王女様には振られたけど、スキル『迷彩』で成り上がります
この世にはスキルがある。
神から与えらたギフトとも呼ばれているそれは、個人によって違う能力で、同じ能力はその人が死ぬまで現れないとかなんとか。
まあ、そんなわけで子供のうちからわかる奴もいれば、大人になってもわからない奴もいる。
そんなスキルが人生を変えると言っても過言じゃない中でも、大人になってから覚醒した俺のスキルは迷彩だった。
なんだよ、迷彩って……!
迷彩とは、その名の通り自分自身を周囲に溶け込ます事も出来れば、対象物を周囲に溶け込ます事も出来た。
おかげであだ名はカメレオンヤローになっちまった。
これでも、伯爵家の長男なんだけどなぁ。
人望なかったのかな、俺。
そんな時、王女様から婚約破棄を言い渡された。
曰く、王女の婚約者のスキルが出歯亀みたいなものだと恥ずかしいんだと。
誰も好きでなったんじゃないやい!
けど、俺は逆な考えた。
このスキルをなんとか活用出来ないかと。
スキル、迷彩を使って様々な情報を得た。
近付けもしない高位貴族の側にスキル迷彩を使い、そっと聞き耳を立てる。
なるほど、それなら小麦を買い占めれば高く売れる。
川の増水か。なんとか貸しを作って恩を売ろう。
あちこちの夜会に出ては情報を集め、昼はその情報を元に商談を進める。
魔物を倒すのも割と楽になった。
匂いでバレるかと思ったけれど、匂い袋を設置したりして意識を分断させたら混乱したようだ。
姿の見えない俺に魔物は一方的に倒されるばかりで、その頃には迷彩を馬鹿にしていた奴らが領主様と請いていた。
やがて、功績が認められ侯爵になった。
商談を進めて、魔物退治をして。
上流の川が氾濫しそうだと聞いて災害を予測して領民からは感謝され、俺は溜息を吐く。
まったく、手のひら返しが早すぎる。
「そうは思わないかい?」
「そうね。あなたって案外人でなしだと思うわ」
「ひどいな、婚約者に向かって」
「だってそうじゃない。私の恋心を聞き付けて、見定めてプロポーズする。私が思っていただけなのに」
むくれる可愛い婚約者。
「そうだなぁ、君のスキルがすべてを見通すなんてとびきり素敵なものを使わせてしまって申し訳なく思うよ」
「思っていないくせに」
「思っているさ。俺の気持ちは迷彩でも隠しきれない」
「そうね、私にはあなたがどこにいても見えてしまう」
二人で笑い合う。
「お互いが見えるって素敵ね」
「ああ、そうだね」
彼女相手じゃ姿も心も隠す気がないから、スキル迷彩も意味がないな。
俺は微笑んで彼女の髪を撫でた。




