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第三十九章 空間

帝国皇帝は、玉座に深く腰を沈め、苦悩の色を隠そうともせずにいた。

ギルが言い放つ。

「黃帝もアルバも、両方オレが討つ」

皇帝は静かに首を振った。

「アルバ君には……返しても返しきれぬ恩がある」

「アルバはオレの部下みたいなもんだ」

ギルは鼻で笑う。

「間違いを正して、オレに従わせる。それだけの話だ」

そう言い残し、ギルは天王配下――三体のミノタウロス(裏聖者)を引き連れ、国境を越えた。

その瞬間――

視界が、唐突に暗転した。

「……ここは、どこだ?」

ギルが問う。

ミノタウロスたちも周囲を見回し、低く唸った。

「広大な空間に……閉じ込められたようです」

「空間、か」

ギルは舌打ちする。

「なら端があるはずだ。そこを蹴破ればいい」

ミノタウロスたちは壁らしきものに向かって何度もタックルを繰り返す。

だが――手応えは皆無だった。

「……蒸し暑くありませんか」

「気圧が……上がっているような」

気づけば、ギルの額から汗が滴り落ちていた。

「アルバの奴が何かやってるのは分かっている」

「きっとヤツの“収納”の中だ。神を欺く不届き者め」

今度は逆に、気圧が急激に下がる。

「……息が、苦しい」

ギルと三体のミノタウロスは、床に仰向けに倒れ込んでいた。

「……白霧のスペース」

ギルは最後の賭けとばかりに、その中へ飛び込む。

「スーハー……スーハー……ゲボッ!」

「クソッ……扉がねぇじゃねぇか!」

どこまでも続く、灰色の空間。

逃げ場はない。

それは――かつて自分が作り出した“空間”そのものだった。

再び、視界が暗転する。

次にミノタウロスたちが目を覚ました時、そこは東帝国との国境だった。

「……助かった、のか?」

だが、答えは出ない。

彼らはそれ以上踏み込めず、帰国せざるを得なかった。

宝箱のママの声が、アルバの意識に響く。

「ギルから話があるって。出るかい?」

アルバは、静かに応じた。

「……自分で作った空間に閉じ込められた気分はどうだい?」

「昔はコインに言えば出してくれた……」

ギルの声は焦りに満ちている。

「だが今は、まったく外に出られない」

「コインとの契約者は、今は僕だ」

アルバは淡々と告げる。

「カルディ様じゃない」

「なら、お前が出せよ!」

「出せば、僕が殺される」

沈黙が流れた。

アルバは、穏やかに――だが残酷な事実を続ける。

「君は死なないだろう。神だから」

「でも、僕が死ねば……僕の空間は解除される」

「そうすれば、いずれ扉は現れる」

一拍置いて。

「――だから、僕が死ぬ何十年か後まで、そこにいてくれ」

通信は、そこで切れた。

「待て……待ってくれ――――!」

灰色の空間に、ギルの叫びだけが虚しく響く。

ギルは、その場に崩れ落ち、

ただ泣き崩れるしかなかった。


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