記憶
「ん…………」
勢いで体を起こす。
急に世界が変わる。見慣れた天井………夢か。
しかし今になってあの時のことを思い出すなんて……
「最悪…………」
いい記憶では無い。あの男どもは全員死んだが……不快なものは不快だ。
なんだか夢で殴られた場所が熱を持っている気がする。
きっと悪夢を見たりして怪我をしたりすると、起きた時にそこに奇妙で不快な感触が残ったりするあれだ。
「ん……どうしたの…………?」
「あ、ごめん。起こした?」
私の隣にほとんど裸で寝ていた少女……瑠美だ。
瑠美を起こしてしまったか。寝言でも言ってたのかな?
「いや、なんか呻いてた?から。大丈夫?」
ああ、なんて説明しよう。瑠美にとってもあの時の記憶なんて思い出したくないはずだ。できるだけぼかして伝えないと……
「あー、なんか襲われる夢?……物理的にね?死ぬかと思った」
途切れ途切れになりながらも伝える。嘘は言っていない。
「……現実から考えるとかなちゃんが負けるなんてありえないんだけど」
「夢ってそういうものじゃない?」
まあ自慢だが実際私は強い。戦闘を教えてくれた先生というか先輩?より強くなるのに1ヶ月もかからなかったし、任務でミスしたこともない。
強すぎて初任務から半年で昇格しまくったからそのせいで面倒も増えたけど。
「……私はちょっとかなちゃんが心配だよ」
ふとそんなことを言う。まあ分からないでもない。私だって瑠美が戦闘をするなんてことになったら気が気じゃいられないだろうし。
「まあ、死なないようにはしてるし大丈夫だよ。」
怪我は痛いから嫌だし。死ぬのなんて論外。そのための訓練だし。
「そういう問題じゃないんだけど……訓練もしすぎだし、疲れたりするだろうなって思って」
まあ確かにしすぎかもしれない……毎日やってるし。
でも仕方ない。ワイヤーで飛び回って的に向かって銃を撃つ。言葉で表現するとこれだけなんだけど体重移動とか難しいし、かなりの速度で移動しながら的に当てるのはめっちゃ難しい。
だけどこれが思いのほか楽しい。私からすれば訓練なんだけどスポーツみたいな認識だし別に辛くは無い。
それに瑠美を守るため、私はそれだけのために仕事をしている。
「まあ、少しは休むようにしてるし……瑠美といれたら疲れなんて吹き飛ぶしね」
「もう……茶化さないで」
「ごめんって…………ところでさ?」
我ながら露骨な話題変更。しかし案外理解してくれた。
まあ、さすがに同棲し始めてから結構経つし。以心伝心?阿吽の呼吸?ってやつ。
「さっきの続き、しない?」
そう言って瑠美にキスをする。ついさっきしたばっかりなんだけど。しばらく忙しかったから……仕方ない。
……舌を絡ませ合う深いキス。瑠美を感じられるから好きだ。
だんだん手が移動してきて私の体に触れる。指の先から腕、肩、胸。
「……瑠美、今日は激しくして?いっぱい瑠美が欲しいから……」
「……うん」