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第十話 焦土作戦     1955.12

 戦闘訓練科の潜伏している町のある部屋ではエディ達による定期報告会が始まった。

「まず正規軍が我々を攻撃した理由について、パープル小隊から報告があるらしい」

「はいエディ中隊長」

 そういってパープル小隊の隊長が席を立ち資料を手に取る。

「我々パープル小隊の調査部隊によれば、結論から申しますとCOCB最高司令官カーネル・ポッターという女性が一番怪しいと思われます……。彼女の経歴を調べてみましたが、彼女はつい数日前に正規軍に入隊。その直後に上層部の人間が何らかの形で彼女をCOCBの最高司令官に就かせ、そしてこの前の作戦の全指揮権を手に入れた模様です。それ以前の彼女の経歴は不詳です。また、正規軍の一般兵の会話を盗聴したところ、一般兵はなぜ我々訓練科の部隊を攻撃しろという作戦内容になったのか軍上層部を疑問に思っているようです。……報告は以上です」

「ありがとう……。一般兵は関与してなさそうですね。怪しいのは上層部。おそらく上層部というのは大将以上の階級だろう……。次にピンク小隊、正規軍並びに敵の動きはどうなっている?」」

「はい。我が小隊から編成した特別偵察部隊によると正規軍及び敵軍の動きは確認できず、こちらの動きを伺っているような状態です」

「そうか……あとはブルー小隊がアンジール少佐の行方を見つけるだけだな……」

 するとマーガレットがブリーフィングルームの扉を勢いよく開けた。

「ハァハァ。た、たった今ブルー小隊偵察兵からアンジール少佐の行方が分かったという連絡を受けましたわ。ハァ……、場所はここから北東に進み、国境を越えてすぐのところにある街ですわ。すでに我々ブルー小隊は出撃準備に入りました。エディ隊長、出撃命令をお願いしますわ」

「よし、ではこれよりブルー小隊を中心にアンジール少佐の救出作戦を開始します。ピンク小隊はこれまで通り正規軍の動きを……、パープル小隊の調査部隊以外はブルー小隊とともに出撃する。国境を超える戦いになる。みんな心してかかるように」

「了解!」


ミッション情報 ミッション名「アンジール救出作戦」1955.12

これより我々はルーク・アンジール少佐のいるとされる敵領土内のミューゼという街に出撃する。なお、一般人はいつも通りの生活をしていると思われる。そのためできるだけ戦闘は回避し、隠密な作戦を実行する。また、冬の遠征は寒さで体力を奪われる。各自体力補給をいつでもできるように作戦にかかれ。

     以上。Eddie Wilson


ウィルソン少佐「こちらエディ。偵察隊、敵の状況はどうですか?」

オイール准尉「はい。敵兵は町の中央にある酒場に集まっていて、ルークもその周辺にいると思われます。町の周囲に敵は確認できません」

ウィルソン少佐「了解。我々は町の裏にある山道から侵入し、市民や敵兵にばれないように酒場へ向かいます。……分かっていますか、ここは敵領土内です。間違ってもネールランドの者と言わないように。……よし作戦開始します!」


 ウィルソンの合図で待機していたブルー小隊が次々に町の中に潜入していった。その途端、街のあちこちから火が上がりだす。


ウィルソン少佐「!? 気づかれていたか? だがなぜ町に火を点けた? これじゃあ市民までもが――」

ファミリア准尉「こちらミラ・ファミリア。酒場に入りましたが敵の姿が確認できません」

クロウ大尉「こちらコゼット。町のどこにも敵兵はいねぇぜ。いるのはあわてている市民だけだ」

ウィルソン少佐「罠か。急いで市民の救出にあたれ。町の外に連れて行くんだ」

ジャック准尉「おいおい。そんなことをして大丈夫なのか?」

ウィルソン少佐「罪のない市を巻き込むことはできない」

ジャック准尉「なんか言ってる事めちゃくちゃだけど、確かに罪のない人間が死ぬのはよくねぇよな」

クジャ少尉「エディ少佐。町の裏道に戦車と装甲車の跡を発見しました。北東の方角に向かった模様です」

ウィルソン少佐「クッ……。一足遅かったか……。偵察兵はその跡を追ってくれ、そのほかは市民の救助にあたれ」



 作戦は失敗に終わり、偵察隊はさらに敵を追い、本隊は市民の救出を終えたころだった。

「あのぉ……。あなたたちはいったい?」

 市民のうちの一人がエディに訊ねた。

「それは申せません。……おそらくこれをやったのはレプトピア軍でしょう」

「……そ、そんな」

 市民は自国の軍が焼き払ったと知り悲しみ倒れた。するとエディの無線機に通信が入った。

「こちら偵察隊のオイール、敵の跡を追ってみました」

「それで?」

「はい。行き着いたところを地図で確認したところ、ここにはハムという街があったと思われます」

「! あった?」

「実は我々が駆けつけてきたときにはもう焼き払われていました」

「……そうか……はっ!」

「隊長?」

「焦土作戦だ」

「焦土作戦?」

「あぁ。北国などの寒い場所で主に使われる作戦でな。敵が迫ってきたときに、その通り道にある街や施設、燃料などをすべて焼き払う作戦だ。そうすることで敵が寒さの中で野宿し、一番困るのが水だ。寒さで凍ってしまった水を溶かすことができず飲めなくするんだ」

「我々はどうすれば?」

「すぐにそちらに向かうから、焼けた町からまだ使えそうなものを見つけ出すのと、次の敵の進路を割り出しておいてくれ」

「それならもう分っています。次に敵が向かったのはハウス村という小さな村です」

「そうか、なら急いで我々はそちらに向かう。まだ敵がいるかもしれないから慎重に待機するように……」

「了解しました」

 エディは通信を切ると、救出が終わった部隊全員を集めた。

「敵は焦土作戦をしていると思われます」

「焦土作戦って自国の土地を焼き払って、敵の進軍を妨げるっていう……」

 ミラが答えた。

「そうです。だから罪のない人間が死んでしまい、我々も時間がたてば苦しくなってきます。なので早急な作戦の成功が必要です。……それができなきゃ我々は撤退せねばなるまい」

「そんな……」

「それで次の行先は?」

「ここからハムという街を通ってハウスという村へ向かいます。しかし残念ながらハムはもう焼き払われてなくなっているそうです。だからこれ以上被害を出さないためにも今すぐハウス村へ向かわねばなりません。……情報によればハウス村の次に敵が向かう街はなく、おそらく敵はそこで待ち構えているはずです。……我々も相当体力を使っている、気を引き締めて作戦に臨んでください。……よし、出撃開始します!」

 エディの合図で全員急いで出撃の準備を開始し、ハウス村へと向かった。


 ――戦火はマックスとガウゼンの住むハウス村にまでやってきた――


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