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第一話 あれから十年 1955.10

「ネールランド共和国は首都グリフィードを中心とし、北と南にある山脈からは“ガルン”と呼ばれる鉱物資源を世界で唯一採掘できる国なのじゃ。ガルンとは、主に石炭の代替としてよく使われているのだが、未だ謎が多く様々なものに利用できるのではないかと言われている魔法のような鉱物なのじゃ。例えばガルンは戦闘機の燃料などにも含まれていて、ジェットエンジンの戦闘機の開発がスタートした当時の他国と比べると、ネールランドの航空技術は世界最高水準となっている。しかし、その仕組みもまた謎のままじゃ。というよりも、ネールランドはその情報を公開しなかった。そのガルンがネールランド共和国の経済を大きく支えているからじゃ。ばれるわけにはいかん。……そしてガルンは坑道の中で薄く赤く輝いているそうじゃ。ここまでわかったかな? マックス」

 そう言うのはネールランド共和国の東に位置する大国、レプトピアのハウス村に住むガウゼン・フォルトだ。彼は孫のマクシミリアン・ロウズと一緒に暮らす六五歳の老人で、髪は白くやせ細っていた。

「じいちゃん、その話この前も聞いたや。それで我がレプトピアはその資源を奪おうとしているのでしょ」

 十二歳になるマックスはいつものクセで前髪を指でクルクルまわしながら応える。おかげで彼の前髪はクルッとカールしている。

「そうじゃ、それで十年前に起こったのがナウジ戦役じゃ。あの時はネールランドとレプトピアの国境にあるナウジ平原を対象に、レプトピアの軍隊さんが攻撃をしたのじゃ。……むごい戦いじゃったよ。多くの村や都市が突如と攻撃され、罪のない人が亡くなってしまったのじゃ。あれ以来ネールランドとは敵国関係なんじゃよ。…………よいかマックス、どんなことがあっても絶対に人を傷つけてはいかん。傷をつけるのでなく人を守るのじゃ。それが約束できるかな?」

 ガウゼンはそういうと、前髪をいじっていたマックスの手を止めて訊いた。

「うん、約束するや」

 マックスは少し真剣なまなざしで言った。

「……ハッハッハー。よしよし、いい子じゃ。ではこれをお前に授けよう」

 そう言ってガウゼンは鍵のない棚にしまってあったペンダントをとりだす。

「よいか。このペンダントは我が家に古くから続く家宝でな。本当はじゃ、毎度新しく作り直して中に親の名前を刻んだらしいのじゃが、この一族は作り直すのが面倒なのか代々このペンダントを渡しているのじゃ」

 そう笑いながら鈍く銀色に輝くペンダントをマックスに渡しす。外には紋章か家紋のようなものが彫られていて、ところどころに傷もみられる。中には二人の名前が削られていた。でも二人とも全く知らない人である。

「これをできるだけ身につけているように。わかったなマックス。……よし、寝るとするか」

 そういってガウゼンは部屋にあるランプをスッと消す。


 同じころ、十八歳になったルークは孤児院の『戦闘訓練科』へと進み、入科式の最中だった。

 戦争で親を亡くした子供たちが兵隊になる。軍はその復讐心を有効に使うために孤児院に戦闘訓練科を設けた。表向きは孤児院の傘下だが実質は軍の命令をきかなければならない。だが待遇は悪くなく、軍からは十分な食糧、水、武器や戦車など普通よりは上品で特別の扱いとされてきている。勿論、そのぶんミッションの内容は状況の難しいものばかりなのだが。

 ルークは焼き払われたグレム村で保護された後、スタンピアと呼ばれる比較的大きな都市に連れて来られた。スタンピアには中部作戦司令支部(COCB)と隣接する戦闘訓練科、孤児院などがあり、COCBは主にナウジ平原の保安を任されている。十年前のナウジ戦役で活躍したのがここの司令支部だ。そしてこの町にあるハウフォード孤児院にルークはやってきた。

 孤児院は主に両親や身寄りのいない子供を対象としているが、親族がいて家族がいないという0歳から18歳まででも対象として受け付けている。そして、16歳からは進路を選択することができるようになっている。

