第八章 大道芸
アルバは、冒険者になるのを諦めた。
そして――なぜか大道芸人になることに決めた。
ギル
「今日は大道芸で“遊びたい”のか?」
アルバ
「……」
答えない。
答えないが、すでに路上に立ち、コインとトランプを手にしている。
アルバは軽快に手を動かし、
コインが消え、トランプが消え、
観客の視線も消え――
「……あれ?」
アルバ
「いや今のは準備運動」
気を取り直してもう一度。
「はい、こちらのコインを――消します!」
消えた。
観客「おおー」
「次はトランプです!」
消えた。
観客「おおー」
アルバ(よし、今日は調子いい)
アルバ
「コレなら収納が無いギルには負けないだろ?」
そう思って、ふと隣を見る。
……人だかり。
アルバの三倍はいる。
中心に立っているのは――
ギルだった。
ギル
「ほら見ててください。コインが縦に重なって回転します」
コインが、空中でくるくる回りながら縦に積み上がる。
「一枚、二枚、三枚……まだ行きますよー」
観客
「おおおお!」
「四枚!」
アルバ
(待て待て待て、縦回転ってなんだ)
ギル
「次はですね、全部消えます」
アルバ
(オチまで用意してやがる)
ギル
「ワン、ツー、スリー……はい、消えた!」
コインは消えた。
正確には、コインの力で“どっか行った”。
観客
「うおおおおお!!」
アルバ
「……」
アルバは静かに思った。
(ギルにとっては、
出来ないことって無いのかもしれないな)
幸運度、高すぎ問題。
ギルは拍手に手を振りながら、アルバの方を振り返る。
ギル
「なあお前、なんでそんな必死に働こうとするんだよ」
アルバ
「働かないと死んじゃうじゃん」
ギル
「は? コインが自動で出てくるんだから、死ぬことないだろ」
アルバ
「……」
一拍。
アルバ
「そう言えば」
今さら気づいたように言う。
アルバ
「俺、生活費の心配してたの、全部無意味じゃん」
ギル
「今ごろ?」
アルバは大道芸の帽子を見つめ、
深く、深くため息をついた。
アルバ
「冒険者も大道芸人も、
結局、横にお前がいると職業として成立しないんだな……」




