きんもくせいの星。
走るってのは、陸上部のネタです。
もっと言うと中距離走選手です。
あ。
甘いにおいがすると思ったら。
きんもくせいが咲いてたのか、あの、オレンジ色の花。
きんもくせいって、君を思い出す。
やさしくて、うざくて、まじめで。
一途。
わたしたちの想いは、よくある届かない想いだ。
だけど無理してどうにか伝えようとするから、
余計にこの直線の距離が長くなってしまう。
あの子に伝えた君。
彼氏がいて、それをふったあの子。
君に伝えられないわたし。
あの子をきらいになった君。
それでも、まだ、好きは残ってるんじゃない?
きんもくせいの花言葉が「やさしい」とか、
「うざい」とか、「まじめ」とか、「一途」なのかは、知らない。
きっと。
ただ君の好きな色がオレンジだって、
言ってたのを思い出すから。ねえ。
思い出すけど、良い?
君を好きになったのは、このきんもくせいの季節だったの。
この花が、甘く綺麗に香る、秋。
あの頃走ってる君を見て、思ったんだ。
わたしが見ていたのは「ふざけている君」で、「走ってる君」を見たことなかった。
君が走ってる姿は、オレンジ色の。
きんもくせいみたいだ。
そのうえきらきら輝いてるから、星なんだ。
・・・・きんもくせいの星だね。
「鈴ちゃん、どした?ひさしぶり。」
君がやって来る。きんもくせいの星が。
走り終えた君の姿も、きんもくせい。
「うん、ひさしぶり。あのね、」
君の顔が近くなる。
少し間をあけて、深呼吸して。
「錦くん、わたしは錦くんのことね、
・・・・・好き。」
きんもくせいの星。
君とわたしのこの空気に、
きんもくせいの香りが、たちこめる。