 進路選択の一つ目は研究コースでいわゆる高校大学で習う範囲を学ぶコース。二つ目はふつうコースで普通の仕事に就き、パートナーを探してふつうの生活を始めるコース。そして最後に戦闘訓練コース。このコースは軍とはまた違った、独特の部隊を形成している。ただし、クライアントである軍の命令は絶対で、戦闘訓練棟も軍と同じ施設内にある。その戦闘訓練棟とCOCBや寮などを繋いでるのが、長さが百メートルに及ぶ連絡橋だ。


 ここに進むまでの孤児院での生活はさほど苦しくはなかったな。と、ルークは今までの過去を振り返っていた。それはここには自分と同じように親を亡くした子供たちがいて、悲しくなった時に話し相手がいたし、逆に話されたこともあったし。何より、ルークの心は彼が思う以上に強かったからなのだろう。だからルークには友達が沢山できた。

「何ボーっとしてるのよ。……これからもよろしくね。ルーク」

 いきなりルークの肩を叩くのは同じ孤児のミラ・ファミリアだ。ルークとは同い年で、長い栗色の髪をしている。体系は戦闘に不適切なサイズの胸に細長い足。照れるといつも顔を火照らす。

 ルークは腕につけた時計を見つめ、すでに入科式が終わっているのに気づいた。

「あぁ、ミラか。こちらこそよろしく」

 ルークと同じ年にこの科に進んできたのは、ルークとミラの他に五人いる。皆、十八歳以下のまだ子供だ。

「さっ。もう隊の振り分けが終わっちゃってるわよ。何にも話聞いてなかったでしょ。もうすぐ集合時間が来ちゃう。早く行こ」

 ミラはルークの腕をつかむと長い連絡橋に続く出口へと向かった。

 長い連絡橋を歩き、連れて来た先は“ブルー小隊”と標識のかけられた部屋だ。中には十人ほどの人たちが集まっていいる。みんな口を閉じとても静かな様子である。ルークは部屋の中に知った顔がいたことに胸をなでおろして安心する。

「ホラ、入口で止まるな! 中に入るならさっさと入れ!」

 後ろから怒鳴り声が聞こえ、いきなりルークの背中はグッと押された。ルークが前によろけそうになるも踏ん張って後ろを振り向くと、そこにはいかにも厳しそうな上官の顔つきをする女性がえらそうに立つ。髪はベリーショートかそれほどの長さで、スタイルは軍人にはもったいないほど美形である。

「すみません……」

 ルークは慌てて謝る。

「謝る暇があるならさっさと席に着け」

 しかし女性はまた大きな声で怒鳴りながら机を指し、渋々ルークは言われたとおりにすぐに席に着いた。

「いいかヒヨッ子ども、私の名はパレット・アーヴァン少佐、二十五歳だ。この小隊の小隊長を務めている。よろしくな! ……なお、今年は新人の七人が全員この隊に入った。そのため普段ならしないのだが、今回はヒヨっ子一人ずつに自己紹介をしてもらう。では言いたい奴からやれ。……の前に、ここまで質問はないか?」

 あまりにも見た目通りの針のような口調で驚きを隠せない新人と慣れたような顔をする上級生のちがいは歴然だった。

 上級生も新入生と同じ数ほどいて、どれも個性的な顔つきをする。特に目立ったのが右足が義足のやや中年ぐらいの男だ。周りとの歳の差は歴然なほどだった。おそらくパレットよりも年が上だろう。

「あのー。今年は新人全員がここに入ったとおっしゃいましたが、例年はどれぐらいの人が各部隊に入ってくるのでしょうか?」

 そうきいたのは黄色い髪をして頬にはそばかすが少しある新人の少年だった。

「その年によって差はあるが、基本は各隊均等に一人、もしくは二人に振り分けられる。だが今年は見ての通りこの隊には人がいない。それを補うようにこの隊に新人が全員来たのだ。が、これでもまだ少ない方だ、だから上からある命令が下りている。以上だ」

