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16_とある朝の語らい

「……ん。」

もう、外が明るい。

ここはロイエンタール子爵邸からほど近い平屋の一軒家。

ボク、ヴェロニカさん、セレナさんの三人はここで寝泊まりしている。

三人で住むにはちょっと狭いかも知れないけど、今のボクらにはあまり広さは必要ないしね。


「スー……。」

ボクの隣ではヴェロニカさんが、まだスヤスヤと寝息を立てている。

正直、このまま綺麗な寝顔を眺め続けていたいけど、あまりゆっくりもしていられない。

ボクは、隣で眠るヴェロニカさんを起こさないよう、よっくりベッドから降りると、まずは浴室へ向かった。

そして、セレナさんが用意したのであろうお湯にタオルを浸して体を拭く。

そしてキッチンに行くと、セレナさんは朝食の準備をしていた。


……。


ギュッ!

「キャッ!もうっ、びっくりするじゃないですか。」

ボクの行動に驚き、非難の声を上げるセレナさんだが、その声音は優しい口調だ。

「うん、ごめん。おはよう、セレナさん。」

「はい。おはようございます、クロー君。」

こういうの夢だった。

朝起きて、最愛の人が朝食の準備をしていて、それにちょっかいを掛けるの。

ルミに対しては、何故かそんな事は出来なかったけど、二人には最近ようやく出来るようになった。

「ナイフを持っているので危ないですよ。大人しく待ってて下さい。」

「はぁい。」

自分でも、ひどく子供っぽい事をしていると思う。

でも、そもそもボクは今十三歳だし、初めて出来た恋人に甘えたくなるのは自然だと思うんだよね。


「……ぉい。」


……っ?!

「あ、ヴェロニカさん。おはようございます。」

ボクは気付いてなかったけど、セレナさんはヴェロニカさんが起きて来た事に気付いていたようだ。

「……ん、おはよう。ワタシを差し置いて二人でイチャつくな、ズルいぞ。」

……最近、ヴェロニカさんも随分甘えたになってきてる気がする。

「はい、じゃあ、ヴェロニカさんにも抱きつきましょうか?」

「……っ?!あ、いや、待って。……先に体を拭いてくる。」

ボクが提案すると、ヴェロニカさんはそそくさと浴室に行ってしまった。

ボクとは違って、起きてそのままキッチンに来たのだろう。


ヴェロニカさんを待って、ボクらは朝食を食べる。


「──でも、朝食もナタリーさんに頼った方が、味は確実に良いのではないですかね?」

セレナさんが、ふとそんな事を口にした。

「う〜ん、そうかもですけど、ただでさえ四人も負担増やしてしまっているし、申し訳ないかなって。それに……。」

「それに?」

「こっちで食べる方が、ギリギリまで朝ゆっくり出来るじゃないですか?」

「……そうですね。」

「……ん。まあ、な。」

良かった、三人の時間を少しでも長く持ちたいという想いは同じだったようだ。


「それにしても、クロー君の調子が戻ったようで良かったですよ。」

「うん、どうにか……。やっと、自己嫌悪の沼から抜け出せた感じですね。」

これに関しては、思い出しただけでもまた凹んでしまいそうだ。


この町に来て二日目。

借家を借りた当日の夜に、ボクらは致した。

その際、それまで悶々としていたボクは、見事に暴走してしまったのだ。

始めの方は逆に落ち着いてできたのだけど、徐々に昂ぶってしまい、結果、初めての二人に二回ずつ致してしまった……。

その時の事は、テンパりすぎて断片的にしか覚えていないのだけど、二人の泣きそうな顔だけはハッキリ思い出せる。


あ〜〜っ!!


もっとこう、無駄に知識だけはあるのだから、余裕を持って接せなかったものか、自分!!


