要石を家に鎮座させる計画立てるの、ウチだけだと思います
呪いの神、蛭子命と入籍した誠人は困っていた。妻の身体から溢れ続ける呪怨がたびたび小さな災いを巻き起こしていたのだ。それも、仕事で家を出ている間に。誰もこの事を知らないとはいえ、近所に迷惑がかかっているのは事実。アパートに住んでいる以上、大きな被害が出る前にどうにかしなければいけない。
「ごめんね誠人くん、その…君がいないと寂しくて…。」
負の感情は呪いへと転じる。寂しさはその中でも「悲」の要素が強く、悲の呪いは連鎖的に呪いを生み出しやすい。そしてこの負の連鎖もとい悲の連鎖が重なって行けば、最終的には…
「大丈夫だよヒルコさん、どうにかする方法を思いついたんだ。」
誠人はゴミ収集業者として働きながら調霊術士としても生活している。場の調べ、すなわち「霊脈」と呼ばれるものを整えながら街を巡っているのである。蛭子命が寂しさを感じていないこと、誠人が無意識の調霊を行っていることが重なり、二人が家に揃っている間は災いが起こらないという事なのである。
「ヒルコさんの呪怨は、あの祠にいた頃は大した力を発揮してなかったよね。」
「う、うん。確かにそうだね。」
「あれはあの場所の霊脈が整っていた事と、結界が張られていた事が関係してると思ってて。」
蛭子命は誠人のこの発言に目を輝かせた
「確かに、考えたことなかったけど確かにそうだっ…!」
地脈、というものが存在する。これも場の調べ、場そのものの清と濁である。地脈と霊脈は酷似しており、地脈を整える要石は霊脈を整える効果を持っている。これを使おうと誠人は考えたのである。
「でも、結界を張るのは難しい。副作用が怖いし、僕は結界術が下手だし。」
「じゃあ霊脈を整える方向性で考えるんだね。」
「そう。そこでヒルコさん専用の要石を用意しようと思うんだけど、どうかな?」
「もちろん良いよ。大賛成」
蛭子命はこれを快く認めたが、誠人はまだ心配事があった。
「すぐに準備するなら、ヒルコさんの祠から注連縄を拝借することになるんだけど…そうなると、ヒルコさんの祠は使えなくなるよ。というより、祠じゃなくなるって言うべきかな。それでも良いかい?」
「全然構わないよ、だって今は誠人くんの家が私の家だもん。」
誠人はほっと安心した、それと同時にドキッとした。蛭子命は、自分の事をこう想ってくれている…。
「さて、それじゃあまた里帰りだね。」
「誠人くんの実力、見せてもらうよ♪」
調霊術士としての腕の見せ所だ!