「ある命令とは?」

 ルークが聞き返した。

「お前にそれを言って何の得がある? 心配するな。この命令は私かその代理が遂行するものだ。よし、では自己紹介をしろ」

 どうやら自分には強く当たるようだとルークは不思議に思うが、彼には強く当たられる心当たりが見当たらない。

 この戦闘訓練科にはブルー小隊の他に七つの小隊が存在する。なお、戦闘訓練科を直接指揮しているのが軍、つまりは連絡橋の先にあるCOCBだ。COCBの本部は学校で言えば職員室のような場所で、デスクや書類などが散らばっている部屋にある。

「では、私から。名前はミラ・ファミリア。十八歳です。生まれはナウジ平原にあるコザという村です。十年前の戦いで親、姉妹を亡くして孤児院に入りました。階級は准尉、主な役割は衛生兵です。これからよろしくお願いします」

 ミラが滑らかな声で言う。ミラはいつも明るく積極的に振舞い、決して悲しむところを他人に見せた所がない。孤児院に入ってからの一番の馴染みであるルークすら見た事がなかった。そのためルークはミラの過去の事について気になってはいるのだが、逆に訊きづらい面がある。

「ぼ、僕はクルガ・オイール。十六歳です。……階級は准尉、偵察兵が主な仕事です。よ、よろしくお願いします」

 そう言ったのはあのそばかすのある黄色い髪をした少年だ。彼もルークとは孤児院で知り合った。少し人見知りの所があり、それに打ち勝とうといつも必死に努力をしている。

「わたくしが次に言いますわ。わたくしの名はマーガレット・パラ。十六歳ですわ。階級は同じく准尉、突撃兵を担当しますわ。こう見えて体力ありますから。よろしくお願いしますわね。フフッ」

 お嬢様気どりで話すマーガレットに、一番こたえたのはどうやら少佐のパレットのようだった。パレットはこの世の人間ではないかのような目で彼女を見ている。というより、目を背けたかったが固まって背けられなかった。

「俺の名はルーク・アンジール。歳は十八歳だ。生まれはレプトピアの国境に近いグレム村、十年前の戦いで焼き払われて今は何もないが、いつかあそこで暮らせる日が来るように努力を惜しまないつもりだ。階級は准尉。近接兵だ。今後はよろしくたのむ」

 苦い顔でパラを見つめていたパレットの顔の表情が変わる。

「次は俺だ!! 俺はジャック・ネイソン。趣味は料理、ついでに夢はコックになる事。遠征のときは俺が料理を作ってやるぜ! それから…………」

 結局ジャックは好きなことしか語らなかった。

「私の名はスー・ミャンレン准尉だ。大抵のやつが名前だけで私を東洋の者だと勘違いするが、私はれっきとした西洋の者だ。もしこの瞬間私を東洋の者だと勘違いした奴がいるのなら、今すぐ私の前で直れ。直に成敗してやる!!」

 そう言うのは、少し威勢のいい女の子である。見たところ身長は一四〇㎝あるかないかで話し方も幼児並だ。だがこう見えて十七歳とジャックと同い年である。だからかは分からないが、ジャックとはいつも口喧嘩をしている。

「誰もお前みたいなチビに興味なんか持たないぜ! スー准尉」

 ここへ来て早速ジャックが一言つっこんだ。しかも最後の一言は少し憎たらしさのこもった言葉だった。

「なにをー。歳以外では私よりちょーっと上だからといって調子にのりおってぇ!!」

「歳も同い年だし、強いて言えば俺の方が誕生日は早いぜ」

 スーは顔をリンゴのように赤くして怒りをあらわにする。見間違いか湯気のようなものも見える。

 ミラはその喧嘩を見ながら最後の一人に気づいた。足を机の上にのせ、顔は帽子でほとんど隠れている男だった。帽子を外せば寝ているのかも……と思いミラが近づくと、固まっていた体が動きだす。

