第15話 到着!王都アスタリア
「着いたわよ」
エリーの声に目を開けると、そこは薄暗い書庫のようだった。
「……埃っぽいな」
「来たの久しぶりだからね、私くらいしか使わないから」
エリーはそう言いながら机の上にあったペンをさっと振る。
するとヒュッと音がしたかと思えば埃一つなくなり、先ほど見た光景が嘘だったかのように綺麗になっていた。
「エリーの部屋もいつもこのくらい綺麗にすればいいのに」
「あれは仕事部屋!!毎日毎日大量に書類の束がくるんだから」
私の部屋はもっと綺麗よとぶつぶつ言う。
「いや、エリーの部屋も本が多すぎる」
「努力の賜物と言って欲しいわ」
ここは王都から少し離れた森の中の小屋。
一応サイハテ村の所有で勝手に立ち入ることはできないが、盗賊や不良の溜まり場にならぬよう念の為結界が貼られている。
それと魔法陣の存在がバレてしまうのも困る。
「少し歩くけど、いいわね?」
はーいと返事をして歩く事数分。
王都の城壁が見えてきた。
「おーおっきい……」
ディナとヴィラが見上げる。
サイハテにも壁はあるけどそれの三倍くらいはあるからね。
「私たちは王都の人間より髪の色が薄い。だからどうしてもサイハテ村の者だとわかってしまうし、好奇心でジロジロ見られてしまうけど、気にしないようにね」
「慣れればなんとかなる」
「うん。シータは何故か怖がられてるから、シータの近くにいれば多分大丈夫よ」
きっとどっかでしたんだなぁ、威圧。
「手続きは私がやるから、ちょっと待ってて」
エリーが通行証を渡すと門番はエリー達の顔と通行証を見比べ顔をしかめた。
「ん〜サイハテ?まさかあの孤立した村から来たと言うのか?」
「新人さん?その通りよ。あのサイハテから来たの」
弱そうな娘と後ろにはぼんやりした青年とこども二人。
サイハテ村の人間は化け物だという噂を聞いていたのだろう。
門番はがっかりした様子で通行証を投げるように渡した。
「ハッ、まあ通行証は本物っぽいし、問題になるような事は起こすなよ」
「ああ、噂通りなのか試してみる?」
エリーがいつの間にか持っていた小枝を突き出す。
その瞬間、ビキビキッと音がして門番の真横を何かが横切った。
「どう?期待には応えられたかしら」
エリーはにこり、と笑いながら言う。
壁に、氷の矢が力強く刺さっていた。
「も、申し訳ございませんでした!通行証に関してなんの問題もありません!どうぞお通りください!!」
もう一人の門番は黙って深々とお辞儀をしていた。
彼のことは学院時代から何度か見たことがある。態度を改めさせるために黙っていたのだろう。
新人教育に使わないで欲しいものだ。
「エリー、いつもああなの?」
「そうねえサイハテってみんな髪色以外普通に平凡に見えるから、舐められやすいの。だから新しい人にはいつもあんな感じで程よく力を見せつけるのよ」
そういえばみんな強いけど強そうな外見の人はあまりいない。
筋肉を育てるのが趣味のビルダおじさんくらいだろう。
「すまない、いつも任せてしまって」
「シータだと大事な門番さん気絶させちゃって困るからね」
「オレだけじゃ襲撃だと勘違いされるから、一人じゃ王都に出入りできないんだ……」
門番を気絶させたら色々な意味で危険すぎる。
門をくぐり、舗装された道を歩く。
村では全く気にしていなかったが、やはりこの髪色は目立つらしい。
道行く人々がじろじろとこちらを見てくる。
確かによくみるとみんな黒髪や茶髪だったり濃い色が多い。
明るくても少し色素の薄い茶色や染めたであろう赤や紫ぐらいだ。
しばらくすると大きな噴水が見えた。
「これがはぐれた時の集合場所の噴水ね」
「石に星のレリーフが彫ってある」
正しくは星座だ。
「アスタリアは星座という意味で、王族が先読みや星の力を持っているからとされているわ」
「へえ〜綺麗だね〜」
ディナがキラキラと目を輝かせる。
こういうところはやっぱり女の子だ。
「今の王様は若い頃王都が魔族に襲撃された時に隕石を降らせて返り討ちにしたそうよ」
「エリーお姉ちゃんとシータお兄ちゃんは王様見たことあるの?」
「私もシータも会ったことあるわ。学院の卒業式の日に喧嘩を売られて買っていたら、たまたま迎えに来てくれていたシータが威圧でみんなをノックダウン。その中に勇者と王族がいたものだから、勇者一行に入らないかと勧誘されたの」
「断ったんだよね?」
じゃないとエリーもシータも村にいなかったはずだ。
「取り巻きが嫌いだったから」
「集団行動だと役に立たないから」
「それは……しょうがないね?」
でしょ?とエリーはケラケラと笑った。
だが、シータはエリーが説明を飛ばしていることに気がついた。
(あの時エリーは確かに喧嘩してたし、まぁ既に相手をフルボッコにしてたんだけど、制御のペンダントを壊されて泣いていたんだよな。だからオレは思わず威圧を使っちゃったんだよなぁ)
「王様が寛大でよかった。じゃなきゃオレは指名手配されて王都に来れてない」
「「確かに」」




