情報の繰り返しは大事だと思う
作品中に出てくる主人公の見た目や抱える事情、世界観の説明――いずれも作者が嬉々として形容詞やエピソードを盛りたくなる事項です。ですが、一度説明した事項を繰り返すか否かって、書き手の方はどのくらい考えておられるのでしょうか。
【どうして繰り返すの?】
そもそもなぜ情報を繰り返すのか、です。
理由は大事ですよね。
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【繰り返す理由】
①忘れられる、読みとばされる対策
②なろう特有の読み方に配慮するため
③誰かにFAを依頼する時ヘコまないため
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これらはあくまでもた~にゃんが考えついた『繰り返す理由』です。これ以外にも、情報を繰り返す理由はあるのかもしれません。
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①忘れられる、読みとばされる対策
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た~にゃんは細かい設定を詰めるのが大好きな書き手です。なので、自分的に「これぞ!」という設定説明には力が入ってしまいます。説明するだけで、地の文がびっちり何行も連なるのはよくあることでして。
自分的には美味しい部分。でも、読む側からしたらどうなんでしょう?
だって、行間びっちり説明文の塊ですよ?
それが十行越えちゃってる。たまに一行空けていますけど、やっぱり多い。長い。
……面倒くさっ! 読みとばしちゃえ!
って、なりませんか?
(自分で言っててナニですが、グッサリきますね、これ)
作者と読者の興味の方向は違います。作者にとっておもしろいことが、読者にとってもおもしろいとは限りません。
作者が情熱フルスロットルで書いた長い説明文を、読者は流し読み飛ばし読みするかもしれませんし、忘れてしまうかもしれません。
読みとばしてもストーリーにまったく影響がないのなら、一回こっきりの説明でいいのかもしれません。
けれど、その後のストーリー展開に、長い設定説明が深く関わってくるのなら、やはり説明を簡単に繰り返すなり、注釈をつけた方がいいのかもしれません。可能ならわかりやすい図(挿絵)にするのもアリかも。
読みとばしたり忘れたりするのが読者でも、『なんでこーなるのかわからん』と感じさせたら、きっと読者は離れていくのです。
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②なろう特有の読み方に配慮するため
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読み手のみなさまは、なろうで連載小説を読むとき、どのような読み方をしておられますでしょうか。
話数が少なく、完結済みなら一気読みしてしまうかもしれません。けれど、例えば五十部分を超える長編で、まだ『連載中』の小説を追いかけているときは、更新され次第、一話ずつ読むことも多々あるのではないでしょうか。
加えて、みなさまの追いかけている連載小説は一作だけですか? また、毎日なろうにログインして、毎日その小説を読んでいますか?
なろうのブックマーク機能は便利なもので、読んだ部分に栞を挟むことができます。いつでも、途中から読むことができるわけです。
何が言いたいかといいますと。
なろう読者は、一作だけを読んでいるわけではないこと――同時並行で何作品も読んでいる可能性があること。
読者が作品に出会ったとき、既に何十部分も投稿されていた場合、一気読みしてくれるとは限らないこと。
嬉々として作品を追いかけてくれる読者だって、リアルの事情などにより読書にブランクがあく可能性があること。
ありがたくも自作を読んでくださっている読者側の生態(?)も考えてみたら、工夫した方がいいかも? と思ったわけです。
紙の本でも、例えば十巻以上も続く大長編の場合、三巻買ったところでお財布が寂しくなって、四巻読むまでしばらく間が空くとか、ありません?
読者は果たして、長編作品の主人公の見た目や事情、ストーリーに大きく関わる世界観を覚えてくれているものでしょうか。
有料書籍ならともかく、無料で読めるなろうでは、読み放題が実現するわけです。読者の頭には、膨大な情報が流れこんでいるのです。
私はなろうに登録する前は、電子書籍のラノベを買っていたのですが、巻数が続く作品は必ずといっていいほど、冒頭で『今までのあらすじ』と『メインキャラの見た目、事情』の説明がありました。
なろうで読むようになって、「嗚呼、あれは親切設計だった……」と実感しましたね。繰り返し書いてくれている作品、少ない。
自作は書籍化とはまるで縁がないのでわかりませんが、なろう作品が書籍化される際はそういう部分も加筆修正されているのではないのでしょうか。
(小声:実際のところどうなんですかね?)
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③誰かにFAを依頼する時ヘコまないため
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素敵イラストを描かれる絵師様が「ご新規様もどうぞ!」な掛け声で、『あなたの作品のキャラを描かせてください企画』をなさっていると、手を挙げたくなりますよね。FA欲しい……!
自作の長編で、イラストが欲しい部分はどこでしょう? 物語の序盤? 中盤? ひょっとして終盤?
