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第四話 『知的好奇心』


急いで頼まれていた薬草を採取し、家路につく。


父さんに「とんでもない量をとってくる」なんて豪語したが、時間がなさすぎて全然採取できなかった。


今朝、母さんが持たせてくれた弁当も食べそびれたし…。


母さんの持たせてくれた弁当は、パンに燻製肉とチーズを挟んだいつものサンドイッチだった。



「絶対父さんにバカにされる〜…。」



そんなことをぼやきながら、母さんが渡してくれたサンドイッチの最後のひとかけらを口に放り込む。



そして、あの部屋から持ってきてしまった『概論』を眺める。



「持ち出してきちゃったなぁ…。」



あの部屋ではじっくり読めなかったから家に帰ってじっくり読もうなんて、よこしまな考えが働いてしまった結果だ。



まぁいいさ。家に帰ってからじっくり読もう。




――――




「ハル、遅かったな。」


居間で薬草を調合していた父さんが、少し心配した様子で声をかける。


「思っていたより薬草が見つからなかったんだよ。遅くなってごめんね。」


「はは、なんだ、今朝は「とんでもない量」なんて言っていたのにか。」


案の定からかわれた。


「それにしてもこの時期に薬草があまり取れないなんてことは珍しいな…。

自生している場所に何かあったのか?」


父さんが冷静に突っ込んできた。


困るな、どうやって答えよう…。


「あー…、実は途中で美味そうなミカナの実を見つけて、夢中になってたらそのまま日差しが気持ちよくて眠っちゃって…。」



父さんはキョトンとした顔で僕を見つめる。



「わははは、なんだそりゃ!ハルも15歳になるってのにまだまだ子供だな!

まぁまだ完全に予備がなくなるわけじゃないし、別に問題はないぞ。

たまにはそういう時間があってもいい。」


父さんは大きく笑いながらそう言った。


正直かなり恥ずかしいが、謎の部屋で殺戮人形の研究資料を読んでいた、なんて口が裂けても言えないからね。


「ハルはおっとりした子だからね。こんなこともたまにはあるわ。」


クスクスと笑いながら厨房から母さんがやってきた。


「もう、母さんまでやめてよ…。」


嘘なのだが、それでも恥ずかしい。


「あら、ハル。その本はどうしたの?」


僕が少し体で隠すように持っていた本が見つかった。

というか、自室に隠す前に父さんに見つかったからそんな時間はなかっただが…。


「あ、ああ、これは近所のお兄ちゃんに借りたんだ。

前から借りる約束してたんだけど、向こうがずっと忘れてて…。」


「あらそうなの。読んだらちゃんと返すのよ?」


「わかってるよ。明日には返すさ。」


採取してきた少しばかりの薬草を詰めた籠を置き、2階の自室へと急足で上がった。




――――




夕食の時間が来るまで、この『概論』を読み漁る。

正直、今日一日で読破できるかは微妙だが…。


しかし、一度人形の展開図を見たことで、理解は随分としやすくなっていた。


専門的な用語は多くあるが、『概論』ということだけあってそこまで突っ込んだ内容は記されていない。


なんなら注釈まで書かれており、僕のような初学者に優しい。


この人形がどのような仕組みで動いていて、どのような機能を持っているか。

そういったことのおおまかな説明ばかりが書かれていた。


おそらく、この『概論の著者』は、魔導人形の知識を持っていない人間に向けてこの本を書いたのだろう。


あの部屋で見た図面集に描かれていた人形のモデルを思い出し、紙へと書き起こす。


記憶力には自信があるほうだったので大体の構造は描けたが、流石に細部までの情報は覚えていないし、そもそも複雑すぎるので簡略化した絵でしか描けない。


魔術の複雑で応用的な理論や人体構造に関するの深いところまでの知識が無いのも、簡略化せざるを得ない要因だった。


それでも、この簡略図は『概論』の知識を整理し理解するには十分だった。




――――




母さんに呼ばれて今に向かった。

会話もそこそこに急いで食事を済ませ、部屋へ戻ろうと階段へ向かうと。


「父さんと話すよりもその本のほうが面白いのか…。」


父さんはそんなことを言って少し落ち込んでいた。


母さんは「あの子は昔からお勉強や本を読むのが好きだったでしょう?」

と、父さんを宥めていた。


「ごめんね、父さん。

でも、父さんが薬草学の本を全部読ませてくれないからだよ?」


さっき僕をからかったお返しだ、と言わんばかりに2階へ駆け上がってやった。




――――




この『概論』には、魔導人形にとんでもない力や武器が仕込まれていると書かれているが、僕が見た限りの展開図にそんなものはなかった。


何故だろうか…、見落としていたものでもあったのか…?


ふと、あの冊子の題名を思い出す。




『零式個体:内部構造及び魔導回路全域展開図 前編』




「前編…!」




おそらく、『後編』にその魔導人形の魔術的な力の秘密やとんでもない武装が描かれているのだろう。



…。



自分の倫理観と、魔導人形への知的好奇心がせめぎ合う。

しかし、僕がこんな知識を得たところで活かす場所なんてない。

僕がこの人形を操れるわけでもないし、ましてや新しく作ろうなどとも思わない。




……少なくとも、戦闘用には作らない。




――――




明日の動きは決まった。


今日採取しきれなかった分の薬草を採りに行くという名目であの部屋へ行き、『後編』を見つけ出して魔導人形のさらなる詳細を知る。


薬草もちゃんと集めないといけないから、いつもよりももっと早めに、余裕を持って家を出よう。



ひとまず、今日はこの『概論』の内容を理解することに努めよう…。

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