パンタシア
それはバツバツと屋根が音をたてるような雨の降る夜のことだった。
ドンドンと玄関の扉が叩かれる音が耳に飛び込んでくる。
こんな時間に誰だろうか。
窓を閉じ、ペタペタと玄関へ向かった。
扉の中央に座しているドアアイを覗き込む。
この瞬間は誰が向こうにいようと胸がバクバクする。
更に胸は音を大きく立てる。まるで地雷原を走り抜けるかのように。
ドアの向こうにいたのは「あの娘」だった。
そんなはずは無いと思いながら、ガバッと扉を開いた。
「泊めて欲しいんだけど」
「あの娘」はそう言いながらズイッと、半ば押し入るように入ってきた。
雨で濡れた髪の匂いがムワッと鼻に駆け込んでくる。
こんなことがあっていいのだろうか。
いや、たまには悪くないだろう。
会いたくて今すぐその角からバッと飛び出してきてくれないか。
そう考えたこともあった。
そこから先の事はよく覚えていない。
気づくとパソコンの前に突っ伏していた。