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第十一話 出会い     1955.12

ミッション情報 ミッション名「アンジール救出作戦-二」 1955.12

これよりブルー小隊はハウス村で待ち構えている敵に攻撃を開始する。敵の数は中隊一部隊。歩兵四十、戦車二、装甲車一。アンジール少佐は村中央にある装甲車の中にいると思われる。全員最低限の攻撃で装甲車まで向かい作戦を成功せよ。増援の要請は確認できない。また、住民の避難は確認できていないため極力潜入を中心としろ。戦車は見たところエンジンが掛けられていない。そのため敵がエンジンをかける前に戦車を撃破せよ。陣形はケーニッヒ号を中心とする本隊と潜入し救出する別部隊の二部隊で攻撃をかける。また、敵リーダーの存在も確認されているため、敵リーダーを撃破すれば敵は指揮系統に混乱を生じ撤退していくだろう。よって作戦内容はアンジール少佐の救出、もしくは敵リーダーの撃破。

     以上。 Eddie Wilson


ウィリアム少佐「いいですか。ここで彼を救出しなければ彼の命も我々の命も危険な状況になります。みなさん気を引き締めてください。ミッション内容は伝えたとおりです。それでは作戦を開始してください」


 エディの掛け声でミラとネオ、マーガレットの三人が一番近い裏道から装甲車へ向かった。またコゼットなどの本隊はできるだけ敵が集まるように攻撃を派手に開始した。


クロウ大尉「まずは俺のケーニッヒの主砲でもくらいな!」


 バコーーッン


 するとケーニッヒ号から放たれた主砲M25MB改が敵の戦車にあたり一撃で破壊された。


クロウ大尉「よぉし、もう一匹の戦車はどこにいるんだ?」

ファミリア准尉「こちら潜入部隊。装甲車の前にはまだ敵がたくさんいます。もっと派手にやってください」

クロウ大尉「お前にしては珍しい発言だな……。まあいい、もう一匹のいるところに強行突破だ。いくぜぇ野郎ども、俺についてきな」

ウィリアム少佐「クロウ大尉! ……あれだけ戦闘は極力避けてくれと言っているのに。仕方がない、全員戦車の後ろにつきながら敵の本陣に向かうぞ。



アンジール少佐「さっきから外が騒がしいが……」

敵兵「あぁ、どうやらお前の仲間が来てるみたいだぜ……。まったく小隊一つで敵うわけがないのに……」

アンジール少佐「……」


 そのころミラは装甲車の見える物陰に待機していた。あたりでは村の人々が逃げている様子が伺える。燃え広がる炎、避けるような爆撃音。作戦中のため助けられないミラは、心に深い罪悪感を覚える。

