(君と眠る冬)
リオとウィルが12歳くらいの時の 北軍での冬の夜のお話です。
北地の冬は厳しかった。
「さっみ」
勢いよく扉が開いて、雪かきに駆り出されていたウィルが戻ってきた。
ベッドの中で眠りかけていたリオは、寝ぼけ眼のまま呟く。
「……おかえり」
「ただいま。外、めちゃくちゃ寒いぞ」
ウィルは、自分で自分を守るみたいにして両腕を左右の二の腕にしっかりと巻きつけていた。北風に晒されていた鼻先も目尻も赤く、外套やブーツの先にはまだ溶けきれていない雪が散っていた。
「ご苦労様。早く寝なよ」
明日も早いのだから。
言ってリオは、軍支給の毛布をかぶりなおした。
地獄の雪かきは当番制で、今日はウィルの班だった。通常、雪かきは朝と夕の二回なのだが、今晩は雪の量が多いために急遽召集されていた。この分だと明日の晩も召集は免れないだろうーーリオは、明日は自分の班だったと思い出して、毛布の中で小さく眉を寄せた。
北軍に身を置いて三年。
毎年のこととは言っても、極寒の地の積雪量には辟易せずにはいられなかった。
こうして毛布にくるまっているだけでも寒いのに、外に出るだなんてどうかしている。
寮の薄い壁の隙間から、絶え間なくひんやりした外気が流れ込んでいた。
冬の猫みたいに丸まりながら、リオはきつく目を瞑る。
と、背後で二段ベッドの軋む音がした。わずかに揺れている。
え?
振り返ろうとしたリオの視界に、手早く寝巻きに着替えたウィルの腕が映る。そうして、ぎゅうっと背中から抱きしめられた。
「あったけー……」
うなじにウィルの吐息が当たり、リオは驚いて声をあげた。
「ウィル?何してるの」
「一緒に寝ようぜ。今日寒すぎ」
言いながらウィルは、自分の分の毛布とリオの毛布を勝手に整え始める。
「オレのベッド氷みたいだからさ、いいだろ」
「……湯たんぽがわりってこと?」
「まあお互いにだな」
後ろから回されたウィル冷たい手が、リオの手を握りしめた。明らかに体温を奪われている。リオはぼそりと不満を漏らした。
「……なんか、僕が損してる気がする」
「明日はお前が当番だろ?先に温めといてやるよ。そしたらアイコだ」
足まで絡められて、リオは身を捩った。
「冷たいってば」
「まあまあ」
横向きに寝ているウィルの下の腕が、リオのお腹に巻きついた。
「本当あったかいな、お前」
感動したようにウィルが言って、さらに強く抱きしめられる。
「なんかもう、ベッドから出たくねえな」
「……熊はいいよね。冬眠できて」
「おんなじこと思ってた。やっぱ気が合うな、オレたち」
と。ウィルの声から、突然力が抜けていく。
眠気が襲ってきたのだろう。
「無理、もう限界……おやすみ……リオ」
「……うん、おやすみ」
仕方ないな。
リオも言って、両目を閉じた。
ただでさえ狭いベッドは、身動きもできないくらいになってしまったけれど、一人で寝ていた時より、ずっとずっと暖かくなっていた。
明日は、ウィルが先にベッドを温めてくれる。
そう思えば、嫌な雪かきの当番も耐えられるような気がしていた。
猫さんがひっつきあって眠ってるのって可愛いなと思い書かせていただきました。
読んでくださってありがとうございました**




