短編
西暦2250年。6月4月
この日、世界は、突如現れた謎の生命体 《ゼロ》によって滅ぼされた。地上は業火の炎に包まれ、放射線物質が蔓延し、人が住むことができない死の地へと変わった。
故郷を追い出された人類は、地下へと逃げ込むしかなかった。いっときの安息――とはいえ、人類は新たな新天地で暮らすことができた。
だが、《ゼロ》たちは、それで満足しなかった。地上を滅ぼした《ゼロ》たちは、地球に来て、初めてヒトを食べた、それは肉体を活性化させ、新たな知性を与えてしまったのだった。
これにより、《ゼロ》たちは、ヒト、あるいは、それ以上の知能を手にしたことになる。人類の脅威は、再び、この大地下都市《最後の楽園》を襲うとする。
だが、人類も、やられっぱなしではななかった。密かに造られた、人造兵器――《希望の子供》たちを使って、《ゼロ》を殲滅し、地上を取り戻そうと計画していたのだ。
《希望の子供》それは、人工的に受精させて造られた子供達のことを指す。彼らは、本来なら母親のお腹の中で育てられるのだが、彼らは違う。研究室にある特殊なカプセルの中で彼らは育った。
もちろん、普通の子供ではない。彼らの遺伝子は研究者の手によって組み換えられ、放射線物質が蔓延する地上でも耐えれる肉体になっている。
そして、謎の生命体、《ゼロ》に立ち向かうために彼らには特殊な能力が与えられた。
個体差によって能力はバラバラだが、一例を上げるとするなら、重力を操り、相手の体に何十倍の負荷をかけることができる能力や、イメージした場所に一瞬で跳べるテレポートなどが、ここでは、有効な能力かもしれない。
だが、《希望の子供》大層なコードネームが付けられているが、研究者の中には、彼らのことを《欠陥品》と揶揄するものもある。
彼らの体は、脆いのだ。
人の平均寿命は、80歳から〜120歳に引き伸ばされたこの世界で、彼らは、16歳までしか生きられない。
しかも、能力を使うのことにより、その寿命はさらに縮まる。能力は、彼らの脳を圧迫し続ける、無理に使い続ければ1年経たずに死んでしまう。
メンテナンスを行えば2年は寿命を延ばせるかもしれない、だが、人類の脅威に立ち向かう彼らにとって、それはあまり意味がないこと。
ゆえに――彼は欠陥品。
替えは、いくらでもいる。
また造ればいいのだ。それが研究者たちの考え。彼らを犠牲にして与えデータで、よりよい、個体を造ればいいのだ。
時間はかかるが、少なくとも《ゼロ》の進行は止められる。いくら犠牲してもかまはない。彼らは所詮――人間ではないのだから。
人間様の役に立てるなら、彼らだって本望だろう。
《希望の子供》のリーダー、天月勇は、自分が『何のために生まれてきたのか』その答えをずっと追い求めていた。
自分たちが、『普通の子供ではない』ことは、わかっている。小さい頃から隔離施設で育ってきた勇にとって、戦場で戦う仲間こそが、《家族》であり《兄弟》なのだ。
勇は、人類のためではなく、一緒に育った家族のために戦っていたのだ。「何のために戦っているのかわからないんだ。だけど、兄弟の笑顔を守れるなら、俺は、この身を犠牲にしても構わない」
そして、戦場へとおもむく。
《ゼロ・個体別S-185》
体長は1メートルほど、見た目は細長いロープくらいの大きさ、全身が黒い影に覆われた《未確認》個体。口から体内に入り、人を操る。
寄生させた人間は、最終的は全身から血を流して、死に至る。そして、新しい宿主に寄生する。
勇の目の前で、親友が寄生されて殺される。勇は、自らの能力を使ってこれを撃退するが、基地に戻ってからも親友の幻影が現れて、苦しめ続ける。
そして、戦場に駆り出されるていく中で、多くの仲間・家族を失った。
無茶な能力の使い方をしたせいで、自分の体が、もうあまり長くないことに気づいていた。
「これが俺にとって最後の戦いになるかもしらない」
そして、再び、勇は自分に問いかける。
「俺は何のために生まれてきたのか」
その答えを求めて、最後の戦場に立つのであった。
大人の手によって造られた子供たち、そして、彼らは生まれた意味を求めた。
人類の脅威に立ち向かうために造られた子供達ではあったが、彼らだって、幸せになる権利がある。
それを『大人の身勝手な考えで』兵器として扱われた。彼らは、何を、求めて、最後に、何を思うのか。
そんな感じの、SF小説です。