七仕事目(改訂版)
ごめんなさい! 以前投稿した七仕事目、の内容が間違っていました!
今回訂正しましたので見直してくれると幸いです!
あれから二年たち、例の男、ラインハルトと言う名前の男はご主人様の弟子として今も馬車馬のようにご主人様にパシられている。可哀そうとは思う者の、私の労働の負担の大半をラインハルトが持って行ってくれているので私的にはありがたい。
ご主人様も、何一つ文句を言わない。と言うか言えないラインハルトをパシり役として凄く嬉しがっている様だ。……不憫だとは思うが。何事にもどんな時代にも犠牲と言う物は必ずあるのだ。だから運命だと思って諦めてもらいましょう。
「ラインハルト、君はあまり私達の事を知らない様ですが、特にご主人様だけは本気で怒らせない方が良いですよ?」
そして、私は暇な時間、ラインハルトのための特訓だとご主人様に言われて、以前戦った平原で魔法や身体を使っての戦闘を行っている。勿論、どちらも本気で相手を殺しに行く気でやっているので、私も結構まじめにやらせてもらっています。
……まあ、流石に手加減はしているのですがね。初級魔術縛りで、と言う手加減をして。
「本当にお前ら二人は何者なんだ? こんな屋敷に二人で暮らしてるし」
どうやらラインハルトは二年近くここに位しているうちに、私達の正体について疑問に思い始めている様でした。……まあ、実際、私は全く姿形が変化していません。それはもう身長も何もかも。ご主人様は変わってきていますがね。
「さぁね、まあ、ご主人様を惚れさせて、落として、そうすればご主人様自らが教えてくれるのではないですか?」
勿論、ご主人様が男と知っていての発言なのですが、今のご主人様は女の子です。なので女の子の全てを味わってもらって私の苦労などを理解していただかないと気が済まないのです。それに幸せになって貰いたいですしね。
……まあ、ラインハルト如きには惚れないと言う事は分かりますがね。
「う~ん、少し胸も膨らんできて、色気が――」
「ご主人様を恋愛的な感情で見ることは許しますが、そのような目で二度とご主人様を見ないでください。純真無垢なご主人様が穢れてしまいます」
しかしながら、一瞬ご主人様を色眼鏡で見るような雰囲気があり、一応持ってきていた護身用の魔剣をラインハルトの首筋に当たるか当たらないかくらいの位置へと投擲し、ラインハルトはすごい冷や汗をかきながら小声で「マリネも相当やべぇよな。ベヨネッタの事にかかわると」と言う風に言っていました。
「当然ですよ。私とご主人様はどれだけの関係があると思うのですか? そんなご主人様を目の前で下種な目で見ている奴がいたなら駆逐しますよ」
「うわぁ」
なにやら本気で引いているような声がラインハルトの口から発されたように思いましたが、どうせ勘違いでしょう。更にナイフを首元周辺に投擲したら黙りましたし。それにラインハルトは身の程を知ってほしいです。ただの居候で馬車馬のくせに。
「それに今の状況にだけ感謝していればいいじゃないですか。実質ハーレム状態なのですからね。貴方にささげる物など絶望と死と労働のどれかですがね」
「ペットは飼い主に似ると言うが……あながち間違いではないな」
何なのでしょうか、今度は私の事をペット扱いして、ご主人様は私の飼い主で……まああながち間違ってもいないですし、ご主人様の近くに居られるのならばペットでも労働奴隷でも犯罪者でも大丈夫なのです。
……性奴隷とかだけは絶対に嫌ですけどね。ご主人様に更に新しい扉を開かされてしまいますので。
「何故否定しないんだよ。もしかしてそういう関係を望んでんのかよ」
「な、なにを言っているんですか!? 早く戦いますよ!」
そして否定をしなかった私に対して、ラインハルトは、そういう変態的な関係を望んでいるという風に思われてしまったのか、今度は性的な目ではなく、醜い汚物を見るような目で見られてしまっていたので、すかさず否定して今すぐに戦いを開始させた。
途中「照れ隠しと言うか、なんというか、初めのうちはマリネはまともな奴だと思ってたけど、やっぱりおかしかったな」と言う風に言われていたことはきっと幻聴なのです。こんな馬鹿に付き合わされて疲れているのですよ。
「無駄口を叩かないでください! (九百五重起動:炎槍)」
そして、私は無駄口を叩いているラインハルトに対して、今までラインハルト相手には見せてこなかった私の一番の得意な多重起動。勿論これは人間ではないホムンクルスならではの、魔導結晶に頼った演算機能をフル活用して、可能にさせた九百五重起動。名前の通り一度に九百五の同じ魔法が一瞬にして起動する。
そんな気が狂った魔法が、私が一番得意としている魔法形態の一つだ。
「きゅ、急に本気を出すんじゃねぇ! 水壁!」
ご主人様に二年近くも教えてもらっている割にはいまだに無詠唱魔法を覚えておらず、しかも世の中の常識を全く持って知っていない。そんなラインハルトが使った防御魔法は、ウォーターウォール。普通の炎槍ならばまだしも、九百近くの炎槍だ。大爆発が起きることは目に見えていたが、私は本気でラインハルトを殺しに行こうとしているので、放たせてもらう。
「ラインハルト、 君には全く持って常識と言う物が無いよね。本当に呆れかえってしまう位だよ」
久々に、ラインハルトもきっと水蒸気爆発で気絶してしまうだろうから、私の素の言葉遣いでラインハルトの事を貶してみた。
実際、ご主人様に使えるメイドとしての口調は堅苦しく、心から楽しめることはできないのです、なので私は自主的に時折口調を一番初めの時に使っていた口調を使います。……この口調はご主人様が教えてくれたものなので、ご主人様の私情で、私欲の権化状態なのです。
流石に一人称をボクに戻すと言う事はしていませんがね。あの時は無知でしたが、今ではもうどれだけあざといかが良く分かります、
「じゃあ、少し気絶しようね♪」
「は? 何を言って――」
――ドッガァァンッ――
何かを疑問に思ったような言葉を出したラインハルトだったが、次の瞬間発生した爆音でその声はかき消され、視界は土煙やら、蒸気やらで埋め尽くされた。
流石に、元々の体はラインハルト以下なので私は結界を張り、自らを守った。ラインハルト自体の体は結構、尋常でない位の強度を持っているので結界などは張らずに、放置した。
「ふぁ、終わった様だね」
そして、爆心地辺りを見ていると、血まみれになりながらうごめいているラインハルトが確りと生きており、少し回復魔法を使いながら私はラインハルトの近くへと移動した。