お願いしようと、ワクワクと自作の『イラストが欲しい部分』を読み返して愕然とするのです。
主人公の髪色わからねぇ! と。
作者でさえこうなのですから、絵師様はもっとわかりません。絵師様は描写部分を探して、何万字も読まないといけません。
ゼロからイメージを作り、絵にするだけでもとてもとても大変な作業なのです。その前に膨大な手間。申し訳なさすぎて震えます。「お願いしよう!」と舞い上がった気持ちがしおしおと萎んでいきます。
意外と忘れる、メインキャラの見た目の描写。主人公の女の子は着せ替えもするから、説明文もたくさん書いてる。でも恋人の男の子は? 瞳の色なんだっけ? 悪い奴だけどカッコイイ仇役は? アイツ何着てるんだっけ?
私めの作品中にもおりますとも。メインキャラなのに、活躍シーンで真っ白なヤツが。ごめんよ、『メモリー』のヨハン!
「お願いしたいシーンは、〇〇章の〇〇~〇〇まで(数話分)読んでいただければわかります!」と言えるなら、依頼者側もお願いするハードルが下がりますよね。
【どの情報を繰り返すの?】
では、どの情報を繰り返したらいいの? という話。私は以下の四つかなぁと考えております。
【繰り返した方がいい情報】
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①メインキャラの見た目
②メインキャラの過去や背景
③世界観
④今までのあらすじ
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①メインキャラの見た目
②メインキャラの過去や背景
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物語を通じて出てくるメインキャラっていますよね。FAが欲しいと思うのも、このメインキャラたちだと思うのです。毎話ごとに書くとクドいですが、何十部分も描写がないという事態は避けたいです。
地の文が長くなる、クドくなると言うのなら、ストーリーの区切りのいい所で、前書きなどを利用して書くのもアリだと思います。
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③世界観
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緻密な世界観を作れば作るほど、情報量はウナギ登りです。読み手サイドから見て、その世界の常識や、通貨単位、歴史(年表)など、忘れやすい情報じゃないかなぁと思うのです。だって作者も忘れるもん(爆)
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④今までのあらすじ
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読むブランクが空いたとき、このあらすじは嬉しいです。
例えば、テンプレな悪役令嬢もの。婚約破棄→追放→いろいろあってざまぁ、なところまでは一気に読んでしまいます。けれど、その後――物語に一区切りがついた後、読書にブランクが空くことはありませんか? もしくは、作者さん側で更新が止まることとか。
こんなとき、新章の前に『今までのあらすじ』があると、忘れかけた記憶を補えますし、新章を読み始めたときの「?」が減ると思うのです。
タイトルを忘れてしまったのですが、以前読んだ作品に、新章前に登場人物紹介と合わせてあらすじめいたことを書かれていたものがあったのです。わぁ親切! と思ったのを覚えております。
【繰り返すことのデメリット】
今までは「繰り返しは良いものだ」的なスタンスで書いておりましたが。デメリットも考えるべきですよね。
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①一話あたりの文字数が増える
②評価やPVが劇的に改善するわけではない
③クドいのが嫌い、キャラ紹介とか要らん、前書き後書きスッキリ派は一定数存在する
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①一話あたりの文字数が増える
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説明文は長ーくなりやすいです。簡単に書いたって、描写も合わせると塵も積もればなんとやら。一話があっという間に4000字越え。これ、隙間時間に読めるかな?
だいぶ前にエッセイで書いた、ランキング上位作の一話あたりの文字数って、2000~3500字くらいなのです。
また、一話1000文字前後でスイスイ読める、スピーディーな展開を狙っている書き手様もおられます。実際、一話あたりの文字数が少ないと、とても読みやすいのです。夢中になれます。
説明文がたくさんの作品が悪いと言っているわけではありません。緻密で重厚な物語はとても読み応えがあって、それはそれで美味しいと思うのです。
好き嫌いの問題と言ってしまえばそれまでですけども。万人受けって、難しいですね。
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②評価やPVが劇的に改善するわけではない
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ホント、これ。繰り返し書いたり配慮したところで、作品の評価やPVが劇的に改善しはしません。目に見えるアピールポイントにはならないですもん。
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③クドいのが嫌い、キャラ紹介とか要らん、前書き後書きスッキリ派は一定数存在する
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クドいのが嫌いな人もいますし、前書き後書きがスッキリしている方がいい、という意見も聞きます。
『挿絵つき』と表示されているのに、期待した『イラスト』はなくて『図』しかなかった、とか言われるかもしれません(ガクガク)。そもそも、『画像』は重いからイヤと言われれば、それまでです。
【結局どうする?】
た~にゃん個人としては、『繰り返し』はないよりある作品の方が好きです。言葉を変えて出てくる描写は美味しいと思いますし、緻密な設定も好き。そこに内政謀略謎解き要素が上乗せされると、夢中になって読みます。
なろうではどうなのでしょう?
ランキング上位を読んでも、『繰り返し』の有無はまちまちかなぁと感じます。皆さまはどっちがお好みですか?