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三題噺集

オッパイチョコパイシッパイイッパイ

作者: シュウ

胸が大きいということは、羨ましがられることである。

胸囲の格差社会なんていう言葉もあるらしいし、人間社会では胸囲というものは、見た目に大きく優劣をつけるんだとか。

私、高田千代子(たかだ ちよこ)も、その胸囲の格差社会においては勝ち組と言えるだろう。

だがしかし!

そんな社会で勝ったとは言えども、全然嬉しくない。

肩は凝るし重いし運動は苦手だし変なところで胸がつっかえるし。いいことなんてあんまりない。

みんなが胸ばっかり見てる気がして、私のことなんて『ただの胸がでかいやつ』としか見ていないんだろう。

いくら髪型を変えてもすれ違うたびに言われるのは『胸でけぇ』。

いくらメイクに力を入れてみても言われるのは『今の子の胸見た?』。

いくらおしゃれをしてみても言われるのは『あの服にあの胸は反則でしょ』。

もうこんな胸がなければ……と思ったこともたくさんある。

手術とかで小さくも出来るって話だけど、せっかく親からもらった身体を改造するのは申し訳なくて、開き直りもできずに、ただのコンプレックスとなって身体にくっついている。


そんな私にも友達はいる。

小学校からの幼馴染で、高校に入った今でも腐れ縁並の吸引力を発揮して、同じクラスで過ごしている。


「チョコー」

「ひゃっ! ちょ、またいきなり、やめてって言ってるでしょ!」

「だっておっきいから触りたくなるんだもーん」


今、私の後ろから胸を触ってきた……というよりは、揉みあげてきた彼女が、私の友達の千歳悠香(ちとせ ゆうか)

きっと悠香のせいで、私の胸は大きくなったんだと思う。

小学校の高学年の頃から、まわりと比べて大きかった私の胸を、ただ『羨ましい』という理由で弄んできた悠香。それは中学に上がっても高校に入っても変わることはなかった。

その代わりといってはなんだが、悠香の胸は小さい。でも私はそこに憧れっぽい何かを感じていた。そう言う意味で『羨ましい』とは思っている。

でも人前で胸を揉むのはやめてほしい。エッチなビデオでもそこまではしないと思う。見たことないけど。


「チョコパイはいつ触っても重みがあって良いですな!」

「んもぅ……人前で触るのはやめてって言ってるでしょ」

「だって触られるような胸をしてるチョコが悪い!」

「触る方が悪いに決まってるでしょ!」


悠香は私のことを『チョコ』と呼ぶ。千代子だからチョコ。


「チョコは気にしすぎなんだよ。そんなに立派なものがついてるんだから、もっとアピールしていけばいいのにさー。私にも半分分けてよねー」

「分けれるもんならいくらでも分けてあげたい!」

「はいはい」


アピールなんてしたら、嫌な女だと思われるかもしれないじゃん。そんなこと誰が出来るかっての。

自分の胸に手を伸ばした悠香が、胸をモミモミしながら言う。


「私ももうちょっとあればモテたんだろうなー」

「悠香はそのままでいいと思うよ。カワイイし」

「何? 胸のサイズがカワイイって? ふざけてんのか!」

「ひゃぁっ!」


下から私の胸をペシーンと叩き上げてきた。その反動で、少し身体が前のめりになる。

すると、周りでそれを見ていた男子から『おぉ』という声が漏れたのが聞こえた。


「ううっ……」

「男子! チョコピは見世物じゃないんだぞ! 散れっ! 誰か塩を撒けぇい!」


立ち上がって塩をまくジェスチャーをする悠香。男子は視線をそらし、フンッと鼻息を荒くした悠香が座りなおす。


「まったく。男子ってば飢えた獣のような目でチョコのことを見るんだから! ぷんすか!」

「どう考えても悠香のせいだけどね」

「こう見えても私はチョコのこと心配してるんだよ?」

「えっ……悠香……」


急に真顔で言う悠香。

私は思わずあたふたしてしまい、あわあわとしてしまう。

そんな悠香が私の胸にポフッと顔を埋めてきた。

そんなに心配してくれていたなんて……ふざけてるばっかりだと思ってたけど、やっぱり持つべきものは友だと思っ…


「やべぇ……この乳に挟まれる感じ、やべぇ……」


…たのだが、平常運転の悠香だった。

見直して損したわ。

私は見えている後頭部をいい音がなるようにパシーンと叩いた。


「この胸は緩衝材にもなるな!」

「やかましい!!」



おしまい

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