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第五話 『判明点、不明点』

さすがに寝ないとまずい。

もう何度もろうそくを取り替えている。



僕は深夜まで『概論』を細部まで読み漁った。


おかげで魔導人形に関してのおおよその知識は得ることができたし、その性能に関してもある程度理解できた。


いくつか判明した点を整理しよう。



【1.「攻める」ことよりも「守る」ことの方に力を入れて製作されている。】


魔導人形は基本的に敵地に攻め入ることや、誰かを殺すことを前提に設計されていない。


もちろん、それらを可能にする力は過剰と言えるほどまでにあるし、主人の命令次第ではそう言った「攻め」の姿勢も見せるのかもしれないが…。


だが、「敵を破壊・殺害する」ことと「味方を守る」ことが同時に発生した場合は、後者の方を優先して行動するようになっているらしい。




【2. 感情リミッターの仕様】


戦闘の効率性を上げるために、魔導人形自身の感情の起伏に強制的で極端な制限がかけられているみたいだ。


戦闘中に相手の殺気や怒りの感情を読み取るのは非常に効果的だと父さんが言っていたけど、魔導人形はこの技術を非常に高度なレベルで扱えるってわけだ。


だがそれは裏を返せば、魔導人形には高度な共感能力や感情表現の機能が備わってることにもなるのか…?




【3. フィルタニア王族の血中遺伝情報マナ・コード


正直これが最も謎だ。


『概論』の中では、フィルタニア王族の血液情報を鍵にして起動する仕組みらしと記載されているのだが、巻末には「完成はしたが起動しなかった」とある。


ここまですごい研究を行う人たちが簡単なミスなんてしないだろうし、本当に完成したのか怪しい。


ま、フィルタニア王族なんてトンデモ貴族さんの血なんて入手できないから、もし魔導人形の『現物』が見つかったとしても起動実験なんてできないんだけどね…。




――――




これらの情報から理解できるのは、魔導人形はただの「人殺しの道具」ではなさそうだということ。


もちろん、人が何百人集まろうが勝てるような存在ではないのだろうだが、この人形の設計思想には「何かを守る」という意志を感じる、気がする。


おそらく、フィルタニア王族を守ることに特化したもの…なのか?

血中遺伝情報マナ・コードが起動の鍵になっていることがなんともそれっぽい。


でも、戦争なんていう極限の状況下の中で、何故起動しなかったのだろう…。

王族を守らなきゃいけないタイミングなんて、戦争中くらいしかないんじゃないのか。


わかっていくことが増えると、わからないことも同時に増えていくな。


正直、僕はこの感覚が「好き」だ。


山を登るとより遠くの景色が見えるように、知識を積み重ねると今まで見えなかったものがよく見える。


そしてより遠くまで見えると、自分が登っていた山よりさらに巨大な山(疑問)を見つけられる。


またその山を昇る…。


この繰り返しがたまらなく好きなのだ。

単純な反復作業に思えるが、その実かなり奥深い。


毎回、その疑問を解決するための手法が異なっていたり、なんてことない偶然がきっかけになって解決することだってある。


今僕が身につけた魔導人形に関する知識も、結局は魔導人形に対する新たな疑問を生んだに過ぎない。


だが、以前よりも知っていることは確実に増えた。




僕は今、昨日の僕に勝利しているのだ。




――――




さて、深夜テンションで変なことを考えてばかりいないで、朝日が昇る前に寝てしまおう。


明日は早いぞ。



…というか、明日は15歳の誕生日か。


やばいな、夜更かししちゃった…。

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