「起きてるよ」

 彼は右手で帽子をちゃんと被り直す。

「俺の名はネオ・シャドゥール。十八歳。准尉。狙撃兵。以上」

 必要最低限の事だけを話して終わった。ネオは孤児ではあるが特別にこの科に配属されたため、ルークや他のみんなとは初対面である。

「よし。時間短縮のため上級生とのあいさつは各自しておくように。それと、ルーク・アンジール准尉はこの後すぐ、私について来ること。それじゃあ各自訓練を始めてくれ。わからないこと等があれば上級生に尋ねること。特に同じ兵種のチームワークは大切だ。……じゃあコゼット、あとはよろしく」

 そういうとパレット少佐は部屋から出ていき、ルークも彼女について行った。

「……了解っ」

 それを見て部屋の隅に腰を掛けていた例の義足の男がボソッとつぶやく。低い声で、歳は二十代後半のようだ。みんな彼を注目したところで、今度はさっきとは変わった張り上げる大きな声で言う。

「あー、俺の名はコゼット・クロウ。見てのとおり右足がない。だから、主に戦車や装甲車を動かしている。あと、一番歳くってるって事で、隊のまとめ役の存在だ。何かあれば聞きに来い。んじゃあまず訓練について説明する……」


 そのころ司令部へと続く長い連絡橋では歩きながらルークとパレット少佐が話をしていた。

「そういえばルークは確かグレムの出身だったよな。私も同じグレムの出身だ。あそこは特に被害がひどかったもんだ。……それで実はな、お前と一回あったことがあるのだが、おぼえてないか?」

 ルークは驚いて立ち止まったが、全くと言っていいほど身に覚えがない。なにしろ十年以上も前の事だったから。

「思い出せないのか? 私の名はパレット・アーヴァンだ。どうだ……?」

 その瞬間、ルークの脳裏には、あの時の最後に別れた光景が思い浮かんだ。

「でっ、では、あなたはヘス・アーヴァンの姉だったのですね」

 そう、いつも水を一緒に汲みに行き、町で最後にあったヘスの名前は、ヘス・アーヴァンであった。

「ハハッ、久しぶりっ。まったく鈍い奴だ。弟はいつもお前の事を手紙でかいていたぞ。あーんなことからこーんなことまでな」

 パレットのにやけた顔から、ルークはゴクリと唾をのんだ。

「その……ヘスを助けられなくて申し訳ありません……」

「ハハハッ。何言ってんだよ。安心しろ、昔の事だ」

 そう言ってルークの固まった肩をもんでやった。そして二人はまた歩き出す。

「それでさ。いきなりなんだが、階級を上げるために努力してみないか?」

「? どういう意味ですか?」

「お前、士官になってみないかっていうことだ……。弟がさ、ルーはいつも責任感があって、状況がわかりきっている、というもんだ。だから士官の適性があると思ってね。そのために階級をあげなくちゃいけないから……。どうだ? やってみないか?」

 ルークは足を止めた。今まで士官になる事なんて考えてなく、これは自分の人生大きく左右する選択なのでは、と思いつつも、自分の才能が発揮できると思い悩んだ。

「今すぐに答えを出すのは……」

「もちろんだ。ただそういう選択もあるっていう事を伝えただけだ。それに、いきなり指揮をするわけじゃなくて、私がいないときに代理で引き受ける程度の事だ。そりゃそれなりに事前に勉強はしておくがな。だから、候補生みたいなものさ。じゃ、気が向いたら声かけてくれ」

 そう言ってパレットは司令部のある方に向かっていった。

「士官か、それも悪くない…………」

「何が悪くないって?」

 突然後ろからミラが現れる。

「ミ、ミラ! こんな所で何してるんだ?」

「何ってコゼット少尉の説明が終わったし、寮まで帰るところ。……それで?」

「それでって何だよ……」

 ルークはまた長い連絡橋を歩きだした。

「とぼけても無駄よ。あの少佐と何を話したのって聞いているのよ」

「ぐっ、軍事機密だ」

 そう言ってルークはミラを振り切る。

「……。それならしょうがないわね。入科早速お仕事ですか、准尉殿は!」

 頬をフグのように膨らせ、ミラは早歩きでルークを追い越した。それを見たルークは逆に速度を落とし彼女と距離を離してやる。ルークにはミラが彼にかまってほしいのだとわかっていた。だからミラは足を止めてこちらを向き、文句でもいうのだろうと予測する。

