99_エピローグ
「う゛う゛……。」
「な、なんか、昨日より今日の方が調子悪そうじゃないっすか、クロー?」
ボクが昨日のの疲労を引きずっているのを察したのか、リックが声を掛けてくれた。
「うん、まぁ大丈夫。
でも、今日は休憩多めでお願いします。
……帝国軍の敗残兵が潜伏してる可能性も考えて、慎重にね。」
「「は〜い!」」
ボクの言葉に、皆、快い返事を返してくれる。
ボクらは再び帝国海岸部を目指して移動を開始していた。
先程言ったように、帝国軍が散り散りになって逃げた残りが居る可能性があるので、注意が必要ではある。
とは言え、木々の頂点を跳びながら移動するボクらをどうこうするのは難しいとは思うのだけど。
それにしても、カダー王国に帰って来た半年前から考えると、機動力が格段に上がってしまった。
それもこれも、ティアナさん達三人が勤勉に魔術を覚えてくれたお陰と言える。
ジサンジ帝国に向かう主な目的は、簡単に言うと魔王教への「カチコミ」だ。
それに際しても、この機動力は優位に働くだろう。
三人が居てくれる意味は非常に大きい。
例えば魔王教の本部を見つけたとして、ボクとリックが本部を強襲する間、ヴェロニカさんとセレナさんを守って貰える。
これは単純な戦力としての話だけでなく、危険があれば五人で纏まってその場を離脱する事も出来るのだ。
結果論だけど、モヤの町で三人にパーティに加わってもらって良かった。
あの時、ヴェロニカさんとセレナさんが後押ししてくれなかったら、ボクは強硬に反対していたろうから、二人にも感謝だね。
チラッ
……横目で見ると、その二人は非常に満足そうな表情をしており、肌ツヤも良さそうに見える。
これが搾り取られるという感覚なのだろうか?
ボクもなんだかんだで楽しんだ訳だけど、疲労間も強い。
……まぁ、こればっかりは二人を恋人に選んだボクの責任だし仕方ないかな。
**********
それにしても、これでまたカダー王国を離れる事になる訳か……。
帝国で目的を果たしたとして、ボクはカダー王国に帰る事になるだろうか?
もちろん、機会を見付けてルミの様子を見に行く事はしたいと思うのだけど、定住するのはどうだろう?
住むのが厳しい土地とは思わないけれど、ここだとセレナさんやスノウノさんなど、素を出せないヒトも居る。
加えてボクの動向を探ろうとするヒトが居て気が休まらない気もする。
住み着くのなら、セレナさんやティアナさん達の故郷であるコラペ王国の方が良いのかな?
あっちならティアナさん達も気軽に実家に帰れるだろうし、セレナさんも司祭として素のままに過ごせそうだ。
リプロノ王国に近いのが難点かな?
あの北西の奥には、ヴェロニカさんを狙うエルフの里がある訳だし……。
ただ、将来的にリックをリグレット第三王女に譲って
、活躍する様を見たい気もする。
……でも、今の様子ではリックがボクの元を離れようとするか、甚だ疑問なんだよね。
それは嬉しい事なのだけれど、リックの将来としてそれで良いのだろうか?
……止めよう。
リックも一人の成人男性なのだ。
そのリックが考えて決める事にとやかく言うのは傲慢かも知れない。
それはティアナさん達についても言える。
彼女達がいつこのパーティを離れるかは、彼女達が決める事だ。
ボクとしては、一緒に居る限り皆の事を慮る事くらいしか出来る事などないのだろう。
**********
「……どうしました、クロー君?
そんなに体調悪いですか?」
つい考え込んでしまったら、セレナさんが心配して声を掛けてくれた。
「なんだ?
