コバルトブルーが死んだ夜
コバルトブルーが死んだ夜
彼は児童書の表紙を描き
三回目の躁に襲われていた
緑色の絵の具が重なっていくままに
草原が広がる丘の上に
男の子と女の子が駆けている
女の子は白いワンピースの裾を気にし始めていて
男の子はまだそんなことに気付かない
駅前で群れて歩く鳩を
人々は少しだけ視界に収めた
女子高生は白い鳩にだけ名前を付けて
それを誰にも言わなかった
彼女は林檎の皮を剥いていた
失われる栄養価には目もくれず
近い未来を楽しみにしていた
彼にコンポートを食べさせる時を
彼らが夢を見ている隙に
金魚は鉢から空へと流れ
深海まで泳いでいく
コバルトブルーが死んだ夜に