の傷跡

由来:自然破壊によって負った傷

後遺症:右脚に痛みが生じることがある

■性格・特徴

長所:音や匂いだけで周囲を判断できる

短所:右脚の不調によって行動が制限される

ことがある

癖:無意識に右脚へ触れる

口癖:なし

好きなもの:ルウィ

苦手なもの:刺激の強いもの、味の濃いもの

■感情表現

怒ったとき:相手と向き合い、

言葉で解決しようとする

本気で怒った場合のみ銃を放つ

泣いたとき:涙を止めようとせず、そのまま泣く

甘え方:ラディースの膝の上で眠る

甘やかし方:相手の頭を優しく撫でる

■戦闘設定

武器:銃

戦闘スタイル:銃弾の反動や軌道を利用し、

空中を自由自在に飛びながら戦う

得意:空中戦、回避戦闘、高機動戦

苦手:銃以外のすべての武器

特殊能力:なし

必殺技:なし

■過去

出身:ラヴァラル王国

幼少期:生まれてすぐに両目が見えない

ことが判明

数年後には右脚が不自由となる

最大の喪失:両親との別れ

最大の幸福:五人で共に生きていること

人生の転機:オビオヌとの出会い

■五人の中での立ち位置"五人の末っ子"

特に仲が良い人物:リランティーヌ

最も甘える相手:ラディース

守りたい人物:リランティーヌ、オビオヌ

救われた人物:自分以外の5人、ラヴィーン、

そして自分自身。

■Untitled設定

希望を象徴するもの:ラディース

絶望を象徴するもの:オビオヌ

幸福を象徴するもの:リランティーヌ

生を象徴するもの:ロウナタリー

死を象徴するもの:ラヴィーン、バラナイスル

"ほんとうのこたえ":クカラース

■キャラクターテーマ

「答えを探し続け、最後に自分自身こそが

答えであると知った主人公。」

彼の道程そのものが、『Untitled』という物語の

“ほんとうのこたえ”である。


【オビオヌ・セラフィスト(Oubeunn Sellphist)】

■基本情報

名前:オビオヌ・セラフィスト

性別:男性

年齢:20代前半の見た目(実年齢:数千歳)

誕生日:4月4日

身長:195cm

体重:58kg

一人称:私

二人称:きみ

イメージカラー:ワインレッド

■外見

髪色:茶色

髪型:ハーフアップ

瞳の色:茶色(髪色と同じ)

服装:白衣

装飾品:なし

声の特徴:中性的で高い声

利き手:両手

■傷跡

位置:胸骨付近

由来:過去の事件によって負った傷

備考:彼の人生における絶望と喪失を

象徴する傷跡

■性格・特徴

長所:非常に優れた記憶力を持つ

短所:慢性的に気力が乏しく、

無理をしてしまうことがある

癖:ぼんやりと虚空を見つめる

口癖:「大丈夫」

好きなもの:診療所

苦手なもの:自身の研究資料

(過去を思い出してしまうため)

■感情表現

怒ったとき:怒鳴ることはなく、

苦しげな表情を浮かべる。

泣いたとき:滅多に涙を見せない

甘え方:ほとんど甘えることはない

甘やかし方:相手の背中を優しく撫でる

■戦闘設定

武器:ナイフ

戦闘スタイル:投擲したナイフによる

遠距離・中距離戦闘

得意:ナイフを用いた戦闘全般

苦手:特になし

特殊能力:なし

必殺技:なし

■過去

出身:ラタルア王国

幼少期:幼い頃から医者になることを夢見ていた

最大の喪失:聴力を失ったこと

最大の幸福:大切な仲間たちと出会えたこと

人生の転機:四人と出会ったこと

■五人の中での立ち位置"五人の最年長"

特に仲が良い人物:ロウナタリー

最も甘える相手:ロウナタリー

守りたい人物:リランティーヌ、クカラース

救われた人物:自分以外の4人

■Untitled設定

希望を象徴するもの:リランティーヌ

絶望を象徴するもの:オビオヌ

幸福を象徴するもの:ロウナタリー

生を象徴するもの:ラディース

死を象徴するもの:オビオヌ

"ほんとうのこたえ":クカラース

■キャラクターテーマ

「希望を与え続けながら、自らの内に

絶望と死を抱く名医」

人を救うことを生涯の使命としながら、自分自身を救うことだけは苦手な青年。『Untitled』における

救済と絶望を象徴する存在であり、診療所という“帰る場所”を守り続ける最年長である。


【ラン・ローノ(Rurn lornan)】

■基本情報

名前:ラン・ローノ

偽名:リランティーヌ

性別:不明

年齢:10代程の見た目(実年齢:数千歳)

