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in the dark  作者: ニヒケソイ
8/10

闇に蠢く人の陰謀 その8

鹿咲が帰った翌日、涼夜は学校には行かずある大学に足を運んでいた。

大学にいくつもある研究棟の中で唯一人が誰一人として近づかない場所、生命応用研究棟、そこが涼夜の目的地だ。

2年ほど前に自分が出ていったきり開けられていないであろうドアノブは雨風のせいで錆びつき、あまり触りたくない。


しかし、涼夜が覚悟を決めるより早く、扉は自ら開け放たれた。あたかも地獄の入り口に涼夜を誘い込んでるかの如く。


ドアの隅から聞こえる微かなモーター音が聞こえる。

つまり、これは中にいる人物によって開けられたということだ。


「お見通しってわけか.......」


涼夜は背筋に感じる悪寒を意志の力でねじ伏せて、扉の中へと進みいった。


中は外観とは違い清潔に保たれている。

灯りが無いのはご愛嬌なのか、悪戯に恐怖心を煽るためなのか判断がつかない。

しばらく進むと、木造の扉が見えてきた。扉には十字架によって串刺しにされながらも十字架を飲み込もうとする蛇の彫刻がかけられている。


「入るぜ」


恐らく中の住人は涼夜の来訪に気づいているだろうが、自分の覚悟を固めるためにわざと声を出して扉を開ける。


「やあ、2年と3ヶ月15日13時間54分37秒ぶりの再会だね私の可愛い可愛い最高傑作モルモット

「久し振りだな、葬儀屋アンダーテイカー、いや、死体漁りスカヴェンジャー

「ふはははははっ!!!命の恩人になんて言い草だ!........まあ、死体漁りっていうより私は死体弄りネクロマンスの方が得意分野なんだがね。そして、君は立場を理解しているかな?私にそのような無礼な口を聞いてもいいと思ってるのかい?」

「あんたは俺を殺さねえよ、なんてたって最高傑作なんだからな」

「ああ!全く子憎たらしいことにその通りだ!私の技術の粋を詰め込み、1000000分の1の奇跡を起こした上で、あの極練流の教え子!君に掛けた金額は50億くらいだが、君の価値は2兆はくだらないだろう!さらにまだ成長するときた!生きる国家予算と言っても過言では無いね!」


脅したり笑ったり凄んだりと、ハイテンションで忙しなく表情を変える女性、『春影 忍』は世界で唯一『エルドナード』を専門に研究を進める変わり者、そして、エルドナードの出現以前は現代のニコラ・テスラとまで呼ばれた天才科学者だ。


色素の薄い灰色の髪を腰まで伸ばし、不健康そのものの肌と、クマのひどい目をしているが、それでも生来の美しさを隠しきれない。

恐らくちゃんとすれば、姉や春香にすら負けない美貌を持っているであろう女性は涼夜の前にずいと近寄る。


「さあて、君の目的は私なんかと世間話をしにきたわけじゃあないだろう?ほら、怒らないから正直に言ってみな」

「小癪だが、あんたのご希望通りに動いてやる気になった、そういえば伝わるか?」

「ほう?じゃあアレを見せてくれるのかい?」

「必要になったからな」

「ふ、ふふふ、ふははははーーーっっははは!!では、やっとみれるというわけだ!君の本来の実力を!.......あの白髪ショタロリコンババアのせいで君の序列は低過ぎるからね、本気なんてそれこそ世界が滅びでもしない限り見れないんじゃないかと思っていたが、どうやら、私はついているらしいな」

「春香さんになんてあだ名をつけてやがる......」

「気にしてはいけないよ、ちょっと待っててくれ、アレは厳重に保管してあるからね......おっといけない、こいつもだ」


ポイと投げ渡されたフリスクケースのようなものをキャッチしてみれば、中には黒い錠剤が入っている。


「一つで10分、二つで15分、三つ目以降は使うなよ」

「わかってんよ」


涼夜がそれを制服の内ポケットにしまうと同時に重厚な音が鳴り響く、彼が春影の方を思わず見てみると彼女の部屋の床の一部が開き、地下への階段が出現していた。


「さて、降りようか」


階段をゆっくりと下っていく、真夏にもかかわらず、肌を刺すかのような冷気が漂う空間は音がこもっているのか、常に亡者の鳴き声のような音が鳴り響く。

そして、凡そ地下20mほどに降りると階段は途切れ、漆黒の床が広がっていた。

春影が白衣のポケットから小瓶を取り出し、小瓶の中身を床へと垂らす。すると、夜の闇よりも暗い床には幾千もの筋が刻まれているようで、光のラインが引かれ始めた。

光のラインはゆっくり、しかし確実に広がっていき、地面に模様を描く。

完成したのは六芒星と、それを取り囲むように引かれた光の輪だ。輪の中には見たこともないような文字が刻まれている。


そして、六芒星の中心に何かが突き刺さっていた。

それは一本の剣の形をしたもの、包帯のようなものを幾重にも巻きつけてあるため、全容がわからない。


「ほら、アレは私には抜けない。君が取りに行け」

「........ああ」


涼夜が六芒星の中心へと歩み寄り、剣の柄を握る。彼が力を込める必要すらなくスッと引き抜かれたそれは涼夜の手に心地の良い重さを伝えてくる。涼夜は少しの間、それを眺めた後に、春影の方を振り返った。


「よし、戻るか」

「ああ、君はいいかもしれないが、研究室ごもりの私にこの寒さはきついからね。急ごう」







地下室から戻った後、涼夜が研究室を出ようとすると、後ろから声をかけられる。


「ちょっと待て、私も行く。」

「へえ、あんたが外に出ようとするなんて珍しいこともあるもんだな」

「君の本気を見れるっていうんだからね、機械を通してなんて勿体無いことはしないよ」


彼女の準備、とは言っても日傘を持つ程度だが、を待ってから外に出る。


「てか、来るとは言っても、あんたどうすんだ?俺は念の為に来たってだけで、即座に戦いはしねえぞ?」

「もちろん、君の家に泊まらせてもらう、大丈夫だ。春香には君の彼女ってことで通せばいい」

「絶対やだよ!なんであんたのわがままに俺が付き合わされなけりゃならねえんだ!」

「ほう?君は一応私に感謝しなければいけないんじゃないかい?その薬に、その剣の保存、私がどれだけ君に貢献した?」

「ぐっ.......たしかにそれについちゃ感謝してるが.....」

「ふっ、冗談だ。春香とは大学時代の友人だからね、普通に頼み込むさ」


ケラケラと笑いながら、歩き出す春影。

涼夜としては、手玉に取られたのが面白くないが、彼女に感謝してるのも本当の話だ。

釈然としない思いを抱えながらも、彼女を追いかける。

すると、春影はふと気づいたかのように振り返った。


「そういえば、君、学校は行かなくていいのかい?君の年齢だったら高校生だろう?」

「あー、っと、今日は休みだから......」

「バレバレの嘘をつくな、ほら、遅刻してもいいから行ってくるといい、春香の顔を立てなきゃなんだろう?それに春香の家は知らなくとも、私くらいになれば、国家会議中に入って行ったとしても問題は無い、今から直接頼みに行くさ」

「.......そっか、悪い、じゃあ行ってくる。」

「感謝してるなら、次からは私のことを先生と呼んでくれたまえ」

「ありがとな、先生」


走り去って行く、涼夜の背中を見送ってから、春影は軽く笑う。


「なんだ、結構素直じゃないか」





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