 そんな中、ミラの十メートル先に一人の少年が地面に這いつくばっている姿があった。そのそばには倒れている老人の姿も見える。


ファミリア准尉「あの子……危ないわ」

シャドゥール准尉「おい、どこに行くんだ?」


 ついにミラは作戦中の事を忘れ、走ってその子のところに向かった。


ファミリア准尉「坊や、どうしたの?」

ロウズ「うっ……ぅ……じいちゃんが、返事しない……うっ」

ファミリア准尉「でもここは危険だわ。早くみんなのところに逃げて……。お母さんやお父さんは?」

ロウズ「い、いない……おれにはじいちゃんだけなんだ……」


 それを聞いたミラは無理やりその子をかついでネオたちのところに戻った。


シャドゥール准尉「おいおい。そんなガキ面倒見てる暇は……」

ファミリア准尉「わかってるよ! でもこの子一人だけみたいだし……。それにあなたはもともと親切な民族だったんでしょ……」

シャドゥール准尉「お、お前どうしてそんなこと知ってるんだ? それにだからと言って俺は親切なわけが……」


 ミラとネオが口論している間にマックスが割って入った。


ロウズ「うぅっ……親切な民族って? もしかしてネール族のこと……?」


 その言葉にミラとネオは驚いた。そしてマーガレットはミラの代わりに装甲車の周りの敵兵を見張る。装甲車の周りはまだ敵が集まっている。


シャドゥール准尉「し、知ってるのか?」

ロウズ「う、うん……。これ……」


 マックスはポケットの中からあの傷ついた銀色のペンダントをとり出した。それを見たネオも戦闘服の中から銀色のペンダントをとり出した。


シャドゥール准尉「お前もネール族の末裔か?」

ロウズ「うん。……じいちゃんと、もし他のネール族を見つけたらその人についていくように約束したんだ……」

シャドゥール准尉「じいちゃんってあそこに倒れている?」

ロウズ「う、うん……。じいちゃんは俺をかばうために……」


 するとネオはマックスを連れてガウゼンのところまできた。しかし彼はまだ息をしていた。


フォルト「……マックスか……無事じゃったか。それから……そこにいるのは?」

ロウズ「ネール族の人だよ! 見つかったんだ」

シャドゥール准尉「ネオ・シャドゥールと申します。ネール族の末裔です」

フォルト「そうか、最後に自分で確認できて……よかった。ネオさんや、この子をよろしくお願いします。……この子には……母親も父親もおりませぬ。」

ロウズ「? 何言ってるのじいちゃん! 死んじゃダメだよ……」

フォルト「……まさか味方の軍隊さんが……この村を襲うとは思いもよりませんでした。……おそらくネールランドの者であろうあなたに言っておきます。……彼らの……レプトピアの目的はガルンではありません。……彼らの目的は…………自分たちの……」

ロウズ「じいちゃん! 目を開けてよ! じいちゃん……うぅえぇぇぇ……」


 ガウゼンは最後に口だけ動かしたが、声は聞こえずネオには何を言っているのかわからなかった。


シャドゥール准尉「ミラ、マーガレット。ここを任せてもいいかい?」

パラ准尉「勿論ですわ。だから早くその子を安全なところに」

シャドゥール准尉「ありがとう。あとは頼んだ」


 ネオは泣き止まないマックスを抱きかかえ、再び来た裏道を通りエディのいる本隊のところに戻った。


ファミリア准尉「今ネオが初めてありがとうって言ったね」

パラ准尉「まったくですわ……。あッ! どうやら装甲車の前にいた敵も動き出したようですわ。一人減りましたが、問題ありませんわね」

ファミリア准尉「もちろんっ! さ、早くルークのところに行きましょ」


 ミラとマーガレットはあたりを注意しながら装甲車の方にゆっくりと向かった。そして装甲車まであと数メートルのところで、装甲車の中から銃声が聞こえた!


 その瞬間ミラの頭の中には最悪の状況が浮かび、とっさに装甲車のそばまで走る。

 それを見たマーガレットはミラを止めようと努力をしたが、ミラはそれを振り切った。

 ミラの手が装甲車に触れようとしたとき、装甲車の扉が勝手に開いた! とっさにマーガレットは銃を構えたが、中は暗くてはっきりと分からない。


アンジール少佐「…………あれ? どうしてミラが……? それにマーガレットも」


 暗い装甲車の中からは敵兵を盾にしながらルークが現れた。


パラ准尉「あなたを助けに来たのに……。まあいいわ……口論は後にしましょ。敵が駆けつけてきますわ」

ファミリア准尉「…………」

アンジール少佐「そうだな……場所がわからないから案内を頼む」

パラ准尉「勿論ですわ。さぁこちらへ」


 マーガレットは通信機を持ち、走りながらエディに状況を説明した。それを追うようにルークも走るがミラが立ち止まってることに気づいた。


アンジール少佐「はぁ…………あとでたくさん叱られてやるから。……ほら行くぞ」


 そうミラの耳元でつぶやいて彼女を持ち上げた。


ファミリア准尉「……ハッ! だ、ダメ! また右足痛めちゃうよ」

アンジール少佐「ハハッ。やっとしゃべった」

パラ准尉「……こちらですわ……。あら、お似合いよ。そのお姫様だっこ……」


 マーガレットは二人にそう言うと先に走って行った。その後すぐにミラは自分の足で立ち、歩いて本隊へと戻っていった。



ウィリアム少佐「アンジール少佐の救出に成功した。クロウ大尉及び他の出撃兵は今すぐ撤退してくれ」

クロウ大尉「ちっ! 結局もう一匹は見つかんなかったか。よしお前ら撤退だ」

ウィリアム少佐「我々はすぐにネールランド領に戻る」

K.コーズ少尉「ですがもうすぐ日が暮れます。この地域は日が暮れた後の気温の低下は異常です。……どこかで一夜を過ごさないと……」

ウィリアム少佐「ならどこが……」

ロウズ「じ、じいちゃんの別荘がこの近くにあるよ。……そこだったら多分……グスンッ」

ウィリアム少佐「この子は……?」

シャドゥール准尉「このこはマクシミリアン・ロウズと言って、先ほど救出した子供だ」

ウィリアム少佐「そうか、えーと……」

ロウズ「マックス……、マックスって言って」

ウィリアム少佐「ではマックス君。その場所まで案内してくれるかい?」

ロウズ「うん……」



 ルークを無事救出したブルー小隊は村から数キロ離れた山の中にある別荘へと向う。

 マックスの家に植えられてあった木の葉はすべてなくなり、あたりは薄暗くなり始めた。


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