誕生日:9月12日

身長:151cm

体重:40kg

一人称:僕

二人称:君

イメージカラー:ブラック

■外見

髪色:オビオヌより暗い茶色

髪型:ウルフカット

瞳の色:髪色と同じ茶色

服装:フード付きの外套

装飾品:なし

声の特徴:オビオヌより低く、

クカラースより高い声

利き手:右手

■傷跡

位置:左側の額から左目、左頬まで伸びる

一本線の傷跡

由来:過去の事件によって負った傷

備考:彼の過去と、生き続けることを

選んだ証でもある

■性格・特徴

長所:誰よりも優しく、他者を思いやる

ことができる

短所:自分を犠牲にしてでも他者を優先し、

無理を重ねてしまう

癖:特になし

好きなもの:ルウィ入りのウァレクライ

苦手なもの:ルウィ入りのウァレクライ以外の

食べ物

備考:実はかなりの甘えん坊

■感情表現

怒ったとき:瞳から光が消え、静かな怒りを見せる

泣いたとき:感情を抑えきれず、思わず泣き喚いてしまう

甘え方:クカラースやオビオヌの傍で

静かに甘える

甘やかし方:言葉を多く語らず、静かに寄り添う

■戦闘設定

武器:なし

戦闘スタイル:魔法による支援・防御型戦闘

得意:防御魔法、回復魔法、光魔法を用いた戦闘

苦手:攻撃魔法や近接戦闘

魔法・特殊能力:防御魔法、回復魔法、光魔法

必殺技:なし

■過去

出身:カラール王国

幼少期:慢性カラクリ症候群を患っていた

最大の喪失:慢性カラクリ症候群によって失った

ものの数々

最大の幸福:生きていることそのもの

人生の転機:オビオヌ、クカラースとの出会い

■五人の中での立ち位置

"優しい弟"(実年齢はクカラースより上)

特に仲が良い人物:クカラース

最も甘える相手:クカラース、オビオヌ

守りたい人物:自分以外の全員

救われた人物:自分以外の4人、バラナイスル

■Untitled設定

希望を象徴するもの:クカラース

絶望を象徴するもの:オビオヌ

幸福を象徴するもの:バラナイスル

生を象徴するもの:ラディース

死を象徴するもの:ラン・ローノ

"ほんとうのこたえ":リランティーヌ

■キャラクターテーマ

「幸福を知り、生きることを愛した光の魔法使い」

本名である「ラン・ローノ」は死を象徴し、

偽名である「リランティーヌ」は幸福と

"ほんとうのこたえ"を象徴する。かつて喪失の中にいた彼は、多くの人々との出会いによって、

生きることそのものを幸福だと知った。『Untitled』において、最も純粋に“生きることの尊さ”を

体現する存在である。


【ロウナタリー・セラフィスト

(Rawntlly Sellphist)】


■基本情報

名前:ロウナタリー・セラフィスト

性別:男性

年齢:数十歳の見た目(実年齢:数千歳)

誕生日:4月1日

身長:178cm

体重:60kg

一人称:我

二人称:お前

イメージカラー:カドミウムイエロー

■外見

髪色:茶髪

髪型:クカラースよりも短い短髪

瞳の色:茶色

服装:貴族服

装飾品:なし

声の特徴:低く優しい声

利き手:左手(元は右利き)

■傷跡

位置:右手から右肩にかけての傷跡

由来:過去の事件によって負った傷

備考:現在は右手をほとんど使用せず、

左手を利き手としている

■性格・特徴

長所:よく笑い、周囲を明るくする

短所:どんなときでも笑顔を絶やさず、

自分の苦しみを隠してしまう

癖:よく笑う

好きなもの:本人にもわからない

苦手なもの:痛み

備考:王としての威厳を持ちながら、

誰よりも人を愛する人物

■感情表現

怒ったとき:怒りを向けるのではなく、

相手のことを心配する

泣いたとき:誰にも気づかれないように

静かに涙を流す

甘え方:控えめに甘える

甘やかし方:相手を存分に褒め称える

■戦闘設定

武器:なし

戦闘スタイル:なし

得意な戦い方:なし

苦手な戦い方:なし

魔法・特殊能力:なし

必殺技:なし

■過去

出身:ラタルア王国

幼少期:王として育てられる

最大の喪失:オビオヌを失ったこと

最大の幸福:オビオヌと共にいられること

人生の転機:オビオヌという存在そのもの

■五人の中での立ち位置"優しく明るい兄"

