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一話 スーマンとダニーの名推理

 暖炉の火が消え、朝日がカーテンの隙間から射し込む時に、コートを着た赤毛の男は、無惨に殺された男の服を調べている。


「スーマン! 何をしているっ!」


 男はその怒鳴り声に身体を本能的に跳ね上がらせた。

 スーマンと呼ばれたその男は、頼りなさ気な顔で、男の胸ポケットから取り出した革の手帳を取り出す。

 弱々しく笑うと、彼はその手帳をビニール袋に入れた。


「無闇に触るなと、あれ程言っているだろうが!」

「どうせ調べるんですから後にも先にも同じですって……」


 小太りした身長がやや低い男は偉そうにとぶつくさ言いながら、丸眼鏡で手帳をじろじろと眺めた。


「その手帳、ルド=ハミルトンって表紙に書いてますけど、翻訳家さんか小説家さんですかねぇ」


 赤毛の男は手帳を指差して、表紙の手書きと思われる名前に注目した。

 何故わかる? と強く怒鳴る様に聞いた。


「だってぇ、その字綺麗じゃないですか。きっと美術関係の人ですよ」

「そんなモン字で判断するなっ! 俺の字が汚いって事かっ!? あぁん!?」


 誰もそうとは~と気弱そうに反論していると、彼は木椅子の血に気付いた。


「ダニーさん、可笑しいと思いませんか?」

「あん? 何がだ」


 赤毛の男は木椅子に近付いて、血の付着をよく調べる。

 小太りした男が、それを気にして、その木椅子に近付いて、赤毛の男とは逆側から木椅子を覗いた。


「この血の付き方、座っていて刺されたって感じですよね。しかも右側をです」


 木椅子には血が右側にはかかっているのだが、左側にはかかっていない。彼はここに着目した。


「あの男は左腕を切断されていましたが、それ以外に損傷はありません。血の落ち様からしてもこれは腕がぼとりと落ちたような大きな傷ではないですよ。そして彼の右側に損傷はありませんでした」


 スーマンとダニーは、顔を見合わせた。


「こいつぁ、被害者は複数じゃぁねぇのか!?」

「ええ、そうです。加害者が誰かはわかりませんが、殺害した凶器は恐らく……」


 赤毛の男、スーマンは男の右側にある暖炉の灰を漁る。


「この灰、積もり方がおかしいんですよね。……あった!」


 彼は暖炉の中から、灰を被った剣を取り出して、ダニーに見せた。


「ウォッキー! これを鑑識にまわせ!」


 スーマンは剣を入れる手頃なゴミ袋を手に、剣を柄から放り込んだ。

 ウォッキーと呼ばれた人生全て放棄していそうなやる気のない猫背の刑事はそれと手帳を受け取ると、ずぶずぶのズボンを着ているかのように、ゆっくりと足を進めて出て行く。


「あんニャロゥ、人生全部放棄してんじゃねえだろうなっ!」

「ウォッキーはあれでも一番人生楽しんでますから大丈夫ですよ。それよりこの死体、駄目ですね。暖炉の近くで放置されてたのもあって痛みすぎて正確な情報が出ませんよ」


 スーマンは、男の心臓を見ると、気持ち悪そうに手を掃うと、再び木椅子を見て彼は思った。


「ここの家に住んでいたのは、ユラン=ルカナーン、18歳。リリア=ルカナーン、19歳。姉弟ですよね」


 ダニーが偉そうに頷くと、スーマンはここからは自分の推測です、と宣告して語り始めた。


「18歳の男性にしては、その死体は随分と老けています。手帳の事もありますし、これをユランとしないとして。ユランかリリアがこの椅子で刺されたとしたらどうでしょう」

「いいねぇ。お前妄想小説家になれ。売れるぞ」


 ダニーはスーマンの肩を叩くと、スーマンの首に腕を巻きつけて部屋を出た。

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