第三十六章 脱走
ラナ姫は少し言い淀み、視線を落とした。
ラナ姫
「……アルカディアのことなんだけど」
アルバ
「――僕は、救いたいんです」
「逃走経路も、すでに確保していました」
「彼は……ギルの力で、僕を殺しに来たそうです」
ラナ姫
「それは……アルカディアが?」
アルバは静かにうなずいた。
アルバ
「ええ。本人が自白したと聞きました」
「計画はこうです」
「ギルが“周囲を眠らせるスキル”で職員たちを無力化し」
「僕が眠ったところで、最後の一撃だけをアルカディアが加える」
一拍、間を置く。
アルバ
「……結果的には、眠らされる前にソフィアに倒されましたが」
ラナ
「それなら……極刑、かしら」
アルバ
「……分かりません」
ラナ
「“分かりません”って、どういうことよ」
アルバ
「この国では、裁きは元老院が行います」
「政治と司法は元老院が」
「軍事と金融は、僕が統括しています」
ラナ
「じゃあ……元老院が、アルカディアを裁くってこと?」
アルバ
「ええ。元老院による裁判員裁判です」
「血縁者であるユリアナ様が、弁護人に立っています」
ラナ
「……ユリアナ姉に、借りを作ることになるのね」
ラナの表情は、どこか陰っていた。
アルバ
「今も裁判は続いているはずです」
「見学は自由ですよ」
ラナは裁判を見に行った
ユリアナ
「アルバ君、大変よ!」
「極刑の噂を聞いたラナが、
元老院で暴れて……」
「アルカディアと、一緒に逃げたの!」
アルバ
「……コイン。二人は、うまく逃げられたか?」
コイン
「黄帝のもとへ向かってる」
「あの二人は、黄帝の力を借りて――この東帝国を取り戻すつもりだ」
アルバ
「……そうか」
「俺って、つくづく甘いな」
コイン
「だが、それは“出来ない”」
アルバ
「どういうことだ?」
コイン
「コインは、何でも知っている」
アルバ
「……もったいぶるな」
コイン
「お人よしのお前のことだ」
「どうせ、助けに行くつもりだろ?」
アルバ
「行かない」
「絶対に、助けに行かないと約束する」
コイン
「――黄帝は今、アリ兵と戦っている」
アルバ
「……!」
コイン
「世界で唯一、あいつらを倒した実績があるのは……お前だ」
「だがな」
「お前がアリを倒せば――」
一拍。
コイン
「今度は、“お前自身”が、黃帝から狙われる」




