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潤い的初戦

〈一日目・一時間目〉

僕はドキドキしていた。否、興奮していた。

前日、彼女の席はキョンシーの異名を持つ小林の隣に一度なった。そう、なった、過去形だ。小林の隣になったのは空いてる席だったからであったため、

我がクラスの担任、後藤は「もうそろ席替えの時期だなぁ。うん。一人増えたし。うん。するか。うん。席替え。」という感じでくじ引きによる席替えが決定した。今回ばかりは後藤を誉めるしかない。よくやった。字キレイに書け。

そして今興奮している。何故なら俺のターンだからだ。手汗が滲みでてるのが感じられた。あぁやばい。緊張する。クソ、なんで彼女の方が引くの先なんだ。良いじゃん僕からで。ちくしょうこんちきしょう。ヒーメヒメ♪ヒメ♪ヒメなのだ♪ヒ…「おい早くしろ~」

「メッすいません!!」そう言いながら僕は咄嗟に手を引いてしまった。おっといけない、落ち着け、冷静に、取り乱しちゃいけねぇぜ、さぁもう一度穴に手をぶち込、、もうとしたら後藤に手をつかまれてるのに気付いた。「二回目ないっつったよな~

じゃあ次ぃ」きつい冗談はよしてくださいよ~と手を刷り刷りして言おうとしたところ、手に紙がひっついている事、そして紙がぬっとり濡れているのを僕の目はとらえた。

しょうがないのでこのぬっとり紙で妥協してやることにした。悪い予感などはしない。当たり前だ。こういう時は直感で引いた時こそ当たりが出るのだから。欲まみれの豚野郎に女神様は微笑まんのだ。ぬっとりした手でぬっとり紙を開くと「十一番」ときったなく書いてあった。

内のクラスは縦横共に六列の形となっているので僕は左から二列目、後ろから二番目の席である。

佐藤さんはどこかって?右から二列目、前から二番目さ!




聖戦の後、僕は美しいシンメトリーを描きながら、机にうつ伏せになっていた。

「そう落ち込むんじゃないよ尚吾。こんなものは不幸の一欠片。気にするようなことじゃぁない。」

そうやって僕を励ますのは地味にイケメンと名高い葛城諭吉。僕の中学からの友人だ。

「欠片は徐々に集まっていって高嶺な花だと気付いて諦めるのは見え見えなんだからさっさと諦めて俺とデュエマするべ。」この通りゲス野郎です。

「俺お前がデュエマのシークレットカード当たったとかいうツイートフォローしたぞ。仇で返すなフォローで返せ」

「ゴリラにバナナで殴られてキレた飼育員ワロタwwだってさ。フォローしたぞ。」

「そっちじゃねぇ!友の心を読め!てかそんなのツイートもリツイートもした覚えねぇ!」

「あ、小林のだった。」

「ちくしょう!!」

傷心中の友にこの応酬はなんだ。何かしたかな僕。

「何!?デュエマやんの!?」

高校生とは思えない発言でひょこっと現れたのは僕の幼稚園からの友人(幼なじみと言っていい)、峰悠斗だ。

「おう、尚吾の失恋記念にデュエマ大会するぞ」

「勝手に諦めるな!記念にするな!」

何故僕の回りには高校になってもデュエマプレイヤーのヤツばかりいるのだろうか。誰か遊戯王してる人いないかな。「じゃあ尚吾!スリーサイズ聞いてくればいいんだな!」突然悠斗が耳元で叫んだ。僕が考え事をしてる間に話しは路線変更したあげく快速に変更されたようだ。

「ちょっとまて!なんの話しだ!」

「任せとけ!!行ってくる!!」

「ちょっっ、ストッ」

お気付きの方は多くいらっしゃると思いますが、一応述べておきます。峰悠斗は馬鹿である。

「佐藤さぁ」

悠斗は「ん」を言う前に右斜め前を向いて駆け出す姿勢に入る。それを見た僕はほぼ反射の速度で悠斗のYシャツの襟を掴み、

「ばが峰ぇぇぇ!!!」

脳天をぶん殴った。痛みを与えられた悠斗は何故だという単語を連呼しながら悶絶している。さぁ次は元凶さんの番だ。そう思ったがさっきまでいたはずの諭吉がいない事に僕は気付いた。同時に僕の机の上にノートの切れ端が置いてあるのにも気付いた。

「保健室行ってくる。後藤に言っといて。by葛城諭吉」

あの野郎。




席替えで見事に敗れ、ゲス共に弄ばれたwasな僕は、遠くにある、佐藤さんの背を眺めていた。今頃こんな状況にならず、佐藤さんと打ち解けている、そんな自分を想像すると苦しむと同時になんだか……なぁ………うん、、お、息子が起き上がってきた、という気持ちになってくる。虚しい。虚し過ぎる。そんな感じで絶望していた僕を聞きなれた鐘の音が呼び起こす。確か二時間目もロングホームだったか。数学の清田がテストの採点を遅らせているため急遽ロングホームとして穴埋めすることになったのだ。ちなみに昨日、学校の裏サイトにはピンクの光りを帯びた服を身にまとった女と清田のツーショットが投稿されていた。そして、二分程遅れてやってきた気だるげそうな後藤はこう言った

「よーし、係決めするぞぉ~う」




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