怖い話5 憎しみの対象 400字以内
「死ね、お前なんか死ねばいい」
藁人形に釘を打ち付ける。はずだった。
指が赤くなっている。
「そんな事も満足に出来ないのか、お前は。本当にダメで生きている価値ないな」
あの上司がそう言ってくる気がして私は泣きながら、うずくまった。
「そんな釘と人形じゃダメだよ、これ使いなよ」
真っ白な着物の女性が立っていた。目の周りは黒く、ボヤけて見える。黒髪は箒の様にバサバサだ。
真っ赤な五寸釘、ドス黒い藁人形、小さな絆創膏をくれた。
彼女の指にも絆創膏が付いていた。
「あなたも誰かを呪いに来たの?」
「上手くいったから、お礼に来てただけ、大丈夫あなたも上手くいくよ」
彼女は高笑いをしながら山を下っていった。眠っていたカラスが鳴き叫び同じ方向に飛び立った。
その日のうちに私が大嫌いな、あいつは死んだ、私は笑った。
「そんな釘と人形じゃダメだよ、これ使いなよ」
私はそう言って、私を殺してくれた藁人形を次の子に渡した。