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亡国王子とオートマタ  作者: あおいみなみ
第一章 旅立ち
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第十話 『真実』


父さんに呼ばれ、女騎士のもとに向かう。


その女騎士は綺麗な長い青い髪をしていた。身長は僕より少し高いか…。

それにしても豪華な甲冑だな。昨日の甲冑男のものとは違う。

あっちは実戦用、といった感じではあったが。


女騎士はキリっとした目で僕を見つめ、話しかける。


「初めまして。私、エルナ・フォン・シュタイナーと申します。

ラミリアント王国下級貴族、シュタイナー家の長女でございます。」


は?貴族??

なんでそんなお偉いさんがこんなところに。


「は、初めまして。ハルと申します…。」


「突然の訪問、大変失礼いたします。しかも、こんな村が襲われた直後に…。

申し訳ございません。私共がもう少し早く到着していれば…。」


エルナと名乗ったこの女性は、申し訳なさそうな表情で頭を下げた。


「え、いやいや、謝らないでください!誰が悪いわけでもないでしょう…!

悪いのは、魔物を呼び寄せたあの甲冑男です…。ところで、僕に何か用…ですか?」


エルナは力強い目つきで僕を見つめ、こう言った。




「単刀直入に申し上げます。ハル、いいえ。

『ハルベルト・フォン・フィルタニア王子』

私たちとご一緒に首都「ラミア」へお越しください。」




……は?



ハルベルト…王子…?何…?




訳が分からず両親の顔を伺うと、至極真剣な眼差しで僕を見ていた。

「時が来た」と言わんばかりの視線だ。


「父さん、母さん、どういうこと…?

この人の言ってる名前って何?王子って何…?」


父さんがゆっくりと口を開く。


「すまない…。本来であれば昨日、夕食の時にすべてを話すつもりだったんだ。」


父さんの口から語られたのは()()は、僕にとってあまりにもショックだった。


「まずは、ハル。お前は俺たちの本当の子供じゃない。

お前が生まれてすぐ、1歳の時にこのトキナ村の俺たちの所にやってきた。」


「ハルの本当の両親は、うちにやってくる頃には亡くなっていた。

お前の本当の両親は、フィルタニア家のバーンズ閣下とマーサ夫人だ。

つまり、お前は200年前に滅んだ国の、その王族の最後の末裔だ。」


僕は反射的にフィリアの方へ振り返る。

彼女は相変わらず無表情。すぐに父親に向き直る。


「お前の本当の両親は、ラミリアント王国での政争に負け、処刑された。

ご両親はお前を逃がすため、昔バーンズ閣下の元で守護騎士として働いていたツテを使って、俺たち夫婦のもとにお前を送り込んだ。」


「15歳の誕生日の日、首都「ラミア」からシュタイナー家がお前を迎えに来るという約束だった。政治争いに巻き込むなと、俺も最初は反対したんだけどな…。」


「しかし昨日、あの襲撃だ。偶然とは思えない。おそらくどこかから情報が洩れ、迎えよりも先にお前を村もろとも焼き払って殺すつもりだったんだろう…。そこにいる、フィリアさんのおかげで助かったが…。」


父さんがフィリアに視線をやる。

フィリアはやはり表情一つ変えない。


父さんは、こちらに視線を戻し、僕の目を貫くほどの眼光で、

しかし、決意と覚悟のこもった目で僕に言った。


「お前は、ラミアに行かなくてはならない。」




――――




どこか他人事のように聞こえたその話。

正直、全くピンと来ていない。


話の内容は理解した。

意味も分かった。

だが、「それはどこの誰の話ですか?」という気持ちだ。



……。



しかし、よく考えろ。

まずはフィリアが起動した理由。


『概論』によると、『戦闘用自律型魔導人形タクティカル・オートマタ:零式』

つまりフィリアは、フィルタニア王族の血中遺伝情報マナ・コードを読み取ることで起動する。


フィリアが起動したとき、僕は血だらけの手で彼女に触れようとして、

僕の血が胸元に落ちたよな…。


それとあの甲冑男。


僕の命を狙ったこと、そして僕がブチギレて走り出した時、

「末裔」とかなんとか言っていたな…。


そして今、エルナという貴族が僕を迎えに来ていること。


もう、そうなんだろう。

信じられないけど、そうなんだろう。


僕は本当に、フィルタニア王族の末裔なのだろう…。


ただ、その前に一つ確認がしたい。




――――



僕は父さんの話を聞き終わってからしばらく、目を閉じて考えていた。


「話は、分かりました。」


僕は目を開き、エルナと両親に質問を投げかけた。


「つまり、この村が襲撃された理由。村の人が何人も命を落とした理由。

そして父さんが左腕を失った理由。すべては僕にあるわけですか?」


「そんなことない!」


真っ先に反応したのは母さんだった。

僕を抱きしめ、泣きながら語る。


「ハルが原因なわけないじゃない…。ただ、生きていただけの、何も悪いことなんてしていない、ハルが原因なわけ、あるわけないじゃないの…。」


「血筋がどうだとか、政治がどうだとか、そんなのあなたには関係ない…。

ただ毎日を健やかに生きているだけのハルは関係ないじゃないの…。

ハルの本当の両親は私たちじゃないけれど、私たちはハルのことを本当の子だと思ってずっと育ててきたわ…。」


「そんなあなたが、訳の分からない政治の争いに利用されるだなんて、最悪よ…。」


母さんが泣いているところなんて初めて見た。

笑いすぎて涙が出ることはあっても、悲しんで泣いていることなんて見たことない。


母さんの言葉の全てが、心に沁みる。

どこか無責任で、ちょっと自分勝手な部分もあるけど、嬉しかった。

この両親の()()で、本当によかった。


「母さん、ありがとう。」


そう言って母さんを抱きしめ返す。

いつの間にか父さんも加わって、3人で抱きしめ合った。

父さんも泣いている。これも初めてだ。


でも、その涙も嬉しかった。



――――



母さんが落ち着きを取り戻し、改めてエルナに向き直り、尋ねる。


「エルナさん。この村の襲撃の原因は、僕ですか?」


母さんが必死に「違う…違うの…!」とこぼしていた。

ごめん、母さん。今はちょっとだけ待っててね。


「……。正直、原因という言い方をしたくはありません…。

あなたの所在がどこかから洩れてしまったのが、直接の原因です。

本来であれば、私たちも昨日の時点で到着していたはずですが、

道中で妨害にあってしまい…。」


「僕がここにいたから、村は襲われたんですよね?」


エルナは非常に言いにくそうな表情で回答する。


「……はい。」


聞きたくない答えだったが、聞けた。

なら、やることは一つだ。


「…。わかりました。エルナさん、僕を首都「ラミア」へ連れて行ってください。」


母さんが、泣き崩れた。

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