……その、き、昨日のアレがキツかったか?」
それを聞いたヴェロニカさんが、変な風に想像を巡らせたようだ。
「……まぁ、キツいっちゃあキツかったですね。
せめて身体くらい拭かせて貰いたかったです。」
「──っ?!いやっ、あ……、すまん。」
「ごめんなさい。
二人してなんか盛り上がってしまって……。」
ボクの一言に、ヴェロニカさん、セレナさんが謝罪してきた。
いや、流石にそこまで畏まってもらいたい訳ではないのだけど……。
「冗談ですよ。
思春期の少年の精力を舐めないで下さい。
二人を恋人にすると決めた以上、そんな事で弱音なんて吐きませんよ。
ただ、やはり衛生面は気を遣いましょう、お互いに。
それが原因で体調を崩すなんてバカらしいですよ。」
「「はい……。」」
二人は大人しくボクの話を聞き入れてくれた。
普段はちゃんと話が通じるのに、何故、偶に暴走しちゃうのか?
……ん?
「……ひょっとして昨日のあれも、「共鳴の指輪」のせいだったりしますかね?」
「「……っ?!」」
ボクの投げ掛けた疑問に、二人は顔を見合わせる。
「確かに、可能性はあるな……。」
「……もしそうだとしたら、なかなか厄介な魔術品ですね。」
二人の感想を受けて、やっぱりと納得してしまった。
三人の感情が相乗してしまう「共鳴の指輪」。
同じ物をボクも付けているので、ボクも影響は受けている筈なんだけど、そこまで効果を感じたことは無いなぁ。
女性同士だと特に共鳴し易いとかあるのだろうか?
もうちょっと注意点とか聞いておけば良かったかも知れない。
「なにスケベな会話してるニャ!
あからさまに見せ付けるように話されると、聞いてるこっちが気まずくなるニャ!」
「あ、はい。すみません。」
三人で会話していたけれど、普通に周りに皆も居る訳で……。
そりゃ、こんな話をしてたら気まずいよね、反省。
「……それ、スノウノちゃんが言います?
ティアナ様とずっとイチャイチャしていたり、突飛な事を言い出すヒトに言われてもね。
この中でそれを一番言いたいのは私ですよ。」
「うニュ……。」
言われる自覚はあるらしいスノウノさんは、フラウノさんの剣幕に黙ってしまった。
確かに、スノウノさん、ティアナさん、そしてリックの三人の関係も、込み入った仲になりそうな中、フラウノさんだけやや蚊帳の外な印象を受ける。
こちらの世界では、十分に結婚適齢期な女性を連れ回している形のボクとしても、責任のようなものを感じる。
……かと言って、ボクは二人の彼女以外に手を出す気なんて無いし、リックもティアナさんを気にしているので、目移りするとは考え難い。
いや、ボクなんかが気にするのもおこがましいんだけど、今後、気にしてあげたいと思う。
もちろん、異性のボクがそれをとやかく言うのはセクハラになり兼ねないので、セレナさんとかヴェロニカさんを通す形で。
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そんな益体もない会話をしながらも、ボクらはジサンジ帝国に着実に進んでいる。
これまで行った、コラペ王国、リプロノ王国とも違う特色もきっとある事だろう。
それが不安なような、けれどちょっと楽しみなような……。
そんな未知の国への不安と期待の混じった感情を抱えつつ、ボクは遙か先を見つめるのだった。
ここまで読んでいただきまして、誠にありがとうございます。
話も区切りとなりましたので、『異世界貴族に転生しましたが、なんやかんやで国を追われました4』はこれで終幕とさせていただきたく存じます。
引き続き『異世界既存に~5』にて続きを投稿いたしますので、お付き合いいただければ幸いです。
今回、クロー君の帰郷編となった『4』ですが、当初はここまで長くなるとは考えておりませんでした。
さっさと帝国に向かうつもりが、エピソードを考えるうちにあれよあれよと長くなってしまった、という筆者の感想です。
そう思うと、帝国編となる『5』がどれほど長くなってしまうか、ちょっと不安でもあります。
ですが、正直に言ってしまいますが、帝国編はまだあまり深く考えておりません。
なので、すんなりと終わる可能性も微レ存……?
……まぁ、それは一旦置いておいて、全体の構想についても語らせてください。
大まかな区切りとしては、次の『5』とその次の『6』で話が完結する想定です。
もう、とっくに折り返しを越えているのですね、ちょっと感慨深いです。
これまでの自身のペースを考えますと、あと一年ほどで完結となる見込みとなります。
それまでどうぞお見捨てなくお付き合いいただけますと幸いです。
改めて、駄文にお付き合いいただきましてありがとうございます。