「……そのことなら、翌朝からずっと、ワタシもセレナも気にしてないと言っているのに。いつまでクヨクヨしてるんだ。」

そう、二人は翌朝には(少なくとも表面上は)ケロッとして「気にするな」と言ってくれたのだ。

でもそれは、ボクにこれ以上気を遣わせないために、無理しているように思えてしまう。

「そうですよ。本当にショックだとかトラウマだとかは無いですからね?クロー君も男の子なのですから、ケダモノさんなのは仕方ないですよ。」

「ゔ……。」

ケダモノ、という表現が胸に刺さる。

「ワタシも婆様、母様からそう聞いていたし、覚悟もしてたからな。それに、それほど我慢させてしまっていたのなら、それはワタシらにも責任はある。」

「はい。二人にそう言って貰えて、ようやく落ち着けましたよ。」

とはいえ、何度も繰り返し言わせるのも悪いし、これから同じ轍を踏まないよう気をつける方針で、自分の中では折り合いを付けている。


「……私としてはそれよりも、「クラゲ」ちゃんを自力で消しちゃってた方が驚きましたけどね。」

「あー……。ワタシも驚いたな。セレナはクテッとなってるのに、無意識に「クラゲ」を出してしまって、ワタシも焦ったのだが、一瞬でクローが消してたからな。」

「初めての日にそんな事した記憶は、ハッキリとは無いですけど、その後は何故かすんなり出来るようになったんですよね……。」

『魔術消去』もそこそこ面倒臭い魔術なんだけど、幾度となく使ってきてるので、慣れてしまったのかも知れない。

「……もしかして、私もう不要ですか?」

「何を言うんだ?!セレナはワタシにとっても必要だ!セレナが一緒じゃないとか、いくらクロー相手でも不安すぎる!」

セレナさんの弱気な発言に先に反応したのはヴェロニカさんだった。

「そうですよ。それに、そんな事の為にセレナさんと付き合っている訳では無いです。純粋にセレナさんの事が好きだから、一緒に居たいんです。」

「クロー君、ヴェロニカさん……。はい、私もお二人が大好きですよ。」

不安にさせてしまうのも、ボクが二人を選んだせいだ。

この先も、こんな風に不安にさせてしまう事もあるかも知れない。

その度にボクは、せめて何回でも言葉にし続けようと思う、二人の事が心から好きだと。


「──でも、あの日以降は全然、……なんと言うか、激しくはされてないですけど、クロー君的には満足できているんですか?」

ボクが密かに決意している事も知らずに、セレナさんは変な方向から心配を語ってきた。

「もちろんですよ?!ボクだって初心者ですからね?ちょっと変わった事したいなぁ、とか思ったりする段階ではまだ全然ないですからね?!」

「そうですか?でも、よくクロー君が私達に言ってくれるように、クロー君も希望があったら私達に言ってくださいね?」

「……ええと、はい、何かあれば言います。でも、現状は本当に不満なんて何もありませんから。」

「……それが本当なら良いのだが、クローは不満が有っても無意識に溜め込むからなぁ。」

おっと、次はヴェロニカさんも乗っかってきた。

そんなに隠してたり、不満を抱えてるようなみえるのかなぁ、ボク?

もしそう見えたとしても、それは多分、自分に対する不満や憤りだと思う。

二人や仲間に対しては、本心から不満は今の所ないんだよね。

「いえ、あの……、善処はします。」

でも、そう見えて心配されるのも嫌なので、そう見えないようには善処してゆこう。


「……いっその事、ルミさんに相談してみましょうか?どうしたらクロー君を満足させられるか。少なくとも、ウチのパーティには経験談を聞いて相談できるようなヒトは居ないですから。」

……うん、そういう話は、ボクのいない場所で話すべきなんじゃないかな?

「どうかな?話では、あちらも付き合い始めて一年とちょっとなのだろ?勿論、ワタシらよりは経験は多いと思うが……。それより、ナタリーさんの方が経験という点では豊富なのではないか?」

ナタリーさんか、確かに経験と言う面では彼女以上のヒトはそうそう居ないだろう。


ナタリーさんには息子さんが三人居るのだけど、実はその父親は全員違うのだそうだ。

この話は最近聞いたのだけど、とても衝撃的だった。

また余談だが、ナタリーさんが「馬鹿息子達」と呼ぶ三人は、セーム様から見て皆優秀であるため、セーム様の御子息の居る伯爵領で、兄弟仲良く働いているそうだ。


「う〜ん、分かるのですが、ナタリーさんのお話は少々過激と言うか、私達にはハードルが高い気もするんですよね……。」

確かに、ナタリーさんは豪胆で、何でも包み隠さずに言うきらいがある。

そんなナタリーさんが、己が経験から発する言葉ともなれば、さぞや際どいものになるだろう。

流石にボクらにはハードルが高い話になりそうだ。


カーン、カーン……


この町の教会から、朝を告げる鐘が鳴り響く。

ちょっと話し込んでしまったかも。

「っと、そろそろ行きましょうか?皆も朝食を終える頃でしょうし。」

「そうですね。」

「だな。」

ボクの言葉に、セレナさんも、ヴェロニカさんも頷いてくれた。

そうして今日もまた、ボクらはロイエンタール邸に向かうのだった。

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