特に仲が良い人物:オビオヌ

最も甘える相手:オビオヌ

守りたい人物:オビオヌ

救われた人物:オビオヌ

■Untitled設定

希望を象徴するもの:オビオヌ

絶望を象徴するもの:ロウナタリー

幸福を象徴するもの:自分以外の皆

生を象徴するもの:リランティーヌ

死を象徴するもの:ロウナタリー

"ほんとうのこたえ":オビオヌ

■キャラクターテーマ

「愛する者のために生き、愛する者こそが

人生の答えである王」

偉大なる帝王として国を統一しながらも、

彼が本当に望んだものは権力や名誉ではなく、

大切な者たちと穏やかな日常を過ごすことだった。『Untitled』において、愛することの尊さと、

人を想い続ける生き方を体現する存在である。

彼にとっての“ほんとうのこたえ”は、

いつの時代もオビオヌ・セラフィストである。


【ラディース・ラヴァラル(Ladys Lavroll)】

■基本情報

名前:ラディース・ラヴァラル

性別:男性

年齢:20代前半の見た目(実年齢:数千歳)

誕生日:8月10日

身長:164cm

体重:51kg

一人称:私

二人称:お前

イメージカラー:コバルトブルー

■外見

髪色:黒

髪型:クカラースより長い短髪

瞳の色:黒

服装:貴族服

装飾品:左手薬指の指輪

声の特徴:低く太く、冷たい印象を与える声

利き手:右手

■傷跡

位置:首の後ろ

由来:己の意思によって負った傷

備考:誰にも語られることのない、

彼自身の決意と過去を象徴する傷跡

■性格・特徴

長所:常に冷静で、感情に流されない

短所:すべてを一人で抱え込み、

自分の弱さを見せようとしない

癖:無意識に首の後ろへ触れる

好きなもの:クカラース、ラヴィーン

苦手なもの:なし

備考:冷淡に見えるが、深い愛情を持つ人物

■感情表現

怒ったとき:相手を拒絶し、自ら距離を置こうとする

泣いたとき:涙を見せることを拒絶する

甘え方:甘えることそのものを拒絶するが、

本当に心を許した相手には静かに寄り添う

甘やかし方:頭を優しく撫でる

■戦闘設定

武器:なし

戦闘スタイル:なし

得意な戦い方:なし

苦手な戦い方:なし

魔法・特殊能力:なし

必殺技:なし

■過去

出身:ラヴァラル王国

幼少期:ラヴィーンと出会う

最大の喪失:ラヴィーンを失ったこと

最大の幸福:クカラースの存在

人生の転機:ラヴィーンとクカラースとの出会い

■五人の中での立ち位置/"父"

