表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ポストとペペロンチーノ

作者: ぴーなっつ

 学校に行こうと家を出たら野生の郵便ポストが弱々しく横たわっていた。野生の郵便ポストなんて見るのは生まれて初めてなので少し驚いたが、ここで足を止めると学校に遅刻するので珍しいなと思いながら通り過ぎた。

放課後家に帰ってもポストは横たわっていた。どうやら寝てたとかではなく本当に弱っていた様で、少し痩せ細っている様にも見える。

母は何故か随分とポストに対して冷たい態度をとる。この数時間の間におにぎりくらいはあげてあげれば良かったのに。本当に完璧に無視している。もしかして母はポストが嫌いなのだろうか。

 私はポストに情が湧いて助けてあげたいと思い、腕をまくり雑巾で汚れたポストを拭いて綺麗にしてあげた。真っ白で、よく見てみれば随分とお洒落な家にありそうなポストだ。

私の見る限りポストはかなりお腹が空いている様子なので、最近親戚から貰ったが誰も飲まずに数日経った缶コーヒーを飲ませてみた。

どうやらこの子も缶コーヒーは苦手な様だ。勢いよく吐いて地面を汚した。

地面以外汚れなかったが、危うく私にもかかりそうな勢いでぶっ放してくれた。

ポストだから紙とか食べるのかな…と考えて丁度手元にあった昨日の英語のテストの問題用紙を食べさせてみた。

なんとポストは紙も食べないらしい。こんなもの食えるかと汚らしく吐き捨てた。

流石にこれには私も腹を立てた。吐き捨てたプリントの三割部分くらいにコーヒーが染み込んでいた。次の授業に使うのになんて何て事をしてくれるんだ。

 どうしてもポストが何を食べるのかわからなかったので、Googleで検索してみた。

なんとポストはペペロンチーノしか食べないらしい。なんて贅沢なんだポストは。

ペペロンチーノしか食べれないのならば如何なる状況でも毎日ペペロンチーノが食べられる上それを正当化出来るじゃあないか。

私はポストを酷く羨み嫉妬したが、よく考えるとポストはペペロンチーノしか食べる事ができないのか。寿司やハンバーグが側にあってもポストはペペロンチーノしか食べられないのか。

そう考えると、ポストはなんて悲しき存在なんだろうか。

 私はペペロンチーノでしか己の飢えを凌ぐ事ができないポストを哀れんで直ぐにスーパーに冷凍のペペロンチーノと、グレープ味のメントスを購入してメントスを食べながら家に帰った。

家に着いて即座に電子レンジに冷凍のペペロンチーノを乗せた皿を突っ込んだ。

かなり良い匂いがする。ポストは今からこれを食べるのか。そこまで安くなかったのだから少し勿体ない気がする。私にも少し分けて貰いたいな。

ポストと一緒にペペロンチーノを食べる自分を想像したら何故か随分とおかしくて笑えた。

 電子レンジがチンと音を立てた。

ペペロンチーノの入った皿と2つのフォークを持ってポストの元に駆けつけた。

「ほら、ペペロンチーノだよ。」

ポストの口に暖かいペペロンチーノを突っ込んでみたが、吐き出しもしないし、食べもしない。

ポストはピクリとも動かなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