 その通りだった。戦闘訓練科とCOCBや寮をつなぐ長い連絡橋を歩き終えようとしたとき、ミラは足を止め、後ろを振り向きこう言った。

「……今更だけど、コゼット少尉がお呼びよ。早く行かなきゃ戦車で踏みつぶされちゃうかも」

 ミラがバカにしたような笑顔でそう告げる。

「バカ。それを早く言えよ」

 ルークはそう言いながら、また来た連絡橋を走って行く。それを見ていたミラは、どうせコゼット少尉って誰? とか言ってすぐ戻ってくるに決まってる、と予測した。

 だがミラの予測は外れた。ルークは戻って来なかった。

「ちぇっ、つまんないの」

 ミラはそうつぶやいて寮へと走った。



 ちょうどその頃レプトピアでは、最高軍事会議が行われている。

「それではフレア少将。早速シャゴホック要塞へ向かい西部レプトピアの全作戦の指揮をまっとうされよ。何としてもネールランド侵略作戦を成功させ、ガルンを手に入れろ! 貴君の活躍を期待しているぞ」

 こう言うのはどうやらレプトピア軍の上層部のようだ。胸には収まらないほどのバッジをつけ、背もたれにずっしりと背中をもたれて座っている。

「仰せの通りに。必ずやあの地を奪い、作戦を成功させてみましょう」

 フレアは右手を左胸にあてながらそう誓う。そして左手には作戦内容が書かれた密書を持っている。

 シャゴホック要塞とは、レプトピアの国土を西部、中央、東部の大きく三つに分けた時、西部と中央の境界線に位置している大きな要塞の事だ。主な役割は西部周辺国での作戦指揮、西部国土の防衛、そして敵軍のレプトピア中央への進行を阻止する重要な役割を果たしている。

 今回フレアを任命した理由は、十年前に失敗してしまったナウジ戦役を再度行うというもので、そのために西部に特に詳しいフレアが選ばれた。

 会議が終わり、フレアはすぐに自分の部隊に出発の準備を行うように伝える。

 フレアはまだ三十五歳と少将の中では一番若く、そのため指揮できる部隊数は少ない。現在彼が指揮している部隊はネイジット・クレバー大佐ひきいるメシア中隊、アルフォンス・バードピー中佐ひきいるペテロ中隊、レオン・ペンバー中佐ひきいるミカ中隊、ミカエル・ショウ中佐ひきいるシモン中隊、そして唯一女性士官のフローラ・アームストロング中佐ひきいるアシェル中隊の五つの部隊である。数としては非常に少ないのだが、個々の能力や戦い方は他の部隊より錬度が非常に高い。特にミカエルはまだ十九歳という若さで隊長に就いている奇才だ。

「よし、これから大まかな作戦内容を説明する。まずは、シャゴホック要塞に向かいあらかじめ配置してあった味方九部隊と合流。その後、二部隊を要塞警護にあたらせ、他の部隊をナウジ平原国境付近に配備する」

 フレアは地図を広げながらそう言った。地図にはレプトピア西部とその周辺の位置が記されており、中央には大きな山脈が縦に一本。その北にはシャゴホック要塞が記されていた。そのため、レプトピア西部から中央に移動するには山脈が壁となり、シャゴホック要塞を通らなければいけないような土地になっている。

「それで、我々はどういった行動をすれば?」

 そう言ったのは背の高いネイジットだった。

「君たちは状況を確認しつつ後方で待機だ。まず、敵の動きをみる。その後戦況がこう着状態になるか、もしくは敵が国境を越えたときに出撃する。……敵の戦い方次第で戦況は大きく変わっていく。各自無線を常に持ち情報の収集にも努めよ」

 フレアは地図に指を置きながら大まかな動きを説明する。

「とりあえず、この後すぐに要塞に向け出発する。到着しだい詳しい内容はまた説明する」

 そう言ってフレアは広げてあった地図をまるめ数十キロ離れた要塞へと向かう。

挿絵(By みてみん)

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