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第四十六章 国庫

部下

「城壁により完全に封鎖されています。

 さらに城壁前には堀まで掘られており、正面突破は不可能かと」

「東帝国へ通じる街道は、すでにすべて遮断されました」

エマ

「……まだ、私の書簡は届かないの?」

苛立ちを隠さず、指を鳴らす。

「北へ抜けなさい。国道八号線を迂回させるのよ」

コイン

「北に抜ける道、だってさ」

アルバ

「じゃあ、そこも塞ぎに行くか」

少し考え、口元を歪める。

「ついでに“関”でも作っておこうかな」

部下

「すでに北路には関が築かれており、北上は不可能です」

エマ

「……なら、山道を使いなさい!」

「何でもいい。必ず、必ず届けさせるのよ!」

コイン

「今度は山道だって」

アルバ

「山道か」

一拍置いて、淡々と。

「……壊してくるわ」

通信兵は、どこをどう通ってきたのか。

全身を泥にまみれさせ、ふらつく足取りで現れた。

通信兵

「私は帝国より参った使者。

 こちらの皇帝、アルバ陛下に書簡を――」

ナーサ

「書簡を届けるのは、本来大臣の役目」

冷ややかな視線で切り捨てる。

「そのような薄汚れた姿で現れるはずがありません」

「偽りを申すな。そなた、どこの国の者だ?」

通信兵は言葉に詰まり、自分の姿を見下ろした。

やがて何も言わず川へ向かい、鎧と衣を洗い始める。

通信兵

「……身体を温めねば」

焚き火を起こし、濡れた衣を乾かす。

その最中、顔色が一気に青ざめた。

通信兵

「……無い」

「書簡が……どこにも……」

ナーサ

「一緒に探せと?」

通信兵

「極めて重要な書簡なのだ」

ナーサ

「内容は?」

通信兵

「……分からぬ」

ナーサ

「分からぬのに、“重要”と?」

通信兵は何も答えられず、重い足取りで立ち去った。

コイン

「で、なんて書いてあったんだ?」

アルバ

「『代々引き継ぐ我が領地を返還せよ』だとさ」

肩をすくめる。

「『今すぐ頭を垂れて詫びに来るなら、

 隕石のごとき我が魔法の被害は免れさせよう』

 ……まあ、そんな感じ」

コイン

「随分と強気だねえ」

アルバ

「それより」

「農夫に頼んで、百里の長城前の小麦を全部刈り取ろう」

ナーサ

「……承知しました。すぐに手配を」

再び姿を現した通信兵。

今度は何も言わず、ただ立ち尽くす。

ナーサ

「我が皇帝は現在、ラピスラズリ採掘のため

 バーミヤンへ赴いておられます」

通信兵

「……いつ戻られる?」

ナーサ

「それが、我々にも分かりかねます」

通信兵

「なら、ここに泊めてくれ」

ナーサ

「一介の使者が、客間を使わせろと?」

「町宿をご自身でお取りください」

通信兵

「路銀が尽きていてな……」

ナーサ

「帝国の使者を名乗り、馬車もなく、

 そのうえ路銀も無い?」

「誰が信じましょう」

「つまみ出せ」

エマ

「……まだ、書簡は届かないの?」

「その無能な通信兵の首をはねなさい」

一瞬の沈黙。

「……もういい」

「先制攻撃を行う」

部下

「ですが、あの一帯は我が国屈指の穀倉地帯です」

「火が回れば――」

エマ

「城壁に当てるだけよ」

「壁を破壊し、兵を突入させればいい」

コイン

「明日、百里の長城を攻撃するってさ」

アルバ

「水、汲んでおくか」

エマは巨大な火球を生み出し、城壁へと構える。

アルバ

「……あれだけデカいと、

 『ここから撃ちます』って言ってるようなもんだな」

エマ

「発射!」

アルバ

「水、射出」

圧縮された水流が火球を縦に押し潰す。

火の玉は、エマの目前で爆散した。

部下

「……だから、燃やすなと……」

しかし、散った火は穀倉地帯へと降り注ぎ、

瞬く間に炎が広がる。

鎮火は追いつかず、収穫の八割が灰となった。

アルバ

「水で消すつもりだったんだがな?」

コイン

「どんまい」

部下

「このままでは、国庫が空になります」

「他国からの輸入を――」

エマ

「陸がだめなら、船便を使いなさい」

部下

「フェニキアに確認しましたが、

 フェニキア船団は現在、すべて東方交易に出払っております」

ここでようやく、

エマは自分が追い詰められていることに気づき始めた。

エマ

「……やはり、私自身が城壁を破壊するしかないわ」

部下

「陛下の魔法が強大なのは疑いありません」

「ですが以前も、城壁表面を焼いただけで、

 破壊には至らなかったではありませんか」


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