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断章 兄弟愛     1995.11

クジャ(弟)とフレッド(兄)の話です。

「いい加減にしろよクジャッ! お前ホントにやる気あるのか?」

「兄さんにだけは言われたくないね。俺はいつだって本気でやってるよ」


「またあの兄弟喧嘩が始まったか……。正直ついていけないよ、あの二人には……」

 コゼットは座りながら彼らを見てまた読書を再開した。


「第一……俺とお前が組んでコンビネーションアタックとか成功するのか? 俺には時間の無駄だと思うんだが」

「仕方ないだろ兄さん。でも俺たちだからこそできるものがあるんじゃないか?」

「いいか……。これ以上足を引っ張るんだったら俺は別の奴と組むからな。じゃあ俺定期偵察があるから」

「兄さん……」

 フレッドはイライラしながら訓練場から出て行った。

「……今回の原因は?」

 いつも口数の少ないマイトが話しかけてくる。

「マイト中尉……。俺は兄さんとコンビネーションアタック組みたいと思ってるんだけど、なかなかうまくいかなくて……。それで兄さんはイライラしてるんだ」

「なるほどね……。ならなぜフレッドと組みたいと思ったの? それをフレッドに教えずに協力するのはどうだろうね? きっとフレッドもその答えを知りたいはずよ」

「確かにそうだけど……。何のために……か」

「まぁ私から言えるのはそのぐらい。あとは自分で解決しなさい」

 マイトはぼさぼさの髪を揺さぶりながら訓練場から出て行った。

「……何のために兄さんと組んだんだろ?」



「こちらフレッド。スタンピア周辺に敵兵確認、数少。至急増援を頼む」

「こちらルーク。了解した、これよりすぐに出撃する」



ミッション情報 ミッション名「兄弟愛」 1955.11

フレッドからの偵察で敵兵が確認された。場所はスタンピア南ゲート付近の旧街。数は1小隊、歩兵20ほど。また敵もこちらの動きに気づいて増援を要請している。それからフレッドは孤立状態となっているため早急な合流が必要。今回は敵の全滅、もしくは南ゲートの防衛。

    以上。  Rook Anjir


アンジール少佐「ミッションは聞いての通りだ。敵もこちらの動きに気づき増援の要請を確認した」

K.コーズ少尉「俺が兄さんのところに合流します」

アンジール少佐「よし。クジャ少尉なら近接兵だから移動距離も長い……。全員彼の援護射撃をしろ。また南ゲートの防衛も忘れるな。……作戦開始!」


 ルークの合図でクジャはフレッドのいるところに走って向かった。

 すると右の物陰から敵突撃兵が現れ攻撃しはじめた。が、その攻撃をクジャは見事に避けるとその敵兵を格闘攻撃にもっていく。クジャは敵の左手にある銃を抑えるとすぐさま後ろに回り込み、空いた右手を肩甲骨の辺りまで持ち上げた。すると反動で敵は武器を落とした。クジャは武器を遠くに蹴ると敵の首を両腕で巻くように挟み込み、そしてその敵の首をひねり折った。

敵は力が抜けたように地面に倒れ込んだ。

 クジャがそれを確認すると、一発の銃声が聞こえた……。彼はとっさに後ろを振り向くと、彼の後ろには被弾し倒れる敵兵の姿があった。


カネリアス中尉「援護射撃は任せて。だから早くフレッドのところに……」

K.コーズ少尉「……ありがと、マイト中尉」


 クジャは急いで兄のいるところに向かった。すると足を抱え込む兄、フレッドの姿があった。


K.コーズ少尉「兄さんっ……」

F.コーズ中尉「? クジャか……。どうしてこんなところに?」

K.コーズ少尉「そんなことはいいから早くみんなのところに合流しなきゃ……誰か、応答して…………。だめだ、ジャミングされてる……。兄さん歩けそう?」

F.コーズ中尉「グッ……だめだ。足をひねってしまってまともに歩けない。これじゃあ敵のいい的だ。……お前だけでもみんなのところに戻れ」

K.コーズ少尉「バカなこと言うなよ。……歩けねえなら俺が背負ってやるからよ。ほら、早く乗って……」

F.コーズ中尉「……あぁ、すまないな」

K.コーズ少尉「いっくぜェェ……。」


 するとクジャとフレッドたちの行く手に増援が現れた。数は5人で主に突撃兵でまだこちらに気づいていない様子だった。


K.コーズ少尉「増援か!?」

F.コーズ中尉「やっぱりここからはお前一人で戻れ。俺の事はいいから……」

K.コーズ少尉「ふざけんなっ! ……小さいころからいつも兄さんは俺の事を護ってくれたよな。今ぐらい、お返しさせてよ……」

F.コーズ中尉「クジャ……。フッ、いっちょ前になりやがって……、もう俺が護らなくてもよさそうだな。……なら俺を最後まで守り通してみろ」

K.コーズ少尉「兄さんはここにいて。俺は近接戦で相手を蹴散らす」

F.コーズ中尉「できるのか?」

K.コーズ少尉「あぁ。近接戦なら誰にも負けない…………ル、ルーク以外には……」


 クジャはそういうとルークたちと交戦して気を引いている敵増援の後ろに近づいた。クジャは増援のうちの一人の首を腕で巻きこむとそれをまたひねり折った。

 それに気づいた敵兵はとっさにクジャを狙うが、クジャのぽっちゃりした体格に合わない足の速さで狙いが定まらなかった。そして一人ずつ蹴りや急所への攻撃を繰り返していった。

 しかし最後の一人となったところでとうとう狙いを定まれてしまった。クジャの足は止まり、敵は銃口をクジャに向けた。


 パーーーン


 一発の銃声の後にその最後の敵兵は倒れた。


F.コーズ中尉「やっぱり俺がまだ護らなきゃいけねえようだな」

K.コーズ少尉「兄さん……」


 倒れた最後の敵兵の向こう側に足を引きずったフレッドの姿があった。



「おい、そこから中にえぐっていけ」

「わかった……。で、ここで近接戦か」

「そうだ。そしたらここで二人で戦えばっ……と」

「……で、できたっ。やったよ兄さん……これでコンビネーションアタックが完成したね」

「あぁ、次の作戦から早速やるぞ」

「うん」

「……どうやらようやく完成したようね」

 マイトが近寄ってきた。

「マイト中尉……。ありがとうございました」

「私は何もしてないわ……。あっ、それからルークから伝言が、悩んだ結果コンビネーションアタックのことをCAって呼ぶって……ただ略しただけなのに悩む必要あったのかしらね?」

 マイトはそれを言うと訓練場から出て行った。

「ねえ兄さん。せっかくだからこのコンビ……CAにも名前をつけようよ」

「なら“ブラザーファイヤー”なんてのはどうだ?」

「うんっ。それにしよう」

「あー、それからクジャ。まだあの時の礼言ってなっかたよな。……あ、ありがと」

「え!? な、なんか兄さんらしくないね」

「んだと! 人が感謝してるっていうのに」

「わーごめんなさい」

「おい、逃げるのか? 俺に鬼ごととはいい度胸じゃねえか。」


 その様子を遠くから見ていたマイトはクスッと笑った。

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