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第四十章 伝説殺し

帝国にて、ラナ姫とアルカディアの葬儀が執り行われた。

重苦しい沈黙の中、皇帝は棺を見つめたまま、アルバに語りかける。

「……焼きが回ったのだろうな。

 わしより先に、子や孫が死んでいく」

皇帝は一度、深く息を吐いた。

「ラグナに至っては……この二人を殺すという暴挙に出た」

アルバは一歩前に出て、頭を下げる。

「――私が、守って差し上げられず……申し訳ありません」

皇帝は目を伏せ、しばし沈黙したあと、話題を切り替えた。

「ところで……ギルは、そちらへ行かなかったか?」

「国境兵が、国境付近でミノタウロスを目撃したとの報告はありました。

 ですが、私の元へは来ていません」

そのとき、ラグナ――黃帝が一歩前に出て、アルバを指差した。

「オレは……アイツに追い詰められたんだ」

アルバは即座に言い返す。

「私は、アルカディアの逃走を助けるため、兵を引かせました。

 あなたとは、違う」

次の瞬間、皇帝は手にしていた杖を黃帝へ投げつけた。

「――二度と顔を見せるな。帰れ」

黃帝は肩を落とし、そのまま踵を返す。

皇帝が背中に向かって言葉を投げた。

「アリ兵駆除の礼は、済ませたのか?」

黃帝はピタリと足を止め、振り返らずに答える。

「……後ほど、何か送りましょう」

「いりません」

アルバが即答する。

「――これが、皇帝。そういうことです」

黃帝は一礼だけして、去っていった。

コインが小声で言う。

「黃帝の横にいた男、軍師らしいぞ。

 あのアレキサンダー大王を倒した象兵を撃破した、って触れ込みで地位を得たそうだ」

「……ということは」

アルバは顎に手を当てる。

「黃帝戦では、象兵は使えないな。厄介だ」

その瞬間、コインが空を見上げた。

「おい、アルバ。屋根の上から狙われてるぞ」

アルバは立てかけてあった洗濯桶を指差す。

「――収納・射出」

直後、屋根の上で「ガァンッ!」という鈍い音が響いた。

皆が見上げる先に、魔弾の射手がよろめいている。

「な、なんで洗濯桶が……!」

次の瞬間、アルバの矢が射手の肩口を貫いた。

「皇帝の命を狙った狙撃手がいるぞ!」

射手は即座に取り押さえられた。

―――

公邸を出ると、黃帝が待ち構えていた。

手には雷公鞭。

「……待っていたぞ」

アルバは静かに槍を構える。

鞭が唸りを上げて迫り、槍がそれを迎え撃つ。

「勝ったな」

黃帝がニヤリと笑った、その瞬間――

雷公鞭は、スパッと断ち切られた。

「……!」

「――伝説殺し、成功だ」

雷公鞭は、もはや半分の長さしかない。

「なぜ……感電しない……!」

アルバの槍は雷をまとっていた。そのまま、投げ放つ。

「その槍も雷を――!」

黃帝は身を伏せる。

しかし、槍は後方にいた軍師の心臓を正確に貫いていた。

「……武器を投げつけるとは、愚かな」

雷公鞭を構え直す黃帝。

だが、アルバはすでに剣を構えている。

黃帝は軍師に刺さった槍を奪おうとするが――

槍は、すでにアルバの《収納》に消えていた。

警備兵が一斉に駆け寄ってくる。

「アイツだ! わが軍師を殺したのは――」

指差した先には、誰もいない。

アルバは、いつの間にか聴衆の後ろに立っていた。

警備兵が黃帝に詰め寄る。

「それよりも、皇帝狙撃未遂の件で、お伺いしたいことが――」

(……なぜだ。

 アルバを狙ったはずが、なぜ皇帝狙撃に話がすり替わっている……?)

黃帝が咄嗟に手を挙げると、部下たちが一斉に現れる。

警備兵は蹴散らされ、公邸内へと押し戻された。

「アルバ……この借りは、必ず返す」

黃帝は馬車に乗り込む。

部下たちが公邸へ突入しようとした、その時――

門の向こうから、漆黒の騎士たちが溢れ出した。

黃帝の部下は慌てて馬に飛び乗り、逃走する。

漆黒の騎士たちは、国境付近までその背を追い詰めた。

―――

東帝国・執務室。

「黃帝の、その後の動きは?」

アルバの問いに、ソフィアが答える。

「漆黒の騎士に国境まで追われたのが、相当堪えたようです。

 今は、驚くほど静かですよ」

コインが肩をすくめた。

「部屋に鍵かけて、引きこもってるな」

――嵐の前の、静けさだった。

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