表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【SS】余命確定

作者: あくた咲希

 新しい病気が世界に蔓延しつつある。

 若返りの病。別名、余命確定病。

 ゆっくり、徐々に発症してゆき、いくら若作りでもありえないだろう!という、診断がつく頃になるともはや手遅れ。加速度的に病状は進み、最終的には受精卵にまで逆戻り、消滅してしまう。治療法はいまだない。

 このメカニズムからして不明な病に、僕の母親もかかってしまったらしい。もともと若ぶりな人だったが、今年五十歳のはずが二十代にしか見えなかった。僕の二十二歳になる妻とは、姉妹のように仲がいい。

「まぁ、残りの人生を楽しむわよ」

 あっけらかんと母は言う。この病気の患者は概して前向きだ。必死で病気を解明しようとする僕ら医療関係者は、しばしば悩まなければならない。

 日に日に若返ってゆく母は、確実に死へと向かっているというのに明るかった。

病状は急速に進んでゆく。

「患者を前にシケた顔をするもんじゃないわよ? 悲しむことはないわ、あんたたちのもとに生まれ変わってきてあげるから」

 きゃっきゃっと甲高い笑い声が、二世帯住宅のリビングにこだました。

 縮んでゆく母を抱きしめた妻が、泣きそうなのをこらえて僕を見やる。

 僕はといえば、そんな妻を母ごと抱きしめるしかなかった。


 やがて妻が妊娠し、十月十日をへて、ぶじ子どもが生まれた。

 妻のたっての希望で、母の名を受け継いだ僕の娘のアルバムと、背表紙の色あせた母のアルバムは、隣り合ってリビングの本棚におさまっている。



   *おわり*

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