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騎士団と嘘つき  作者: koma
小話
66/78

(ふたり)

番外編2

北軍にいた頃、15歳ぐらいのリオとウィルの一幕です。

 新緑の香る、春と夏の隙間。

 山の水は、冷たかった。


「リオ、足出せ」


 適当な岩に腰かけていたリオに、沢から戻ってきたウィルが言った。リオは、気まずそうに裸足の右足を伸ばす。


「……大したことないのに」

「あるだろ」


 ズボンを膝までまくりあげたリオの足首を、片膝をついてしゃがんだウィルがそっと掴んだ。そうして上目遣いになる。


「痛むか?」

「……少し」

「冷やすぞ」

「うん」


 ウィルが濡らしてきた手巾ハンカチをリオの足首に当てる。ひんやりと気持ちがよく、リオは息を吐いた。痛みが引いていくようだった。


「ごめんね」


 山の中での任務の最中、川を渡ろうとしていたリオは湿った苔に気づくことができず、派手にこけた。少し前のことである。


「捻ってるみたいだな」


 ウィルが自身の曲げた膝の上に、リオの足先を乗せた。


「ウィル……?」

「応急処置だけしとく」


 言って、ウィルは絹の手巾を歯で千切って裂いた。なんだか申し訳なくなって、リオは足を引こうとする。


「もう、いいよ。歩けるし」

「いいから、動かすなって」


 じとりと睨まれ、リオは葛藤しながら抵抗を諦めた。

 ウィルには過保護な面があった。

 自分の怪我には無頓着なクセに、リオや他の兵士の怪我には「ちゃんと治せ」と面倒なくらい怒ってくる。兄貴面をしたい気持ちもあるのだろうが、本気で心配してくれているのも分かっているから、リオはおとなしく足を委ねた。

 ウィルが器用に裂いた手巾をリオの足首に巻き付けていく。そうして、少し呆れたように言った。 


「しかしお前、足細いな」

「そうかな」


 リオは自分の足を眺め下ろして首を傾げた。

 ウィルとそう変わらないと思うけれど。

 手巾を巻き終えたウィルが、リオのまくりあがっていたズボンを下ろす。


「もっと鍛えろよ。たくさん肉食えって」

「ウィルはもっと野菜を食べるべきだよ」

「……よし、そろそろ戻るか」


 都合が悪くなるとすぐこれだ。

 リオは岩に手をつきながら立ち上がる。

 山から宿舎までは、まだ結構な距離があった。

 だからだろう。ウィルは当然のようにリオの前にしゃがんだ。


「乗れよ、早く帰ろうぜ」

「歩けるってば」

「遅くなるだろ」


 有無を言わさず、ウィルはリオの手を引いて自身の背に乗せる。

 広くて温かい背中に、リオは大人しくしがみつく。

 この頃、ウィルといると息が詰まって苦しくなる。

 なんでだろう。

 リオは思いながら、心地いい揺れに身を任せた。


 

 

まだ恋を自覚してない頃。

いつも仲良しだったらいいな。と思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・登場人物が魅力的 ・剣術試合の迫力ある臨場感 ・主人公の成長 ・実際の女騎士の誕生はこうだったのではないかと思う [気になる点] ・初恋同士ラブラブなリオとウィルも見てみたい [一言] …
[一言] 最高でめちゃくちゃ好きな設定でした。 一気に読んでしまいました…もっとイチャついてくれても良いけどこのじれじれ感も素晴らしかったです 素敵な作品をありがとうございます!
[良い点] 最終話の後の2人が不器用ながらも恋しようとしてる所も良いけれど、今回の話みたいな恋を自覚する前の日常みたいなのも好きです! [一言] 面白いです! 男装騎士ものが好きなので楽しく読ませても…
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