特に仲が良い人物:クカラース

最も甘える相手:クカラース

守りたい人物:クカラース

救われた人物:ラヴィーン、クカラース

■Untitled設定

希望を象徴するもの:リランティーヌ、オビオヌ

絶望を象徴するもの:ラディース

幸福を象徴するもの:クカラース

生を象徴するもの:ロウナタリー

死を象徴するもの:ラヴィーン

"ほんとうのこたえ":クカラース

■キャラクターテーマ

「愛する者の帰る場所であり続ける父」

冷たく見える言葉や態度の奥には、誰よりも深い愛情を抱えている。ラヴィーンから受け取った愛を

クカラースへと繋ぎ、どれほど長い年月が流れても、彼が安心して眠れる居場所であり続けることを願っている。『Untitled』において、ラディースは“家族”と

“無償の愛”を象徴する存在であり、クカラースにとっての希望であり、幸福そのものなのである。


【ラヴィーン・ラヴァラル(Loveyn Lavroll)】

■基本情報

名前:ラヴィーン・ラヴァラル

性別:女性/年齢:数千歳/誕生日:7月7日

身長:168cm/体重:53kg/一人称:私

二人称:貴方、あなた/イメージカラー:スカーレット

■外見

髪色:赤色/髪型:ボブカット/瞳の色:赤茶色

服装:貴族服/装飾品:左手薬指の指輪

声の特徴:高く優しい声/利き手:右手

■傷跡

位置:両肩から背中にかけて

由来:かつて存在した両翼の痕跡

備考:天使の末裔であることを示す傷跡であり、

彼女の生きた証でもある

■性格・特徴

長所:明るく優しく、誰にでも愛情を注ぐことができる/短所:別れる選択をしたこと/癖・口癖:なし

好きなもの:自然/苦手なもの:自然破壊

■感情表現

怒ったとき:決して相手を逃がさず、自身の信念を貫く/泣いたとき:涙を流しながら微笑む「笑い泣き」をする/甘え方:そっと相手の傍へ寄り添う

甘やかし方:優しく寄り添い、温かく見守る

■戦闘設定

武器:なし/戦闘スタイル:膨大な魔力を用いた戦闘

得意:魔力を扱うこと/苦手:魔力を用いない戦闘

魔法・特殊能力:魔力/必殺技:なし

■過去

出身:ラヴァラル王国

幼少期:天使の末裔として生まれる

最大の喪失:クカラースとの別れ

最大の幸福:クカラースとラディースと

共に過ごした日々

人生の転機:クカラースという我が子と

出会えたこと

■関係性/"母"

特に仲が良い人物:ラディース

最も甘える相手:ラディース

守りたい人物:ラディース、クカラース

救われた人物:ラディース、クカラース

■Untitled設定

希望を象徴するもの:ラディース

絶望を象徴するもの:ラヴィーン

幸福を象徴するもの:クカラース

生を象徴するもの:ラディース

死を象徴するもの:ラヴィーン

"ほんとうのこたえ":ラヴァラル

■キャラクターテーマ

「愛を遺し、命を繋いだ母」

天使の末裔として生まれ、自然と生命を何よりも愛した女性。彼女がクカラースへ遺した愛はラディースへ、そして『Untitled』という物語そのものへと受け継がれていく。彼女にとっての

“ほんとうのこたえ”は『ラヴァラル』という家族の名前であり、愛する者たちと紡いだ命の軌跡そのものである。


【バラナイスル(真名不明)】

■基本情報

名前:不明/通称:バラナイスル

性別:不明/年齢:不明/身長:不明/体重:不明

誕生日:8月31日/一人称:我/二人称:お前

イメージカラー:ホワイト

■外見

髪色:不明/髪型:不明/瞳の色:不明

服装:漆黒の装い/装飾品:不明

声の特徴:低く冷たい声/利き手:不明

■傷跡

位置:全身/由来:自然破壊によるもの

備考:全身を覆う傷跡は、世界そのものと深く関わる存在であることを示している

■性格・特徴

長所:不明/短所:不明/癖・口癖:不明

好きなもの:リランティーヌたちが存在する世界

苦手なもの:リランティーヌたちが存在しない世界

■感情表現

怒ったとき:感情をぶつけるのではなく、真正面から向き合う/泣いたとき:静かにその場から消える

甘え方:不明/甘やかし方:静かに寄り添う

■戦闘設定

武器:なし/戦闘スタイル:なし/得意な戦い方:なし 苦手な戦い方:なし/魔法・特殊能力:なし

必殺技:なし

■過去

出身:なし 幼少期:なし

最大の喪失:自らの力ではリランティーヌを

救うことができなかったこと

最大の幸福:リランティーヌという存在

人生の転機:リランティーヌとの出会い

■関係性

五人の物語における立ち位置:不明

特に仲が良い人物:不明/最も甘える相手:不明

守りたい人物:リランティーヌ

救われた人物:リランティーヌ

■Untitled設定

希望を象徴するもの:リランティーヌ

絶望を象徴するもの:リランティーヌ

幸福を象徴するもの:リランティーヌ

生を象徴するもの:リランティーヌ

死を象徴するもの:バラナイスル

"ほんとうのこたえ":バラナイスル

■キャラクターテーマ

「名前すら持たず、ただ一人を想い続ける存在」

バラナイスルは、生まれも過去も正体も明かされていない。彼(彼女)が唯一確かに持つものは

リランティーヌへの想いだけである。希望も、絶望も、幸福も、生も、そのすべてはリランティーヌという存在によって意味を持つ。だからこそ、

バラナイスル自身は『死』を象徴している。

『Untitled』において、バラナイスルは

「誰かを救いたかった存在」であり、

「救えなかったことを抱えたまま愛し続ける存在」

である。その真名は最後まで明かされることなく、

物語の始まりより前から終わりより先まで、静かにリランティーヌたちの世界を見守り続けている。

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